27.君のせいってわけじゃないし
宿場町を越えて、さらに進む。
アレスたちはここを通り抜けたらしいし、警備隊から話を聞けたから情報収集の必要はないだろうってシーチャが言ってた。
この手の判断は盗賊職に従った方がいいから、そのまま馬を走らせる。
「エチカ、シルフの風を止めて!」
平原に伸びる街道を走っている途中、先頭のシーチャが叫んだ。
馬を止めて降りると、シーチャは俺たちを待つことなく街道の外に向かって駆け出していく。
「シーチャ、どうしたのかしら?」
「たぶん何か見つけたんだと思う」
エチカと一緒にシーチャを追いかけた。
しばらく走った先でシーチャが膝をついて地面に落ちている何かを見ている。
真剣な表情だ。
「シーチャ! いったい何が……」
走っている途中で、地面に落ちていたものの正体がはっきり見える。
全身の血の気が引いた。
シーチャのもとに全力で走る。
頭の中にいろんな想像が駆け巡っていった。
「シーチャ!!」
「スラッド……」
シーチャが神妙な面持ちで俺を出迎える。
一度だけ俺の方を見てから、再び地面に視線を落とした。
俺の目も『それ』にくぎ付けとなる。
「スラッド……これって」
追いついてきたエチカも顔面蒼白だった。
俺が拾い上げた『それ』に悪い何かを予感して。
「これは『魔女』の……レメリの帽子だ」
落ちていたのは三角帽子。
魔女レメリのトレードマークだ。
帽子には大きな穴が空いていた。
原型はかろうじて留めているが……。
「その人……ここにいないってことは、大丈夫なのよね?」
エチカがおそるおそる聞いてくる。
「いや……レメリが無事だったら、お母さんの形見をここに置いていくはずがない」
「えっ! それって……」
俺の返事を聞いたエチカが絶句する。
「……スラッド。少なくとも、このあたりにアレスたちはいない。モンスターの死体も見える範囲にはないし、みんなの足跡もこのあたりにはついてない」
シーチャの無感情で理路整然とした事務的な報告。
それを聞いて、俺は――
「……そうだね。きっと街道近くで戦いが起きて、帽子だけここまで吹き飛ばされたんだと思う」
シーチャと互いに頷き合って街道に戻ろうとすると。
「なんで二人ともそんなに冷静なの!? 仲間がやられてるかもしれないんじゃないの!」
エチカが慌てふためきながら叫ぶ。
俺は振り返らずに答えた。
「そう見えたなら、ごめんね」
「スラッド……?」
エチカのすごく不思議そうな声を背中で聞いた。
「エチカ。ボクたちが冷静に見えるのは、自分たちの役割をわかってるからさ」
「役割……?」
「君も冒険者を続けてれば、いずれわかる」
シーチャもエチカとの会話を切り上げて、俺とともに街道の方へ歩みを進める。
かわいそうだけどエチカの相手をしている時間はない。
すぐにでも手がかりを見つけないと。
「俺が間違ってたのかな」
シーチャの言う通り、俺が楽観的過ぎたのかもしれない。
俺が抜けてしまったせいで、勇者パーティが……。
「別に君のせいってわけじゃないし。こればっかりはアレスの判断ミスだ。それに、まだレメリのことはわからないさ」
「……そうだね。とにかく今優先すべきはみんなの安否確認だ」




