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俺の『全自動支援(フルオートバフ)』で仲間たちが世界最強 ~そこにいるだけ無自覚無双~  作者: epina
第二章 勇者追跡

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勇者4.なんで守ってあげなかったのよ

総合日間ランキングで1位になりました!

皆さんの応援のおかげです。

本当にありがとうございます!

これからも皆さんに楽しい物語を届けていきたいと思います。

「グルアアアアッ!!」


 そのモンスターは咆哮(ほうこう)とともに空から現れた。


「ワイバーンです!」


 『魔女』が叫んだ。

 勇者パーティはワイバーンと戦ったことがある。

 前は特に苦戦もしなかった。だから問題ない相手だと思われたのだが……。


「ぐわっ!?」


 勇者アレスがワイバーンの尾による刺突を受けて、腕から血を流した。


「なんだこいつ……希少種(レア)か? 前に戦ったときよりもかなり強いぞ!」


 ワイバーン……蝙蝠(こうもり)のような飛膜(ひまく)(つばさ)を持つトカゲのような姿のモンスターだ。

 全長は馬三頭分ほどあり、偽竜(ぎりゅう)とも呼ばれている。


「うげっ……クソ、気分が……!」


 そしてワイバーンの尾の先端には毒針がついていて、今まさに勇者アレスは猛毒(もうどく)(おか)されたところだ。


「毒治すから! 【解毒治療(キュアポイズン)】!」

「クソッ、毒を治すと傷の治療が遅れるか!」


 『聖女』のおかげで毒は消えたが、先ほどの攻撃で受けた傷はまだ治らない。

 魔法の行使には呪文の詠唱(えいしょう)が必要なので、すぐに回復魔法は使えない。


 そして、一撃離脱戦法いちげきりだつせんぽうを用いるワイバーンは空中だ。

 勇者アレスの聖剣は届かない。

 旋回し、勢いをつけて再度の降下攻撃を仕掛けてくる。


「【風の刃(ウィンドカッター)】!」


 詠唱を完成させた『魔女』がワイバーンに攻撃魔法を放った。

 【風の刃(ウィンドカッター)】は風属性の初歩的な攻撃魔法だが、空を飛んでいる敵に対して特に有効だ。

 前のワイバーン戦では羽根の飛膜を切断して、地面に落とすことができた。

 『魔女』はそのことを覚えていたのだが……。


「落ちてこないです」


 『魔女』の声がわずかに震えている。

 【風の刃(ウィンドカッター)】は確かにワイバーンの羽根に命中したが、被膜に傷をつけただけで切断には至らなかったのだ。


「畜生、やっぱり希少種(レア)かよ!」


 前回戦ったときは魔王軍の幹部が騎乗していた個体だったが、明らかに今回戦っているワイバーンの方が強かった。


 もちろん、勇者アレスの予想は外れている。

 このワイバーンは希少種(レア)などではなく、ただの普遍種(コモン)である。

 《全自動支援(フルオートバフ)》がないから強く感じるだけなのだ。


 そんなこととは露知らず、勇者アレスは再度の攻撃に備えて聖剣を構えたのだが……。


 ワイバーンがいきなり軌道を変えた。

 『魔女』のいるほうに。


 【風の刃(ウィンドカッター)】は多少なりともダメージを与えた。

 そして、勇者アレスの聖剣はまだワイバーンを傷つけていない。


「あっ……」


 ヘイトコントロールに失敗したことに気づいた『魔女』は、身に迫る恐怖に腰を抜かす。

 それが幸いした。

 尾針は『魔女』の頭上をかすめ、彼女のトレードマークである三角帽子を串刺しにして空へと舞い上げた。


「おい、もう一発食らわせろ!」


 勇者アレスが叫ぶ。

 だが、『魔女』はガタガタ震えていて魔法を唱えるどころではなかった。次はない。

 ワイバーンが再び旋回して『魔女』にとどめを刺さんと舞い戻る。


「あ、あああ……」


 迫ってくるワイバーンを見上げながら、『魔女』は走馬灯(そうまとう)を見ていた。

 半魔ゆえにただでさえ青白い顔が恐怖でさらに青くなって、涙がとめどなく(あふ)れ出る。


 それを見たアレスは、刹那のうちにこう思った。


(ああ、あいつ死んだなぁ。まだ喰ってねえのに。早いところヤッとくんだったな)


 助けに入れば間に合う距離にもかかわらず、アレスはただ見ている。

 ワイバーンと『魔女』の間に入れば、代わりに毒針を受けることが確実だ。

 ならば()()を守る理由など、あろうはずがない。


 半魔の少女の命運にあっさりと見切りをつけ、『魔女』抜きでワイバーンをどう倒すか勇者アレスが算段し始めたとき。


「歯ァ食いしばれ、クソトカゲ!」


 『魔女』の目前まで飛んできたワイバーンの横合いから『聖女』が渾身のパンチを繰り出した。

 次の瞬間、ワイバーンの頭部に『聖女』の指ぬきグローブを()めた拳がめり込む。

 ユニークスキル《二の打ちいらず》の効果により即死したワイバーンはそのまま彼方へ吹っ飛んでいった。


「よ、よかった……当たった」


 『聖女』が力なく呟き、肩で激しく息をする。

 信仰職の『聖女』のパンチがワイバーンに命中したのは完全に偶然だったが、なんとかやり遂げた。

 仲間を守ることができたのだ。


「スラッド……」


 『魔女』のか細い声を聞いた『聖女』がハッと振り返る。

 『魔女』は茫然としたまま涙を流し続けていた。

 顔からは生気が失われていて、今にも死んでしまうのではないかとさえ思える。


「そう、よね……あいつだったら、きっと」


 ()()()()と同じように、迷わず『魔女』を庇うはずだ。

 鎧も着ていないのに。

 ただの荷物持ちなのに。

 パーティの中で、誰よりも死にやすいはずのに。


 あのときだって、『魔女』を庇って死にかけて。

 慌てて回復魔法をかけて、なんとか蘇生させられて。

 こちらが怒っているのに、ケロッとした顔で。


 「ありがとう! よかった、無事だった」と。

 そんなふうに笑うに決まっている。


 ああ……それに比べて。

 ()()()はいったいなんなのか――?


「ははっ、やったな! やっぱお前、戦闘職になった方が良かったんじゃねえの?」


 ケラケラと無神経に笑いながらふたりに近づいてくる勇者アレス。

 その笑い声が、これ以上ないほど『聖女』の(かん)(さわ)った。


「……なんで守ってあげなかったのよ」

「あ?」

「あの状況でこの子を守れたのは、アンタでしょうが! 魔法使えとか指図してる暇があったら走って駆け付けなさいよ!」

「何言ってんだよ。オレの聖剣が届かないのに、そんなことしてもしょうがないだろうが」

「【風の刃(ウィンドカッター)】ぐらい勇者なら使えるでしょう!」

「あー、その手があったか。だったら、あいつが死んだ後でも俺が魔法で倒せてたんだなー」


 勇者アレスに仲間を守るなんて発想はない。

 前に出るのは聖剣で気持ちよく敵を斬るためだ。

 初歩の魔法は聖剣より威力が低いので、使うという発想にそもそも至らなかったのである。


 愉快そうに笑う勇者に、『聖女』がゆらりと近づく。

 その顔には何の感情も浮かんでいない。


「な、なんだよ」


 何となく気圧(けお)された勇者が後ずさった瞬間。

 パァン、と空気が破裂するような音がした。

 『聖女』が勇者アレスの頬を張ったのだ。


「…………あ?」

「アンタ、本当に最低のクズね」


 それだけ言って『聖女』は(きびす)を返した。

 『魔女』のところに駆けつけて、甲斐甲斐(かいがい)しく介抱を始める。


「……は? なんでオレが殴られたわけ? マジでわけわかんねえんだけど」


 一方、自分が悪いことをしたと微塵も思っていない勇者アレスは、静かにキレていた。


(ふざけやがって……信仰職だから処女じゃなきゃいけないとか、もう知るか。絶対ヤッてやる。ついでに役立たずになった魔女の方もヤッとくか。他に誰もいないし、口封じも簡単だしな! ふたりとも死体はモンスターに食わせちまえばいいし……さっすがオレ、あったまイイー!)


 『魔女』をおぶって前を歩き始めた『聖女』の尻を眺めながら、アレスが舌なめずりをした。

 

 過去にも勇者アレスが仲間と衝突したことはある。

 そんなときに仲を取り持ってパーティを持続させていたのは、いつもスラッドだった。


 だけど、彼はもういない。


(とはいえ、『聖女』の神聖装束は厄介だしな……よーし、今夜だ。あいつが装備を脱いだところで決行する!)


 アレスが(わら)う。


 シーチャの予言した勇者パーティ崩壊は、すぐそばまで迫っていた。

再三注意:この作品にヒロインのNTR、殺害要素はありません。

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【悲報】生殺与奪の権を竜に握られた人類、竜国の使者を「田舎者」呼ばわりしてしまう ~俺は学院生活を楽しみたいだけだから気にしないけど、俺を溺愛する竜王族の姉は黙ってないかもしれません〜
― 新着の感想 ―
[一言] いや、ビンタしてる暇あったら、 さっさと見切りをつけて離脱すればいいと思う こんなのと一緒にいたら命がいくつあっても足りない よく判らないけど、王命みたいのが邪魔してるわけ? その割にはシー…
[良い点] 面白いです [気になる点] ワイバーンのコウモリのような皮膜の翼なら羽根ではなく翼膜では? [一言] これからも楽しみにしてます
[一言] NTRや殺害は無いって書いてあるけど、しかも数話先まで書かれてて今更だけども、スラッド間に合え! っ[★★★★★]
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