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俺の『全自動支援(フルオートバフ)』で仲間たちが世界最強 ~そこにいるだけ無自覚無双~  作者: epina
第七章 栄光と勝利の宴

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87.スラッド様でいらっしゃいますか?

「それじゃあ、エチカのランクアップを祝して!」

「「「「「乾杯!」」」」」


 ギルド併設酒場のいつもの席で俺が音頭を取ると みんながみんな杯を交わし合った。

 シーチャはグビッと、レメリはちびちびと。それぞれの飲み方でお酒を楽しみ始める。


「くぅ~っ! 生き返る~~! この一杯のために生きてるって感じ~!」

「シーチャがまるでオッサンみたいな飲みっぷりなのです」

「そういうレメリはお子ちゃまじゃ~ん。そんなジュース飲んじゃってさ」

「むぅ、フルーツエールはちゃんとしたお酒なのです!」


 ふたりのやりとりを見ていたディシアがぴんと指を立てた。


「ふたりとも飲みすぎちゃ駄目よ。ほら、エチカも一気飲みしないの。ほっぺに泡がついてるじゃない」

「でぃしあってば、これるらいらーいりょうふなのらわー」

「今ので酔ったの!? エチカはお酒に弱すぎよ!」


 そんなふうに、みんなが騒ぐ様子を見守りながら、俺も杯の中のビールを空にする。


「ふぅ……」


 高級宿のワインも確かにおいしいけど、やっぱり仲間たちと飲むお酒は格別だなぁ。

 シーチャじゃないけど冒険の後の一杯は最高だ。

 またこんな風に冒険者として喉を潤せる日が来るなんて……しみじみ。


「ともかく、これで目標に一歩近づいたね~」

「目標? エチカのランクアップのことです?」


 シーチャの言葉に不思議そうな顔をするレメリ。


「そうそう。まあ、エチカだけじゃないんだけどね~」


 そこで一度シーチャが咳払いをして、全員の注目を集める。


「何を隠そうボクの目標は、このパーティ全員をSランク冒険者にすることだからね〜!」


 シーチャの大言壮語がギルド内に響き渡る。

 普段はそういう思惑をあんまり表に出さないのに、お酒のせいか、いつもより口が軽くなってる気がする。


「どういうことかしら? 依頼を全種類受けられるようにするならAランクで充分だと思うけど。スラッドがいるからSランク特典はパーティ全員が享受できるはずだし……って、エチカってばここで脱がないの!」


 ディシアのおかげでエチカの貞操と俺の理性は守られた。

 うーん、エチカにあんまりお酒を飲ませると危ないな……。


「ふぅ……それで、どういうことなのかしら?」

「名実ともにSランクパーティになれば、ボクらは面倒なしがらみからも解放されるからさ」


 改めて問いかけるディシア。

 シーチャは至って真面目なトーンで答える。


「目先のことに囚われずに好きなことだけできる。それになにより――」

「失礼します。スラッド様でいらっしゃいますか?」


 それは突然だった。

 背の高い黒服の男が、いきなり俺に話しかけてきたのだ。


「はい、そうですが……」


 部外者の闖入(ちんにゅう)に思わず眉をしかめそうになりながらも応対する。


「おお、やはりそうでしたか! 実を言うと、あなたにとって素晴らしい話を持ってきたのです」

「仲間といっしょにランクアップを祝っているところなんです。後でもいいですか?」


 楽しい雰囲気を壊されて少しムッとしてしまい、きつい言い方になってしまった。

 しかし男は意に介することなく自分の言いたいことだけを語り始める。


「ランクアップ? あなたは既にSSSランク冒険者でいらっしゃいますよね? ああ、お仲間の話ですか。失礼ですが、こちらの皆さんがスラッド様と釣り合っているとは思えません。あなたはもっと大きな世界で羽ばたける! 我々と来ていただければ、今以上の待遇を――」

「名乗りもせずにいきなりなんなんですか、あなたは!?」


 仲間を侮辱されて、つい大きな声をあげてしまった。みんなもびっくりしている。

 しかし、男はそんな俺を見て挑発的に笑った。


「おっと、まさかご存じでないとは思いませんでした。私は『栄光と勝利の宴』()()()のリーダー、“黒鴉”のヴァイスと申します。どうです、思い出しましたか?」


 クランとは、複数の冒険者パーティの連合体だ。

 ギルドから受けた依頼を自分たちの間で回したり、複数協力型の依頼を自分たちだけで請けたりする。ギルド公認ではなく黙認されたパーティ形式だ。

 ともあれ、質問には正直に答えておく。

 

「いえ、聞いたこともないですね」

「おやおや。これはこれは、スラッド様とあろうものが。いいでしょう、我々は――」

「『栄光と勝利の宴』……Aランク冒険者が中心となったセイウッド王国最有力クランのひとつだね~」


 シーチャに横から口出しされると、ヴァイスの頬がぴくんと跳ね上がった。


「……私はスラッド様と話しているのですが?」

「うちのリーダーを引き抜こうっていうなら、ボクたちにも関係ある話だと思うけど~?」


 シーチャが挑発的に笑い返しながら、ヴァイスの見えないところで右手中指を人差し指で叩くような動作をする。

 冒険者パーティは自分たちの間だけでやり取りするための符丁を決めてある。今のは『挑発に乗るな』……か。

 さっきからレメリとディシアが静かなのは、俺とヴァイスが会話をしている間にシーチャが符丁を送っていたからだろう。


「それはそちらで話し合っていただければ充分かと。それより我々のことをご存じなら、口出しが賢明でないことぐらい理解していると思いますが?」


 ん、どういう意味だろう。

 ヴァイスの言葉を聞いたシーチャが一段と声を低くする。


「“黒鴉”自ら、別の支部くんだりまで勧誘に来るなんてね。いや、スラッドのことを知ってるなら当然か。一体どこで聞いたのさ」

「それはもう、我々のクランの盗賊職がさる筋から……これ以上は明かせませんね」


 エチカを助けるときに冒険者たちの前で正体とスキルを明かしてしまっているし、盗賊職がその気になれば、俺がSSSランク冒険者だということは調べがつく。

 情報が広まるのは時間の問題だろうと思っていたけど……。


「それで、スラッド様。お答えは?」

「お断りします。俺はそちらに行くつもりはありません」

「フフ……そうですか。では日を改めましょう」


 俺の返事にもさほど残念でもなさそうに肩を竦めるヴァイス。


「我々のことを知れば、いずれ考えも変わることでしょうし……」


 何か言いかけたところで、ヴァイスの顔と服にバシャッと液体がかけられた。

 エチカの仕業だ。頬を膨らませたまま、杯をヴァイスの方に向けている。


「よくわかんないけど、スラッドをどっかに連れて行こうとするアンタは嫌な奴なのだわ! どっか行けーっ!」


 あちゃー……エチカにもパーティ間の符丁は伝えてあったけど、酔ってたからなぁ……。


「フフ……お嬢さん、粗相はいけませんね。このスーツだけで、あなたのふしだらな衣装が何着買えるか教えて差し上げましょうか?」


 ほんの一瞬だけ殺気を混じらせながらエチカを睨むヴァイス。

 しかし、ガンザさんを上回る闘気を受けても、エチカは臆さず啖呵を切った。


「そんなもん、いくらだって弁償してやるのだわ。アンタみたいなのにスラッドはあげない!」

「おお、怖い怖い。それではスラッド様、いずれまた……」


 こちらに向かって一礼すると、ヴァイスは去っていった。


「……Sランクパーティになりたいって言ったのは、ああいう輩に口出しされないようにするためでもあるのさ」


 シーチャはそう吐き捨てると、杯に残っていたエールを一気にあおった。

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