64.勇者の資格を剥奪し、死刑とする
それから数週間、俺とエチカはふたりで薬草採取に出かけたりした。
心躍るような冒険ではないかもしれないけど、精霊がお供するエチカとの旅はとても楽しくて、ずっとこうしていたいって思わされた。
ランク特典のお店は相変わらずグレードが高かったけど、たいした依頼も受けないのに申し訳ないので、スタッフさんに無理を言って一番普通のお部屋を借りている。
もちろん夜のお店にもお世話になった。
おかげで露出度抜群のエチカと行動を共にしても、俺は未だに紳士でいられている。
ディシアはひとまず神殿に戻って、修行をしているようだ。
最近はモンクの中に混じって稽古もしているらしい。
神官の皆さんには「聖女様がそんなことをしてはいけない」って言われるらしいけど、無視して自分のやりたいようにやってるらしい。
レメリは王城に招聘されて、前線で戦う兵士のためのポーションを作っている。
魔族と直接戦う以外にもこういう方法があるんだと知って、とても喜んでいた。
エチカとはたまに買い物に出かけて、女の子同士すっかり仲良しになっているみたいだ。
シーチャは、カシウに雇われてスパイのバイトみたいなことをしてる。
《才盗り》の一件をだいぶ高い貸しにしたらしく、金はとらずにカシウにいろいろと便宜をはからせているらしい。
転んでもタダでは起きないあたりは、さすがだ。
そうそう、ナイちゃんのことも忘れちゃいけない。
彼女は普段、俺の頭の中に住んでいるらしい。
なんでも俺の夢の中で新しい屋敷を建てて住んでいるんだとか。
大丈夫だよね? 俺、急に死んだりしないよね?
そして、最後に。
勇者だったアレスは……。
「アレスから勇者の資格を剥奪し、死刑とする。さらに女性被害者たちや遺族の気持ちに鑑み、直前に去勢を行いしかるべき苦痛を与える」
「嘘だろ……嘘だろオイイイイイイッ!!?」
アレスは……そう、アレスは勇者裁判での有罪が決まった。
判決は問答無用の死刑。
罪科の多さはもちろんのこと、建国貴族の令嬢と関係を持ったのが本当にヤバかったみたい。
カシウは旧大陸への根回しを丹念にやっているみたいだから、刑の執行は少し先になりそうだけど覆ることはないだろう。
さすがの神殿もここまで大ごとになっては『勇者免罪』で通すのも難しい。
そもそも、アレスが《勇者の資質》を失った旨が大々的に発表された以上、神殿もアレスを庇う理由はない。
そう……アレス本人は気づいてないけど、シーチャによる《勇者の資質》の《才盗り》はとっくに済まされてしまったのだ。
一瞬すれ違うだけでスリみたいな要領でスキルを盗めるらしく、シーチャは「これも世界のためになるなら少しは罪滅ぼしになるのかな」なんて言っていた。
アレスの《勇者の資質》はシーチャがスキルキャンディと呼ぶ飴玉に変化した。
シーチャの手からカシウに、カシウの手から大きな取引材料として神殿……いいや。ディシアが預かることになった。
ディシアは俺との約束を守った。
なんでも旧大陸から派遣されていた神官が全員、王都から追放されたらしい。
アレスの罪の隠蔽に協力していた人達だ。
今頃は旧大陸行きの船で海の上にいるはず。
勇者派閥は大幅に弱体化したらしいから今後は『神教国』で冷や飯を食わされるんじゃないかな。
ちなみにシーチャのユニークスキルについては裁判記録からも消されている。
それこそ神教国にマークされたら大変だから、当然のことかもしれないけど。
ともあれ本当にいろんなことがあったけど、全部解決した。
勇者パーティも完全に解散したのだ……。




