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俺の『全自動支援(フルオートバフ)』で仲間たちが世界最強 ~そこにいるだけ無自覚無双~  作者: epina
第六章 死霊術師とハイオーク

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84.冒険は意外なことがあったほうが面白いもの!

「穢れた者たちよ。消えなさい!」


 ディシアが掲げた聖印から光が放たれ、正面に展開していたオークゾンビたちを包み込んだ。


「すごいっ! オークゾンビがいなくなったのだわ!」


 驚くエチカの言うとおり、オークゾンビたちは塵ひとつ残さず消え去っていた。


「これが聖女のクラススキル……《アンデッド浄滅》よ。低級アンデッドを文字通り消滅させるわ。普通の《アンデッド退散》は一日一回だけど、これは無制限よ」

「無制限って……そんなの反則なのだわ!?」

「だってスキルの行使に魔力を消耗しないんだもの。祈りを捧げれば光は何度でも放てるわよ?」


 エチカがショックを受けている。

 《精霊召喚》は結構魔力を使うもんねぇ……。


 ちなみに他の信仰職も使える《アンデッド退散》は、ゾンビやスケルトンなどの低級アンデッドを逃走させる程度だ。

 だけど《アンデッド浄滅》は完全消滅させてしまう。聖女だけが使えるという意味でもユニークスキルに匹敵するかもしれない。


「うーん。でも消されちゃうと手がかりが調べられなくなっちゃうんだけどなぁ~」

「別に今回は討伐報酬が出るわけでもないでしょう? アンデッドなんて不浄な存在は片っ端から消し去るべきよ」


 シーチャの懸念もなんのその、ディシアは強気に胸を張った。


「それに死霊術師が関わっているなら、ゾンビがこれだけってことはないんじゃないかしら? 操るならともかく、放置してるってことは制御してなかったってことでしょうし」


 死霊術師の《アンデッド使役》で操れるアンデッドモンスターの数には制限がある。

 強力なアンデッドほど少なく、ゾンビやスケルトンなどの低級アンデッドほど数多く制御できたはずだ。

 死霊術師は、ここにはいなかった。

 つまり、ディシアの言うとおり《アンデッド作成》で蘇らせただけで《アンデッド使役》はかけていなかったということになる。


「なんのためにそんなことをしてるのです?」


 レメリが首を傾げた。

 確かに死霊術師の意図がわからない。

 《アンデッド作成》するだけして置いていくなんて、いったい何の意味があるんだろう。


「どうせロクでもないことよ。気にすることないわ。アンデッドなんて片っ端から滅ぼしてやる」


 ディシアがやる気満々だ。

 信仰職にとってアンデッドモンスターは不倶戴天の敵。

 ましてや聖女ともなれば存在自体が許せないのだろう。


「いや、待った。片っ端からって……ひょっとして他にも?」

「いるわね、アンデッドが。この先に十三体ほど」


 俺の問いかけにディシアが頷く。

 例によって《常時アンデッド探知》に引っかかったんだろう。


「見てみて~、ほら。オークたちの足跡があったよ~。それと普通の靴跡も混じってる。きっとこいつが死霊術師だよ」


 シーチャが地面を指差しながら皆に呼びかける。

 ディシアが眉を寄せながら首を傾げた。


「オークの死体を引き連れてるってこと? 制御から漏れてるゾンビだけ置いて行ったのかしらね」

「どうかな? 死体はこんなもの食べないと思うけどねえ」


 シーチャが拾ったのは、調理済みだったと思しき干し肉の欠片だ。

 ゾンビは生肉を貪ったりするけど、食材を加工する知恵はない。


「ひょっとしたら生きてるオークもいるのかもね」


 俺の一言に全員が頷いた。


「魔王軍に間違いないわね。追撃するわよシーチャ!」

「あ、ちょっと~! 後衛が先に行ってどうするのさ! ボクが先行するよ~!!」


 気の逸ったディシアが走り、シーチャが後を追いかける。

 俺やエチカ、レメリもすぐに続いた。


「ごめんね、エチカ。なんだか寄り道になっちゃいそうだ」

「ぜんぜん構わないのだわ! 冒険は意外なことがあったほうが面白いもの!」

「確かに普通のオーク退治では終わらなさそうな気配です。でも、魔族がいるならどんと来いなのです!」


 どうやら、みんなは気合充分みたいだ。

 よーし、この調子で死霊術師の陰謀をくじいちゃおう!




 ◇ ◇ ◇




 などと息巻いていたものの……。


「ふぅ、これで百十八体目……いくらなんでも数が多すぎるわね」


 見つけたスケルトンの群れを消滅させたディシアが、額の汗を拭いながら息を吐いた。

 最初のうちはゾンビも見かけたけど、今ではスケルトンの方が多くなってきている。

 おそらく、この近辺のオークの死体はずいぶん前に倒された個体だから、ほとんどが白骨化しているのだろう。

 レメリも呆れたように嘆息する。


「もはやオーク退治じゃなくてスケルトン退治なのです。生きてるオークが見つからないから、このままではエチカはランクアップできないのです」

「あたしは別にいいんだけど、これってやっぱり変なのだわ? スラッド、死霊術師ってこんなにスケルトンを作れるものなの?」

「普通は無理だね……」


 《アンデッド作成》は確かに《アンデッド使役》と違って作成上限はないけど、使用することで魔力は消費する。こんなにたくさんのアンデッドを生み出すなんて普通なら不可能だ。


 考えられる可能性を模索してみよう。

 もちろんユニークスキルを使っているというのが最もしっくりくる。

 でも、これだけ常識を覆してくるとなると、それだけじゃないかも……。


「ひょっとしたら死霊術師はアーティファクトを使ってるのかもしれない」

「アーティファクト?」


 俺の呟きを聴いてエチカが首を傾げた。


「マジックアイテムの中でも指折りの効果を持つ古代の逸品だよ。通常の手段では破壊することができなくて、同じ物がひとつとしてないものをそう呼ぶんだ。まあ、マジックアイテムのユニークスキル版みたいなものだと思えばいいかな」

「すごい、そんなものがあるのね!」


 エチカだけじゃなくて、みんなも驚いている。

 アーティファクトって意外と知られていないのかな?


「もし死霊術師がユニークスキルとアーティファクトの使い手なら常識は通用しない。例えばユニークスキルのほうで《アンデッド作成》の魔力消費をゼロにして、アーティファクトのほうで操れる上限を撤廃しているとかね。その逆だって考えられる。だから俺たちも先入観を捨てたほうがいい」

「ふ~ん。本当にそんなアイテムがあるなら高く売れそうだな~」


 話を聞いたシーチャが悪そうな笑みを浮かべる。


「あったとしても禁忌職の力をパワーアップさせるアイテムとか、絶対に禁制品だけどね……」


 念のために釘を刺しておいたけど、シーチャも冗談のつもりだったのかそれほど気にする素振りを見せなかった。


「なんにせよ、全部のアンデッドを《アンデッド浄滅》で倒すのは、さすがにディシアでも骨が折れる話だよね~。ひょっとしたら見つけられてないだけで、もっとたくさんいるかもしれないし。依頼料が出てるわけでもないしさ」

「だからと言って死霊術師を放ってはおけないわよ!」


 そうだ。いくら冒険者が慈善事業じゃないと言っても、さすがにこれは放っておけない。

 死霊術師が魔族だとすれば何の目的もなくアンデッドを量産しているはずがないし。

 何か大きな動きの前触れだと考えるべきだ。


「でも、どうするのです? アンデッドはまだまだたくさんいそうなのです。いくらディシアでもどこにいるかわからないアンデッド全部を一度に倒すことはできないのです」

「それはそうだけど……」


 レメリの言うことには理があるので、ディシアも認めざるを得ないようだ。


「だったら、ギルドに報告に戻るのが良さそうなのだわ。あたしのランクアップは後でもできるんだし……」


 エチカの言葉で、みんなの間に撤退も止む無しという雰囲気が流れ出した。

 確かに普通なら撤退して、ギルドに報告するべき案件だ。

 でも――


「みんな聞いてくれ」


 聖女(ディシア)の対アンデッド能力は《アンデッド浄滅》だけじゃない。

 そして、ディシアは俺の《全自動支援(フルオートバフ)》でパワーアップしているはず。

 まだ試してもいないのにアテにするのはどうかと思うけど……これまでの経験を踏まえて、敢えて断言する。


「俺にいい考えがあるんだ」


 俺の役目は、仲間を信じることだからだ。

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