表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/52

内緒のお話のお時間です③


「ところで、サリエラさまが何らかの手段を使って殿下のお心を…という話だったけれど、何か確証があるの?」

「ないわ。」

「えっ」


エルミリアが間髪入れずに否定したのをみて、リコリエッタは面食らった様子だった。

わざわざ公爵家まで来て話すぐらいなのだから、当然何らかの確証を掴んでいると思ったのだろう。

なかなか見られないリコリエッタの驚いた顔を見て、エルミリアはイタズラが成功した子どものようにニヤリと笑って見せる。


「今のところはまだ、ね。」

「…なるほど。何か、私が手伝うことがあるのね?」

「我が主君は話が早くて助かるわ。」


わざと冗談めかした言い方で返すと、「茶化さないでちょうだい。」と苦笑された。

陰鬱な気分になる話はエルミリアの性に合わないのだ。

少しでも軽い調子で話せるのなら、その方がいい。


「まず私たちは、サリエラ嬢が『自分に好意を持たせる魔道具』を所持、使用していると考えたの。理由は3つ。1つ目、不自然なほど突然親しくなったアンクロフト殿下とサリエラ嬢。2つ目、サリエラ嬢が過剰に香りを纏っていた未販売であろう香水。3つ目、近く発売される香水のコンセプトが『意中の殿方の心を射止めましょう』であること。」


指を一本ずつ立てながら矢継ぎ早に告げる。

根拠とするにはどれも弱いために「理由」という言葉を使ってはいるが、ゲームの記憶と知識があるエルミリアからすれば、「状況証拠」という言葉の方がしっくりくるぐらいだ。

しかしエルミリアが予想していた通り、リコリエッタの反応は芳しくない。

小さな声で唸りながら、難しい顔で考え込んでいる。


「…もしその推測が事実ならば、それは男性だけに作用する魔道具ということ?…そんな高度な条件付与が出来るような魔術師なんて…。」

「そうね、王室お抱えの魔術師でも難しいと思うわ。」

「それじゃ…。」

「だからおそらく、性別に関係なく作用するんじゃないかと思っているの。」


誰にでも作用する、とは言わない。

家族で話し合ったあの後、自室で一人あれこれと考えてみた結果、エルミリアには一つ思い至った可能性があった。

これはこれでご都合主義でしかない可能性なのだが、考えられる可能性の中では比較的マシなものでもある。

しかしこれもまた転生者(プレイヤー)以外には説明のできない事象であるため、あえて説明はしないことに決めていた。


「…好意を持たせる魔道具を使用していたところで、あまりにも効果が強すぎるのではない?まるで魔法をそのままかけられているみたいだわ。」

「さすが、いいところを突いてくるわね。」

「それについては我が家でも同じ意見が出たのです。それで、確認する必要があるという話になって…。」

「その『確認』に、私が手伝うことが何かあるのね?」


確信に満ちた目をしたリコリエッタに見据えられて、エルミリアは頷く。

話が早い。

期待以上のスムーズさでどんどん話が進むことに、エルミリアは満足げに笑った。

話が通じるということの、なんと素晴らしいことだろうか。


「近々お兄さまがルードベッヘ男爵と会う機会があるの。その時、可能であればサリエラ嬢とも接触を図るということになっていてね。」

「ただ、お兄さまがアンクロフト殿下と同じように魔道具の効果を受けてしまうかも知れなくて…。」

「万が一、そうなってしまった時の解除をリコリーにお願いしたいというのが我が家の希望なの。」

「それは勿論、協力させてもらうわ。けれど、確実に治せるという保証は…。」

「それなら大丈夫。」


エルミリアが自信満々で断言したのを見ても、リコリエッタはやばりまだ不安げだった。

ここまでの話はすべて状況から推察された仮定の話に過ぎないはず。

それなのに何故、断言できるのか。

そう思うのは至極当然のことだ。


「…さっき私が、『リコリーのおかげで状態異常の類とは無縁だった』と言ったでしょう?」

「え?…ぁ、えぇ…。」


突然話を戻されて、リコリエッタはさらに困惑したようだった。

討伐の話とアンクロフトの話に、一体何の関係があるのかと疑問を抱いているのがよくわかる。

普段はしっかりしているお姉さんキャラのリコリエッタの頭の上に、たくさんの疑問符が浮かんでいるのが見えるようだ。

推しのそんな姿もまた例えようがないほどに可愛らしい、などとエルミリアは場違いなことを考える。


「出立の前日にアンクロフト殿下と3人で少し話をしたでしょう?あの時、リコリーが私に『状態異常無効化の加護』を付与してくれたのよ。」

「私が…?」

「そう。その力が、彼女が使った『何らかの手段』から、私を護ってくれたのだと思うの。」


加護を付与していた自覚がなかったリコリエッタは、まさかという顔で驚いている。

この世界での加護とは、聖職に就いているものが決められた修練を積むことで使えるようになる力だ。

加護の力が使えるようになってはじめて一人前の聖職者だと認められるものでもある。

そんな力を、修練を積んでもいないリコリエッタが使ったのだ。

本人が驚くのも無理はないことだった。


「今の時点ではすべて仮定の話でしかないわ。けれど…彼女は何故か、私が自分に好意的に接するという自信のようなものを持っているようだと、私は感じたの。」


結果は言うまでもないけどね、と言いながらエルミリアは肩を竦めてみせる。

あの香水がエルミリアにも効くようなものだったのか、何か別の手段を使っていたのか、実際のところはわからない。

しかしあの時のサリエラは明らかに「エルミリアは自分の味方になって当然」という振る舞いだったのだ。

何らかの手を使われていたと考えた方が自然だろう。


ふとこちらに近づいてくる人物の気配を感じ、エルミリアはパチンと指を鳴らして風魔法を解除した。

誰かが近付いてきたらわかるよう、音声の遮断のために張った魔法の更に外側に、探査魔法を張っておいたのだ。

リコリエッタとアンジェリーナの2人がはっとした顔で自分の方を見たので、エルミリアは心配いらないと言うように緩く首を振った。

程なくして、エルミリアとアンジェリーナの母が姿を見せる。


「大事なお話は終わったかしら?」


微笑を浮かべながら問われて、エルミリアは思わず苦笑する。

相変わらず、驚くほどのタイミングの良さだ。



お久しぶりの更新です。

私生活は相変わらずてんやわんやですが…隙間時間を見つけて地道に続きを書いていきます…!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ