24.その辺の通行人にしか見えないのだわ
「そういうわけで、元勇者パーティでスラッドの仲間だったシーチャで~す。よろしくね、エチカちゃん」
次の日の朝、シーチャは朝食の席でパーティ加入をエチカに表明していた。
ちゃっかり俺のパーティメンバーとしてフィレステーキをほおばっている。
諸々の事情を聞いたエチカはというと、なにやらショックを受けていた。
「……というか、スラッドが勇者パーティに入ってたってこと自体を今初めて聞いたのだわ!」
「うん。別に言わなくてもいいと思ってたから」
荷物運びでアイテム係だったしねぇ。
「スラッドはこういう奴なんだよ~。許してあげてね!」
シーチャが珍しく俺をフォローしてくれる。
俺がアレスと口喧嘩になったときもどこ吹く風って感じだったけど、陰でいろいろ助けてくれていたのかな。
「SSSランク冒険者で、勇者パーティの元メンバー……考え得る限り最高の英雄のはずなのに、スラッドはどこからどう見てもその辺の通行人にしか見えないのだわ」
「俺は普通どころか無職だからね」
本当に謙遜とかじゃなくて、俺自身は普通にしているつもりなんだよ。
いつも周りが大袈裟に騒いでるんだ。
「それで、勇者パーティが危なそうだから追いかけるって話になったのね?」
「うん、そうしようかなって。ちょうど行こうと思ってた方角といっしょだったし」
出発も早朝の予定だったから、情報を知ってから最短で動くことになる。
夜に移動するのは危険過ぎるし。
「言ってもしょうがないかもしれないけどさ~。もう手遅れって可能性もあるからね?」
シーチャが椅子に寄りかかりながら唇を尖らせる。
「そればっかりは、大丈夫だってみんなを信じるしかないね」
「スラッドが人を信用するのは長所だと思うけどさ、行き過ぎも良くないよ」
今に始まったことじゃないけど、シーチャとは大抵意見が合わない。
「えっと、いいかしら?」
エチカが不安そうに挙手する。
「話を聞いた限りだと、勇者って相当やらかしてる奴に聞こえるんだけど……実際のところどうなの?」
俺がクビになったときの顛末は、さっきシーチャが説明してくれた。
あのときの会話を聞いていたらしく、会話内容まで完璧に再現してて、俺が逆に感心してしまったくらいだ。
「うーん、そうだねえ」
俺は少し考えて。
しっかり言葉を選んでから、口を開いた。
「ちょっとヤンチャなところはあるけど――」
「ちょっと~? ヤンチャ? 暴走でしょ、あれは」
「勇者だから聖剣を使えるし――」
「あれは聖剣に使われてるっていうの」
「いつも陣頭に立って戦ってるし――」
「自分が目立ちたいだけね」
「ちょっと、シーチャ! さっきから言い方がきついよ!」
俺が立ちあがって非難すると、シーチャは首を横に振りながら肩をすくめた。
「本当のことじゃん。ま、アレスは生きてるだろうね~。他の二人を囮にして逃げたって、ボクは驚かないし」
「シーチャ、未遂の段階でさすがにひどいよ。確かにアレスは、ガサツで、傲慢で、人の言うことを聞かないし、美点なんてひとつもない奴だけど、それでも勇者なんだよ」
「いや、スラッドも相当ディスってると思うけど……」
俺とシーチャのやりとりを何ともいえない顔で聞いていたエチカが、ハァとため息を吐いた。
「勇者はともかく他のふたりを助けるっていうのには賛成なのだわ」
「よし、これで決定! いいねシーチャ!」
「むぅ。まあ、君についていくって決めたのはボクだし、いいけどさー」
ブー垂れてみせているけど、シーチャはいつもこうやって問題点を指摘してくれていた。
勇者パーティにいた頃もシーチャは最終的に自分が折れるフリをして、一番まともな結論に落ち着かせていた。
そう考えると、シーチャの抜けた穴は本当に痛かったろうな……。
たぶん、アレスもパーティ内ではシーチャのことを一番信用していたし。
できれば勇者パーティに残ってほしかったけど、彼女には彼女の考えがあるみたいだし。
何より無理強いはできないよね。
「なにさ? ボクの顔になんかついてる~?」
「ううん、なんでもないよ」
「スラッドってときどきそうやって、みんなのこと見て笑ってたよね~」
シーチャとそんなやりとりがありつつも。
俺たちは勇者パーティを追って街を出発したのだった。




