55.絶対に許さないからね
「王はそんなことは考えてないよ」
「わかってるさ。王が《才盗り》の存在を明かすだけで充分って考えてることぐらいね」
「だったら、どうして俺たちの前から姿を消そうとしたの?」
饒舌だったシーチャが無言になる。
「そっか。みんなに《才盗り》そのものを知られたくなかったんだね」
「本当にごめん。ボクはこういう奴なんだ」
「いいよ。その気持ちはわかる」
俺は笑った。
シーチャも無理して笑っていた。
「レメリ、謝りたがってたよ」
「そっか……別に気にしなくていいって伝えておいてよ」
「シーチャが自分で伝えなきゃ」
「いや、ボクは――」
「俺は許さないよ」
シーチャが驚いて俺の顔を見上げた。
その視線が初めて家族から外れる。
「《才盗り》が使えないのもいい。俺たちの前から姿を消す、それも良くないけどシーチャが決めたことなら仕方がない。だけど……レメリの謝罪を聞かなかったら。レメリに謝らなかったら。俺はシーチャのことを絶対に許さないからね」
「君って奴は……ボクが一番つらいところをピンポイントでついてくるんだね」
「どうせ君は、あの家族にも謝れなかったんだろう?」
シーチャが頷いた。
「許してもらえなかったらどうしよう。いや、許してもらえるはずがない。そもそも、そんな資格はない。でもいつか……って先延ばしにし続けたら、できなくなった」
「シーチャは許してもらいたかったの?」
「……いいや」
「罵倒されたかった?」
首を横に振るシーチャ。
「何も言わずに家族を助けるのが、一番楽だった。違う?」
「スラッド……」
「君はそういう奴だしね」
俺が小さく笑うと、シーチャがため息をついた。
「そうさ。ボクはきっとこれからも、逃げ続けるんだ。楽な方へ逃げて、ずっとずっとひとりで……」
「この間はできたでしょ」
「この間?」
俺の指摘にシーチャが目をぱちくりさせた。
「自分の立てた計画でレメリが死にそうになったとき、あんなに必死になってたし」
レメリの帽子を見つけたとき、俺はシーチャの声で冷静になれた。
あそこにいる誰よりも自分を責めて、叫びだしたかったのはシーチャ自身だったのに。
「それにレメリにもちゃんと謝れた。シーチャはやろうと思えばできるんだ。だから……ここで何も言わずに逃げたら、きっとまた死ぬほど後悔するよ?」
「ほんっと君って奴はさぁ……知ったような口ばっかり利くよね~!」
シーチャがいつもの口調に戻って、ハァとため息を吐く。
「……それでいて図星だから困るよ~」
シーチャがごろんと寝っ転がった。
いつの間にか、家族たちはいなくなっている。
夢の中にはシーチャと俺だけが残されていた。
「前回の謝罪に比べれば、今回はとっても簡単でしょ。飛び出したことを謝って、これからも一緒に冒険するだけなんだから」
俺がそう言うと、シーチャは参ったと言わんばかりに両手で顔を覆って大笑いする。
その声には嗚咽が混じっていたけど気づかないフリをして一緒に大笑いした。




