36.やっぱりスラッドは私の勇者でしゅ
「いいの~? 勇者の聖剣じゃないと魔王は倒せない。魔王を倒して半魔族の差別をなくすんだって言ってたのに、諦めちゃうの?」
「諦めはしないです。別の方法を考えるのです。きっと何かあるのです」
自分で焚きつけておきながらレメリの反応を見たシーチャは、してやったりと笑っていた。
「あ、そうか。こんな回りくどい真似をしてまで俺にアレスを追いかけさせたのはなんでだろうってずっと思ってたけど……シーチャは最初からこれが狙いだったんだね」
「なんのことかな~?」
俺の指摘にシーチャがニヤニヤ笑いながら、わざとらしく肩をすくめてみせる。
いやいや、鈍い鈍いって言われる俺にもさすがにわかったぞ。
「まあ、さすがにワイバーンとナイトメア・フェアリーは計算外だったけどね~。今だから言えるけど、レメリの帽子を見つけたときパーティを抜けるべきじゃなかったって心底後悔したよ。それについては認識が甘かった。レメリ、本当にごめん」
シーチャがレメリに深く頭を下げた。
「何の話です?」
「あ、あたしにも何がなんだかさっぱりわからないのだわ!」
きょとんとするレメリ。
話についていけないエチカ。
「フフッ、じゃあスラッド。正解をど~ぞ」
シーチャに話を振られてしまったし、ここは俺が言うところか。
「つまりね、シーチャは俺が抜けたタイミングでわざと自分も抜けて、アレスを反省させたかったんだよ! パーティの仲間の大切さをわからせるために!」
あれ? シーチャがコケてる。
「ちがーうっ!!」
「えっ、嘘!?」
そんな、自信満々に胸を張って答えちゃったよ!
「ボクはレメリとディシアに、アレスを見限らせるつもりだったのっ!!」
「そ、そうだったんだ。え? でも、何がどうしてそうなるの?」
「本当にこの男は……!」
こめかみをピクピクさせながら、シーチャが心底呆れたような視線を送ってきた。
「あのね。レメリとディシアは魔王を倒したかった。それはわかるよね? でも実はアレスが魔王を倒せるような強い勇者じゃないってわかれば、その前提は崩れるじゃん? 魔王を倒せないクズ勇者についていく理由なんてないんだからさ!」
アレスが実は強くない……?
「ごめん、さっぱりわからない」
「君は! もっと! 自分のスキルを自覚しろーっ!」
「そう言われても……」
全自動なので。
俺の意志とはまったく無関係なので。
「スラッドのスキルって何の話です?」
「それはね――」
その後、シーチャは俺の秘密をあっさりレメリにバラした。
まあ、レメリは俺の仲間になるって言ってるからいいんだけどさ。
自分の口で言ってないから、なんか釈然としない。
「すごいです! やっぱりスラッドは私の勇者でしゅ」
あ、噛んだ。レメリかわいい。
めっちゃ照れて、恥ずかしそうに睨んできてるのもかわいい。
「はあ……」
「どうしたのエチカ。ため息なんて吐いちゃって」
俺が心配して声をかけると、エチカの羨ましそうな眼差しが向けられてきた。
「いや……なんか入り込めないなって思っていたのだわ」
まあ、勇者パーティとはなんだかんだ半年いっしょにいたし。
エチカは会って数日だからねえ。
「あたしもスラッドを弄り倒せるようになりたいのだわ!」
「エチカもおいでおいで、です」
「こっちはいいぞ~」
どうかふたりは、エチカを悪の道に誘わないでほしい。
「じゃあ、充分に休憩できたし……俺はそろそろ行くよ」
「そっか、またナイトメア・フェアリーの屋敷に行くんだね?」
「うん。ふたりを迎えに行かなくちゃ」
シーチャの問いかけに俺は迷わず頷いた。
レメリが不満そうに俺を見上げてくる。
「アレスは寝かせたままでいいです」
「そうもいかないでしょ」
どんなにアレスがひどい奴でも、世界のためには必要なんだし。
「スラッド……あたしたちは手伝えないけど……その、気を付けてね!」
「うん、ありがとうエチカ。行ってくるよ」
こうして俺は三人に見送られながら、再びナイトメア・フェアリーの屋敷へと向かった。




