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俺の『全自動支援(フルオートバフ)』で仲間たちが世界最強 ~そこにいるだけ無自覚無双~  作者: epina
第三章 夢屋敷

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40.選んだっていいんだよ

「傷を治してくれたの、覚えてる? ほら、レメリを庇ったときに。あのとき重傷を負った俺を助けてくれたでしょ」

「え、ええ。よく覚えてるわよ! まったく、アンタって人はただの荷物持ちのくせにあんな無茶して……」


 ディシアが懐かしそうに、慈母のような優しい笑みを浮かべる。

 あのときは俺が攻撃対象じゃないから、《全自動弱体化(フルオートデバフ)》は発動しなかった。だから俺は大怪我を負ってしまって。

 その傷をディシアが治してくれたのだ。


「あのときはありがとう、ディシア。助かったよ」

「別にいいのよ。わたしは当然のことをしたまでだから」


 そうだね、君はあのときもそう言っていたよ。

 お礼を言われたときは「どういたしまして」でいいのに、当然のことだから感謝される(いわ)れはないと。

 今思えば、いつもそうだった気がする。

 ある意味アレスとはまったく逆で、だから俺なんかよりも断然アレスと仲が悪くって。


「そうか、よかった。覚えててくれて」

「当たり前じゃない。忘れるわけがないわ」


 夢の中で姿や記憶が変わってしまっても、ディシアに変わりはない。

 優しい君でいてくれてよかった。

 だから、本当にごめんね。


「モンク僧に回復魔法は使えないよ、ディシア」


 ディシアの表情が完全に凍り付いた。


「君は聖女なんだよ」

「ち、違う。わたしは――」

「おお、どなたかと思えば聖女様ではありませんか」


 まだ否定しようとするディシアに、誰かが話しかけてきた。

 さっきまで俺()()を徹底的に無視し続けてた神官だ。


「おお、本当だ」

「ありがたや!」

「おい、こちらに聖女様がおられるぞ!」


 神官たちがどんどん集まってくる。

 俺たちはあっという間に取り囲まれてしまった。


「どうか、聖女様。我らに加護をもたらしてくださいませ」

「どうか、勇者様とともに魔王を打ち倒してくださいませ」

「どうか、この世界に神の奇跡をもたらしてくださいませ」


 (こうべ)を垂れ、()いつくばり、祈りを捧げ始める神官たち。

 そう……これが『聖女』が神殿を訪れたときの自然な光景。

 ディシアが夢の中で忘れていた『神官が自分に取ってくる態度』を正しく思い出したのだ。


「いや……やめて……」


 涙を流しながら首を振るディシア。


「ディシア。ごめんね……思い出させてしまって」


 聖女とは勇者と同じく選ばれた存在。

 レアスキル《聖女の資質》を持ち、成長すれば死者すらも蘇らせることのできる神の奇跡の(にな)い手。

 ディシアがこの世に生まれたときから望まれたカタチ、それが『聖女』の信仰職。

 ディシアが望まなくとも、世界がそう望む。


 そして、ディシアは勇者パーティの中で誰よりも世界を救いたいと心の底から望んでいた。

 本人が否定していても、これもディシアの望みのひとつなんだ。


「あ、ああ……完全に思い出した。わたしは聖女だった」


 今やその姿もモンク僧ではなく、聖女だけが袖を通すことを許される神聖装束に変化していた。

 今なら俺が手を伸ばせば、ディシアは現実に立ち返れるだろう。

 

「でも、選んだっていいんだよ」

「えっ……?」


 俺が何を言っているのかわからない、という顔をするディシア。


「何も無理に忘れなくたっていい。思い出したなら選んでいいんだ。聖女とモンク僧。君は、どっちになりたいの?」


 この問いかけで、ディシアは今度こそ完全にすべてを思い出したようで……憑き物が落ちたように笑った。


「ああ、そうだったわね……わたしにそんなことを言ってきたのは、アンタだけだったわよね」

「うん。モンク僧になりたかったとは知らなかったけど」


 聖女になりたいわけじゃなかった、と酒に酔ったディシアの愚痴を聞いたことがある。

 だから、他になりたいものがあるならなればいい……と俺は気安く言った。

 あのときはディシアに「そんなのは無責任よ」とすごくなじられた。

 怒らせてしまったと、すっごく反省していたんだけど。


「でも、モンク僧になりたかったかと言われると……それもちょっと違うのよね」

「え、そうなの?」

「わたしはきっと、自分の望みが欲しかっただけなのよ」


 ディシアがそうつぶやいた瞬間、俺たちはナイちゃんの屋敷の前にいた。

 どうやら、夢から覚めたようだ。

 そろそろ太陽が顔を出し始めている。


「ああ、本当に夢だったのね……」


 ぼんやりしたままディシアがつぶやいた。

 なんだか唐突に戻ったせいか、俺の方も夢見心地だ。


 ディシアが屋敷を見上げた後に、俺を見て。

 少し考えてから、口を開いた。


「そういえば……なんでアンタ、逃げたくせにここにいるのよ。一発殴らせなさい」

「あ、結局そこに戻るんだね」


 生真面目な顔がなんともディシアらしくて、なんだか俺は安心してしまうのだった。

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【悲報】生殺与奪の権を竜に握られた人類、竜国の使者を「田舎者」呼ばわりしてしまう ~俺は学院生活を楽しみたいだけだから気にしないけど、俺を溺愛する竜王族の姉は黙ってないかもしれません〜
― 新着の感想 ―
[一言] やめてくださいしんでしまいます。
[一言] まて、あわてるな、これは勇者の罠だ!>< 殴る前に話を聞いてくれ〜w(≧▽≦;)
[一言] 夢から醒めたディシアはアレスを目覚めさせてから魔王討伐パーティの再結成を主張するのかな? スラッドがアレスによりパーティから追放されたと言う事実については信用に値しないと思ってるか、仮に事実…
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