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俺の『全自動支援(フルオートバフ)』で仲間たちが世界最強 ~そこにいるだけ無自覚無双~  作者: epina
第三章 夢屋敷

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38.一発殴らせなさいよ

 並び立つ神々の像。

 おごそかな雰囲気。

 ここは、まぎれもなく神殿なのだろう。

 神殿だけど、神殿なのに、おそろしいほど神殿らしくない。


 何故なら、ここには信仰職の神官はもちろんのこと、一般職の司祭がひとりもいないのだ。


 人はいる。

 ここにいるのは何故か全員がモンク僧だ。

 モンク僧は素手格闘を得意とする『戦闘職』。

 確かに神殿に出入りする人々ではあるが『信仰職』ではない。


 そんな彼らが、石壁の内側にある神殿の庭で一心不乱に修行に明け暮れている。

 ここが夢の中だとわかっていても、あまりに異様な光景だ。


「あそこにいるのは、ディシアかな……?」


 一瞬、彼女がディシアだとわからなかった。


 『聖女』のディシアはモンクたちに紛れて庭にいる。

 年恰好は俺の知るディシアとそう変わらない。みどりがかった金髪と碧の眼の、出るところは出て引っ込むところは引っ込んでるナイスバディの美少女のままだ。

 だけど、ディシアが着ているのは聖女の神聖装束ではなかった。

 周囲のモンク僧と同じ修行着だったのだ。

 その手に()めた指抜きグローブだけが現実のディシアとの、ただひとつの共通点。


「せいっ! はぁーっ!!」


 ディシアは他のモンク僧と同じく稽古中のようだ。

 構えも堂に入っていて、俺の知るディシアからは想像もつかない。

 彼女は確かにしゃべり方はさばさばしているけど、祈りを捧げる姿にはいつもハッとさせられた。

 あまり信心深くはない俺でさえも、神の存在を感じさせる何かがあったのに。

 夢の中のディシアからは、それが微塵(みじん)も感じられない。


「これは……かなり厳しいかもしれないな」


 俺はレメリのときのように簡単にはいかないだろう、と覚悟した。

 この夢はディシアという女性の内面に深く踏み込んでいる。

 土足で入ってはいけない領域に、俺は部外者として登場してしまっている。

 これがナイちゃんの言っていた望まれているか、望まれていないかの差か……。


「ディシア」


 一向に修行が終わる様子がないので、意を決して話しかける。

 ディシアが俺のことをキッと睨みつけてきた。

 その瞬間、全身が総毛立つ感覚を覚える。


「なんだか知らないけど……アンタのこと、一発殴りたいわ。殴らせなさいっ!」

「えっ、ちょっ、いきなりなんで!?」


 ディシアが殴りかかってきた。

 その正拳突きは驚異的な正確さでもって俺の心臓を穿(うが)たんと放たれた。

 現実のディシアが会得していないはずの精密な(かた)だ。


 ……だけど、あまりにも遅い。余裕で避けられる。


「避けるんじゃないわよ!」

「いや、普通避けるから!」


 ディシアの言ってることは無茶苦茶だ。

 だけど連続で繰り出される回し蹴りは見たこともない美しい()を描いている。


 とはいえ、これらの蹴りもナメクジのように遅かった。

 俺が格闘の素人といっても回避は造作もない。


 もちろん、本来ならきっと速いんだろう。

 なにしろ目の前にいるのはディシア自身の理想の姿。

 そしてここは彼女の夢の中。俺なんか瞬殺されてしかるべき。


 それが遅いってことは《全自動弱体化(フルオートデバフ)》が発動しているんだ。

 つまり《全自動弱体化(フルオートデバフ)》がディシアが敵対していると判定している。

 やはり俺は歓迎されていない!


「ユニークスキルが夢の中でも有効なのが確定したのはいいけど……それって《二の打ちいらず》はどうなんだ!?」


 ディシアには、おそるべきユニークスキルがある。

 《二の打ちいらず》という、格闘攻撃で急所を突いた相手を一撃で死に至らしめるというスキルだ。

 俺の《全自動弱体化(フルオートデバフ)》は攻撃してきた相手の攻撃力をゼロにするが、即死攻撃にまで有効かどうかはわからない。

 最悪当たれば死ぬかもしれない。追撃に備えて、思わず身構えたが……。


「うっ……なんで、体がこんなに重いの……?」


 まずい。

 ディシアに《全自動弱体化(フルオートデバフ)》の老衰が進行してる!


 ナイちゃんは夢の中で死ねば現実の肉体も死ぬと言っていた。

 俺が《二の打ちいらず》を食らえば死ぬかもしれないように、ディシアも俺のスキルで死ぬかもしれないってことだ!


「もうやめてディシア! 俺が悪かったから!」

「嘘ね……あなた、自分が悪いとは思ってないでしょ」


 そう言われても、なんで殴りかかられてるのかわからないし!


「アンタはそうやって、無責任にわたしたちのことを放って……って。あれ? アンタ、スラッドじゃない?」


 よろよろとふらついていたディシアが急に元気になった。

 なんだか知らないけど敵対関係じゃなくなってデバフが解けたぞ!

 よかった!!


「そうだよ! 急に殴ってくるからびっくりしたじゃないか!」

「そんなのはあなたが急にいなくなったからじゃない! わたしたちを置いて逃げたってアレスが……ん、アレス? そうだわ。わたしは勇者パーティの一員だったのに、こんなところで何をして……」


 何がきっかけかさっぱりわからないけど、ディシアも現実に立ち返れたみたいだ。


「思い出せた?」

「ええ、そうみたいね。思い出したらムカついてきたから……スラッド、一発殴らせなさいよ」

「君が言うと本当にシャレにならないから、やめて!」


 どうやらディシアを完全に目覚めさせるには、もう一悶着ありそうだ……。

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【悲報】生殺与奪の権を竜に握られた人類、竜国の使者を「田舎者」呼ばわりしてしまう ~俺は学院生活を楽しみたいだけだから気にしないけど、俺を溺愛する竜王族の姉は黙ってないかもしれません〜
― 新着の感想 ―
[一言] しょ、少林寺…。(≧▽≦;) 真面目な話、モンク(修道僧)がゲームとかではマーシャルアーティスト(武闘家)と同義になっちゃったのは、カンフー映画で「ショーリンジ・テンプルのバトルモンク」が…
[一言] つまりディシアは武闘家になりたかった? いや違うか、レメリを自分ひとりでも守り抜ける強さを欲していたということだろうか。
[一言] 三十六房!暫く修行して戦力アップ? 勇者の脳味噌をゴニョゴニョして遠隔操作したら万事解決!
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