75.山賊なんてみんなアレスみたいなもんだよ
「いや~、まさかスラッドがあんな簡単にへばっちゃうなんてね~」
シーチャがさして残念でもなさそうな顔で肩を竦める。
「スラッド……」
「レメリ……そんな悲しそうに見つめられたら、俺もいたたまれない気持ちになるよ」
「ス、スラッドはちゃんと頑張ったのだわ! ゴブリン相手のときは、もっとかっこいいもの!」
エチカ、それはフォローになってないよ……。
「そもそもスラッドに前衛をやらせようって発想がやっぱり無茶だったのよ。身体能力はそこらの一般職と同じなんだから。ましてや《全自動支援》の効果を受けてるわたしたちについていけるわけがないじゃない。スラッドがゴブリン相手なら戦えるのは一般職でもギリギリ対処できるモンスターだからよ」
ディシアの至極もっともな意見に全員が納得して頷いた。
「う~ん……ごめんなさいです。私はスラッドならできると思ってしまったのです」
「別にレメリが謝るようなことじゃないよ。俺もワンチャンいけるかもって思ってたわけだし」
「そ、それでもスラッドは私の勇者なのです!」
必死に慰めてくれようとするレメリ。
う~ん、嬉しいような悲しいような複雑な気分。
でも、気持ちは嬉しいな。
「そういえば、この人たちはどうするの?」
あ、そういえばエチカは山賊を退治したときの対処を知らないのか。
「頭目だけ連れて行くです。残りはここで縛っておいて街道警備隊に報告するのです」
レメリが淡々と答えると、エチカが驚いて目を見開いた。
「えっ、それだけでいいの?」
「賞金がかかってるのはだいたい頭目なのです」
「さすがに全員は連れていけないでしょう? それに引き取られれば街に輸送されて鉱山奴隷か縛り首。街道警備隊が来る前にここでモンスターに襲われるようなら、神が彼らに相応しい裁きを下したってことになるのよ。事前に彼らに信仰職の《聖別》スキルを使っておくか、神殿で売ってる聖水をふりかけておけば……一週間くらいアンデッドになることもないわ」
冷徹なディシアの説明にエチカの表情が曇りかけたとき、いつの間にか眠りから覚めていた頭目がここぞとばかりにアピールを始めた。
「ま、待ってくれ! 俺たちは心を入れ替える! こんなところでモンスターに食われるなんてかわいそうだろ!? だからこの縄をほどいて――」
「レメリ~いつものお願い~」
「【真意暴露】」
シーチャの合図でレメリが【嘘暴き】の上位魔法をスキンヘッドの頭目にかける。
「……で、入れ替えて何をするの~?」
「はっ! 入れ替えるわけねえだろ! 盗みに殺し! こんな世の中じゃ、それが一番のお楽しみだからな! もちろんお前らみたいな女子供は全員売り飛ばして――」
「【強制沈黙】」
レメリの魔法で頭目の台詞の続きが聞こえなくなった。
うーん、レメリとシーチャの連携尋問はいつ見ても鮮やかだ。
「こういうことさ。兵士に志願するでも神殿に保護を求めるでもなく略奪に明け暮れてる山賊なんて、みんなアレスみたいなもんだよ~」
「みんなアレス!? それなら、この人たちを置いていくのに賛成なのだわ!」
アレスを引き合いに出されるとエチカが力強く頷く。
同情してはいけない悪人がいるってことをしっかり学んでくれたみたい。
その点だけはアレスに感謝かな。
そんなこんながありつつも途中の宿場町で街道警備隊に頭目を引き渡した俺たちは、そのまま目的地に向かって移動を再開するのだった。




