47.ナイちゃんなら絶対やれる!
「これが今の一番の願いだよ。わかる?」
要するに、ナイちゃんが自分の力をきちんと使えるようになれば全部解決するってことだ。
ナイちゃんを訪れた人が無差別に夢に落とされることもなくなるし、ナイちゃんが寂しい想いをしないで済む。
俺の願いを読み取ったナイちゃんがきょとんとした。
「えっ……そんなこと、できるの?」
「わからない」
何しろ、俺のスキルは全自動なのだ。
実際にスキルの効果を受けるのは俺じゃなくて、いつも俺以外の誰か。
それは《全自動支援》でも《全自動弱体化》でも変わらない。
だから、俺はいつだって仲間を信じている。
「でも、俺は君にならできると思うんだ。唯一種モンスターと恐れられる超越存在が、俺に考え付く程度の夢を叶えられないわけないよ」
「でも、でも……」
いまだに迷いを見せるナイちゃん。
そこで俺は、すーっと息を吸い込んで。
「さあ! 神にも匹敵すると讃えられし唯一種よ! 数多の星を擁する天よ! 麗しき汝が真名は“夢夜識”ナイトメア・フェアリー! その威において、わが夢を叶え給え!」
芝居がかった口調で考えたセリフを読み上げ、ウインクする。
ふわふわ浮いてるから、イマイチ恰好がつかなかったけれど。
ここにいるのは俺とナイちゃんだけなのだ。
俺の性癖すら把握している相手に、今更何を恥ずかしがることがある。
「……ええ! わかったわ、わかったわ! そうよ……わたしに叶えられない夢なんて、ない!」
ナイちゃんが俺の夢を笑顔で請け負った。
「さあ、信じて! 君ならできる! ナイちゃんなら絶対やれる!」
「やれる、やれる! 信じる、信じる! わたしはわたしと、あなたを信じるわ!」
俺とナイちゃんを中心に、星空の夢を光が包み込んでいく。
「さあ、さあ! 今度はあなたの口から願い事を言って! どんな夢でも叶えてあげる!」
美しく舞い踊るナイちゃんに向けて、俺は満を持して告げる。
「俺の仲間になって! そして、自分の力を自分のものにして!」
「もちろんよ、もちろんよ! わたしはあなたの仲間になる! そして、自分の力を……自分で操るわ!」
次の瞬間、俺は途方もない眠気に襲われて……意識を失った。
◇ ◇ ◇
目が覚めると、俺はベッドの上にいた。
「……あれ、ここはどこ? まだ夢の中?」
見知らぬ部屋……でもなかった。
壁は石造りで、周囲には質のよさそうな調度品。
そして、壁に掲げられている国旗。
間違いない。ここは王城の一室だ。
「うーん、うまくいかなかったのかな……」
どうやら俺は、まだ夢を見ているようだ。
現実感があるし、ほっぺをつねると痛いけど、ナイちゃんの夢だと判別ができない。
王城ということは、勇者パーティに加わるときの夢だと思うけど……。
「旅人さん、旅人さん。お目覚めはいかがかしら?」
ん、ナイちゃんだ。
悪戯っぽい笑みを浮かべながら、目の前をふよふよ飛んでいる。
「ひょっとして、俺はアレスの夢に入れたの?」
王城は、俺とアレスが初めて出会った場所だ。
確かにここなら接点はあるし、その頃なら俺に対する悪感情もそんなにはないだろう。
しかし、ナイちゃんは首を横に振った。
「いいえ、いいえ。ここは夢ではないわ。現実よ!」
“夢夜識”は誤字ではありません。
ナイちゃんの真名です。
詳しくは活動報告にある「唯一種設定集」をご覧ください。
(本編のネタバレ満載につき閲覧注意)




