41.また勇者パーティに復帰してくれるわよね?
互いの無事を祝い合った後、俺たちは朝食を囲みながら事情を話し合った。
俺も誤解が解けてディシアに殴られずに済んだし、エチカも無事に紹介できた。
だけど、案の定というか……アレスの扱いについては完全に意見が割れてしまった。
「話はすべてわかったわ。それなら、さっさとアレスを起こすべきよ」
「私は反対です。アレスはここです。封印しておくべきです」
「うん、ボクもレメリに賛成~!」
頑として譲らないディシア。
アレスを眠らせたままにしたいレメリとシーチャ。
エチカなんかは何も言えずにおろおろしてる。
「確かにあいつは救いようのないクズだけど、そんなことはずっと前からわかってたことじゃない。何より、世界を脅かす魔王を倒せる唯一の存在を、わたし達の個人的な悪感情で切り捨てるなんて許されないわ」
うん、ディシアの言うことはまったくもって正論だ。
アレス有罪を掲げていたレメリとシーチャも押され始める。
「ディシアが手強いです。いつもよりです」
「う~ん、やっぱりディシアは自分の感情には従わないよね。それはわかってたけどさ~」
「当然よ。勇者を導いて世界を救うのが、わたしの使命だもの」
話を聞いててわかったけど、ディシアはアレス個人のことをとっくの昔に見限っていたみたいだ。
あくまで求めているのは勇者の性能だけだと主張している。
アレスの人格を問題にしていないだけに隙がない。
「実はスラッドのスキルでアレスが強かったって、それが何? 聖剣が使えるのは勇者だけって事実は何も変わってない。レメリの言ってた代わりの勇者だって、アテがあるわけじゃないんでしょう? それならわたし達は勇者を制御して、魔王を倒させるべきだと思うわ」
あくまでも理想を語るディシア。
その構想がすでに破綻しつつあるとしても、最後の最後まで貫くつもりだろう。
シーチャがため息を吐いてから、すべてを諦めたように首を横に振った。
「頑固だとは思ってたけど、これほどとはね~。だったらボクから言うことはもう何もない。ディシアはアレスについていくといい。ボクは御免だね」
「私もです。アレスについていけないです」
「……そう。わかってもらえなくて残念だわ」
シーチャとレメリのアレス拒絶宣言に、ディシアが本当に無念そうにつぶやいてから……俺のほうを見た。
「さっきからずっと黙ってるけど、スラッド。あなたはどう思うわけ?」
「アレスはもちろん起こすよ。最初からそのつもりだし」
「だったら、また勇者パーティに復帰してくれるわよね?」
「アレスがいいって言えば構わないけど、ひとつだけ条件がある」
怪訝そうな顔のディシアに、俺は口元に指を立ててみせた。
「アレスには俺のスキルを秘密にしておいてほしい」
「どうして? そもそもアレスが増長したのは、あなたがスキルを秘密にしていたせいでしょう。明かしておけば、あなたが追放されることもなかったじゃない」
「あ、ディシア、スキルの話はちょっと~……」
「シーチャは黙っててちょうだい」
ディシアにぴしゃりと遮られると、シーチャが処置なしとばかりに肩をすくめた。
レメリもエチカに「ディシアはすごく善人です。だけど、いっつもこうなのです」と話している。
「スキルを広められるのが、そんなに不都合? 確かに大変な目にも遭ったでしょう。でも、与えられたスキルは人々のために正しく使うべきだわ。それともパワーアップの道具扱いされる事がそんなに不服? 世界の命運よりも自分が優先?」
一気にまくしたててきたディシアに、俺は冷静に答えた。
「ディシア。俺はそんなふうには思ってない」
「じゃあ、何なのよ!」
煮え切らない態度の俺に苛立ちを募らせたのか、ディシアが胸ぐらを掴んでくる。
痛くないように持ち上げずに掴むだけなあたりに優しさを感じる。
だからこそ俺は最大限の敬意を示すために、彼女の理想に現実を突きつけた。
「俺のスキルのことを知ったら、アレスは戦わなくなる」




