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俺の『全自動支援(フルオートバフ)』で仲間たちが世界最強 ~そこにいるだけ無自覚無双~  作者: epina
第五章 オーク退治

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76.サラマンダーで全部焼こうと思ったけど駄目なのね

 俺たちは目的地であるハイドラ山脈の麓まで到着した。

 ディシアが麓から伸びる山道を指差す。


「確かオークはあの道を通ってくるって話だったわよね?」

「はいです。北から来るのです。あっちは魔族とオークの領域です」

「えっ、魔族の領域って!?」


 レメリの答えを聞いて驚いたのはエチカだ。

 シーチャが改めて解説する。


「ああ、エチカは知らなかったんだね~。もともと魔王が現れた五十年前の大戦の頃は、こっち側も全部魔族の領域になってたんだ。それを取り戻したのがカシウ=セイウッド=ベルクラフト陛下なんだよ」


 へー、カシウってそんなことしてたんだ。

 俺もよく知らなかったな。


「ああ見えて、ただの酔っ払いのおじさんじゃないのです」


 レメリも知ってたみたい。

 まあ、俺は田舎で引き篭もってたからなー。


「ハイドラ山脈の山越えは難所で有名なのよ。軍を動員できないから、こうして向こうからちょこちょこやってくるオークたちを軍と冒険者が狩ってるってわけ。要するに最前線ね。あっちこっちに物見用の砦もあるわよ」


 これについてはディシアの言うとおり。

 魔王軍、といっても主力のほとんどは魔王の瘴気に侵されたモンスターだ。

 地上種族(ぼくら)のようにきちんと連携を取れるわけじゃない。

 一部の魔族たちがモンスターを率いることはあるけど、それもやっぱり統制が取れているとは言い難い。


「そうなのね……でも、だったら山道を完全に封鎖しちゃったほうがいいんじゃないの?」

「そうするとしばらくは安全でしょうけど、変にトンネルでも掘られると逆に被害が増えかねないのよ」

「他の魔族はともかく他のオークはあんまり頭が良くないから、道があるなら素直にそこを使うのです」

「なるほど、そういうことなのね!」


 ディシアとレメリの説明をひととおり聞いて、エチカも納得したみたい。

 まあ、オークが何を求めてこっちに来るのかとかは説明しなくてもいいか。

 エチカには刺激が強いと思うし。


「それじゃ手はずどおりシーチャに痕跡を探ってもらってオークを探そうか」


 そういうわけでシーチャに偵察に出てもらうと。


「あった」

「早っ!」


 シーチャがものの数分で戻ってきたので、思わず素で驚いてしまった。


「ま、オークはゴブリンと同じで痕跡を隠したりする知恵がないしね。そういうわけで、この先の窪地にオークの野営地がある。数は十匹で変異種はいないよ。どうする?」

「今なら私の魔法で一網打尽にできるのです」


 うーん、レメリの提案はありがたいけど……。


「んー、変異種もいなかったならエチカだけで充分な気がするけど、どうする? もともとエチカのランクアップのための仕事だし」


 俺の意見にしばし考えこんだあと、エチカは笑顔で大きく頷いた。


「わかった。やってみるのだわ!」

「討伐報酬を取らなきゃいけないから、やりすぎないようにね」


 窪地の野営地を眼下にのぞむ地点に向かおうとするエチカに念のため注意をする。


「あっ、だったらサラマンダーで全部焼こうと思ったけど駄目なのね……」


 おっと、あぶなかった。

 サラマンダーは火の精霊。普通なら問題ないだろうけど、《全自動支援(フルオートバフ)》の効果を受けている間はオークを灰にしかねない。

 失敗を経験させてもよかったけど、エチカは結構そういうの引きずるタイプだからなぁ。

 素直に成功体験を積ませてあげたほうが伸びるだろう。


「じゃあ、いつもどおりシルフの弓にするのだわ」


 いつもどおりに弓を構えるエチカ。

 すかさずディシアとレメリが声をかける。


「気づかれたら危ないから念のために【神聖鎧セイクリッド・アーマー】で防御力を上げておくわね」

「【魔力付与エンチャント・マジック】もどうぞなのです。弓にかければ矢が全部魔法の矢になるのです」

「ふたりとも、ありがとう!」


 エチカがふたりに満面の笑みを返した。


「ベ、別に感謝されるようなことじゃないわ。それよりもっと守りを強くするわよ」

「【筋力強化(ブーストマイト)】もかけるのです。いや、いっそ強化魔法を全部がけ(フルエンチャ)するのです」

「え? え?」


 ふたりはエチカの笑顔にすっかりほだされてしまったようで、さらなる支援魔法(バフ)を上乗せしていく。

 相手はDランク冒険者が五人もいれば問題なく討伐できるオーク十匹。

 どう考えてもオーバーキルだと思うけど……。


「……ま、いっか」


 しっかり準備してきたから魔力ポーションにも余裕があるし。


「ふふーん?」


 そこでふと、隣のシーチャがニヤニヤ笑いながらこっちを見てることに気づいた。


「俺の顔になにかついてる?」

「べっつにー? いつもみたく笑ってるなーって思ってただけさ」

「そうだったんだね」

「アレスがいた頃からそうだったよ。前にも言った気がするけど、スラッドはそうやって笑顔でみんなのこと見守ってた」


 シーチャの見つめる先では、女の子三人がキャッキャと騒いでいた。


「……今なら少しだけわかるんだ。その気持ち」


 そう呟いて、シーチャは優しげな笑みを浮かべる。


「シーチャ、ひょっとして……」


 かつてのシーチャは、パーティのみんなから一定の距離を置いていた。

 それは過去を思い出してしまうからだったのか、と言いかけて。


「……いや、そうか。よかった」


 俺もシーチャと並んで、みんなを見守った。

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