冒険
この世界には、数百万年前に世界が歪んだ事で記憶も歪み、記憶が完全に戻っていない者が居る。それも、数人では無く数百という膨大な数。
そんな者達の記憶を元に戻す為、ある少年が記憶の欠片を集めていた。記憶の欠片は【エンドピース】と呼ばれ、様々な場所に散らばっていた。
しかし、エンドピースを集めるその少年も、記憶が完全に戻ってはいなかった。
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見渡す限り何も無い砂漠を、少年が歩いていた。少年は後ろで一緒に歩いていた女性に声をかける。
「ここにあるかな…?」
女性は首を振って
「いや、ここに反応は無い。あともう少し歩いた方が良さそうだね。」
と言う。それを聞いた少年はため息をついて、その場に座り込んだ。
「まだ見つからないの…?もう3日も経ってるのに?そろそろ何か食べないと餓死しちゃうよ…」
すると、その少年の隣に少女が座った。そして少女は少年にデコピンをした。
「いてっ」
「弱音吐かないの!この先に村があるんだし、早く出発するわよ!金ならたんまりあるんだし、村で食べ物でも買ってきなさい!」
少女は少年を立たせ、スタスタと歩き始めた。少年は少女に引っ張られている為、時々転びそうになる。
「うわっ!も、もっとゆっくり歩いて~!」
「のんびりしてたらモンスター来るわよ!早くしないと餓死の前にモンスターに殺される!」
それを見ていた女性は苦笑いをして
「やれやれ…ツン8デレ2は大変だねぇ」
と言った。それが聞こえていたのか、少女は女性の方を向いて
「うるさい!誰がツン8デレ2よ!!」
と怒鳴った。
この少年は『ハク』という。世界各地を旅し、エンドピースを集めて持ち主に返すという役割をしている。そのままのエンドピースは持ち主かハク以外は触れる事が出来ない。その為ハクはエンドピースを見つけたら慎重にエンドピースを回収していた。
そしてハクと旅をしているのは『ワム』と『メイラ』だった。
ワムはエンドピースの力を感じる事が出来る杖を持っている。それを使い、ハクの手助けをしている。ワムの杖を狙う者が居るが、杖はワムにしか扱う事が出来ない。杖は攻撃や防御にも使える。
メイラは怪力である為、荷物持ちを担当している。モンスターに出会った場合、素手で立ち向かっていく。メイラにとってハクは自分の記憶を取り戻してもらった恩人といえる存在だった。恩返しにと一緒に旅をしていた。
ハク達は《メニガ》という村に着いた。この村は武器や防具が多く、冒険者が集まる村として有名だ。
「はぁ…お腹空いた…」
ハクは今にも倒れそうだった。メイラがハクの体を支えながら、料理店を探す。武器店や防具店はそこらじゅうにあるのに、料理店は全然見つからない。
「どんだけ戦闘に備えてんのよこの村…!全然料理店見つかんないじゃない!」
「ちょっとそこで待ってろ。アタシが聞いてくる。これでも食べて我慢してな。」
ワムがそう言って、ハクに飴を投げた。2つあるので、ハクとメイラの分だろう。飴を見たメイラは
(てか、食べ物あるんならさっさと寄越しなさいよ…!餓死したらどうすんのよ!)
と思った。飴をハクから貰い、近くの木の下に座る。メイラは飴を食べながら、ワムの帰りを待った。
「メイラ…水とか、飲める物ある?」
「あったらとっくに自分で飲んでるわよ…」
「それもそうか…はぁ…」
ハクはため息をついて、メイラに寄りかかった。そしてそのまま意識を飛ばそうとする。しかし、メイラに肩をつつかれて目を開けた。
「ワムが来たわよ!」
「ワム…料理店近くにあった?」
ハクが聞くと、ワムは頷いて
「この先に『ゲルバ防具店』があって、そこの分かれ道を左に曲がった所に『アムリア』って店があるらしい。そこで飯を食おう。」
と言った。それを聞いたハクはよろけながらも立ち上がった。一刻も早く何か食べなければ本当に餓死してしまう。
「早く…行こう…」
「ちょっと、大丈夫!?私が支えるから、あんまり無理しないで!」
メイラがハクを支え、ワムについていく。ワムはハクとメイラにペースを合わせていた。
「大丈夫かい2人とも?」
「私は大丈夫だけど…ハクが危険ね…」
しばらく進み、アムリアに着いた。店の中から美味しそうな匂いが漂う。ハクは目を見開いた。
「早く入ろう…!」
ハクは店のドアを開けて中に入った。店の中は客で溢れかえっていた。店員が来て、3人を空いている席に案内する。
「注文が決まりましたらお呼びください。」
そう言って、店員は厨房の方に戻っていった。ワムがテーブルに置かれた水を飲みながら、メニュー表を眺める。
「どれも美味そうだけど…ここで一旦準備整えないとだし、高すぎるのは頼めないねぇ…」
「とりあえず何でもいいから食べたい…飴じゃ小腹満たしにもならないよ…」
「じゃあ1回、チキンでも頼むかい?」
「うん…お願い……」
ハクがテーブルに突っ伏してそう言った。ワムは店員を呼び、チキンを3皿頼む。店員が厨房に戻るのを見ると、ハクの方を見た。ハクのコップは既に空っぽだった。
「そんなに早く水飲み干して大丈夫なのかい?チキンすぐに出来るらしいけど…」
「お腹空きすぎて危ない…早くチキン食べたい…」
「ハク、絶対大丈夫じゃないわよね…チキン以外に食べたいの決めときなさい。」
メイラがハクにメニュー表を渡す。ハクはメニュー表を眺め、これがいいとパスタを指さした。
「じゃあ私も頼んどこうかしら…腹が減っては戦ができぬって言うし。」
メイラは豪快にステーキを頼んだ。ワムは2人を見て苦笑いしつつ、サラダを頼む。チキンを食べるメイラが
「サラダだけで足りるの?もう3日も食べてないのよ?金ならたくさんあるんだし我慢しなくても…」
「アンタ、少しは察してくれても良いんじゃないか??」
ワムが少し赤面しながら、メイラに言った。メイラはやっと気づいたらしく、ジト目でワムを見ながらチキンを食べる。
「何か文句あんのかい?」
「散々歩いたでしょうが…旅する前に豪華なとこで食べまくったの?サラダだけで体持つの?」
「うっさいねぇ。そりゃアタシの勝手だろ?アンタがどうこう言うもんじゃない。」
「確かにそうだけど…」
メイラは自分の皿のチキンを食べ終わったらしく、ワムのチキンを見つめている。
「……そんなにチキンが食べたいのかい。」
「いらないんじゃないの?リバウンドするかもしれないわよ。」
「それとこれとは別の話だ。頼んだもんはきっちり全部食う。」
「ちぇっ、つまんないの。」
ワムに断られ、メイラは他にも違う物を頼もうとメニュー表を取ろうとした。横を向くと、ハクがテーブルに突っ伏していた。チキンだけでは足りなかったようだ。
「ちょっ、大丈夫!?チキンだけじゃ無理だった!?」
ハクが顔を上げる。焦るメイラを見て
「だ、大丈夫…まだ3分は我慢出来る…」
と掠れた声で言う。
「いや3分って危ないじゃないの!?どうすんの!?」
「じゃあアタシのサラダでも分けるか?」
「うぅ…ありがとう、ワム……」
ワムがハクの皿にサラダを載せていく。ハクは自分の皿に載せられたサラダを食べる。
「このサラダ美味しいね」
「メニュー表に『絶品!!』ってわざわざ主張するだけはあるって事だね」
ワムがチラッと厨房を見ると、大量の皿を持った店員が居た。しかし足取りがおぼつかない。
「あの店員大丈夫かい?凄いフラフラしてるじゃないか。」
ワムが店員の心配をした直後だった。その店員がつまづいて大量の皿を落とした。ガシャァンと派手な音を立てる。皿は数枚を除いて割れてしまった。
「あぁっ、あんなにたくさんの皿が…」
ハクもサラダを食べながらその店員の方を見た。するとハクはサラダを食べるのをやめ、立ち上がる。
「どうしたのハク?」
メイラがハクに聞くと、ハクは
「あの人、何であんなにフラついてたのか分かった。あの人が原因だ。」
と言った。それを聞いたメイラは目を見開いて必死に皿の破片を集めている店員を見る。
「あの店員が…?ホントに?でもあの様子じゃ、逆なんじゃ…」
「いや、これは恐らくその力に耐えきれてないって事だ。アイツはどこにでも入るからね。」
ハク達は店長に話をし、店員を連れて外に出た。店員はオドオドしている。ワムが
「アンタ、何か隠し事でもしてるんじゃないのかい?」
と聞いた。しかし店員は
「な、何で初対面の人に隠し事なんかするんですか?というか、初対面の人に対してその言葉づかいはどうかと思います…」
と言う。それもそうだと、ハクが話をする事にした。
「すみません。実は僕達、大事な物を探してるんです。パズルピースみたいな形をしてるんですけど…けっこう色んな場所に落ちてて。見かけませんでしたか?」
「探し物ですか?そんなの私に聞かれても…パズルピースなんて知りません…」
ハクがエンドピースについて聞くと、店員は目を泳がせながらそう言った。反応を見たハクは更に店員に問いただす。
「じゃあ、四角い箱のような物を見ましたか?」
「四角い箱…?何ですか?」
「特定の人の頭上に浮かんでるんです。特定の人といっても、けっこう居るんですけど。」
ハクがそう聞くと、店員はしばらく黙る。そして
「見ました。というか、今も見えます。あなたの上に、四角い箱みたいな物…」
と言った。ハクはそれを聞いて確信した。後ろに居た2人を見て頷く。そして店員の方を見て
「正直に言ってください。あなたは本当にパズルピースを見ていないんですか?」
と聞いた。焦った店員は
「だ、だから見てません!そんなパズルピースなんて…さっきの質問で何か分かるんですか!?」
と言う。ハク達から逃げているようで、一歩一歩後ずさっている。すると我慢出来ないメイラが店員の腕を掴んだ。
「いい加減ホントの事言いなさい!パズルピース見たんでしょ!?」
「め、メイラ!」
ハクが慌ててメイラの方を見た。すると
「や、やめろ!!お前らなんかに構っている暇は無いんだ!!」
店員がメイラの手を振りほどき、メイラを突き飛ばした。メイラは尻もちをつく。店員は逃げていった。
「早く追いかけないと!!」
「ちょっと待ってな。手っ取り早く済ませるよ。」
ワムが杖を使って地面に魔法陣を描く。その魔法陣にあの店員が映し出された。
「杖も反応してる。やっぱりコイツ、エンドピースに触ったみたいだ。」
「じゃあ尚更急がなきゃダメじゃないの!!」
「だからって、今向かったら確実に気づかれる。もう少し様子を見よう。」
しばらく魔法陣で店員の様子を見ると、店員は洞窟の中に入っていった。そして奥深くまで行くと、鉄の扉をノックした。鉄の扉が開いて、1人の男が出てくる。
「アイツ…仲間が居たのね…」
「だから言っただろう。様子見は大事だ。」
店員が男についていく。扉はもうロックされていた。
鉄の扉の奥の部屋には、エンドピースと思われるパズルピースが3つ程置かれていた。
「はぁ!?3つも!?」
「どうりでこの近辺の砂漠で見つかんなかった訳だね。コイツらがもう盗ってたって事か。」
「そろそろ行ってもいいんじゃないかな…?」
ハクがそう言って、魔法陣の中に手を入れる。ワムも頷いて、手を入れた。
「私は少し準備してから行くわ。」
メイラは残ってバッグの中からナイフを取り出す。そして切れ味を確かめると、2人が入った魔法陣の中に入った。
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「すみません…でも、まだバレてはいません…多分…」
店員は男に頭を下げた。男は壁を勢いよく叩く。壁にヒビが入り、ポロポロと欠片が落ちてきた。そして店員を見ると顔を殴った。
「てめぇ、自分が何したか分かってんだろうな?誰にもバレちゃいけねぇんだよこの事は。それを分かっててやったんだろうなぁ!?」
「わ、わざとではありません…!」
「うるせぇ!てめぇが居ると足でまといにしかなんねぇ!もういい!消えろ!!」
店員の腹を蹴り、うずくまる店員を壁に投げつけた。店員は血を吐いて気絶する。そして男はエンドピースと思われるパズルピースを見た。
「あれは絶対に必要なもんだ…誰にも渡さねぇ…」
「絶対に渡さない…ねぇ?それあなたの物じゃないんですけど」
「っ!?」
急に背後から聞こえた声に驚いた男が後ろを振り向く。そこには魔法陣から移動してきたハク、ワム、メイラの3人が居た。
「それ、返してもらうわよ。」
メイラがパズルピースを指さす。ワムも杖を男に向けて
「死にたくなきゃ、大人しく渡した方がいいと思うねぇ…」
と言う。しかし男は隠し持っていた短剣を持って
「絶対に渡すか!見られたからには死んでもらう!」
とメイラに突き刺そうとした。メイラは男の腕を掴む。そして短剣を奪うと、男の腹を蹴り壁まで吹っ飛ばした。
「ガハッ…!?」
「女だからって、なめるんじゃないわよ。さっさとパズルピース返しなさい。」
メイラは男から奪った短剣と持ってきたナイフを男の両脇に刺す。すっかり怯えた男にワムが
「アンタ、ホントに死にたいのかい?だったらアタシが手っ取り早くショック死させてやってもいいけど?」
と言う。男は短剣を取って
「や、やめろ!俺には絶対に必要なんだ!!」
とワムに言った。杖で魔法陣を描くワムが男に質問をする。
「何に使うんだいパズルピースなんか。」
「お、俺はただ娘を助けたくて…」
「人を助けるのにパズルピースが必要なのかい?記憶が無くなったのかい?」
「ち、違う…ゥグッ!?」
メイラが男の腹を思い切り蹴った。男は壁にめり込む。
「な、何で…」
「本当の事言いなさい。記憶のいざこざ以外でパズルピースを使う程の問題は無いはずよ。」
メイラはどこから見つけたのか釘バットを男に突き出す。慌ててハクが
「あ、えっと、もしかして知りませんでしたか!?…あー…知らない、ですよね…パズルピースが何なのかもよく分からないと思うし…」
と言う。するとワムがハクの手を引っ張った。
「わっ!?」
「メイラ、しゃがめ!!」
「!!」
メイラがしゃがんだ瞬間、男が短剣を投げた。しゃがんでいなかったら、メイラに刺さっていた。
「て、てめぇらには関係ない事だ…殺す…殺してやる………!!!」
男の体が黒い霧で覆われていく。そして一瞬にして“鬼”へと変貌した。短剣は巨大化し、オーラを纏っている。
「最近の“仮面”は能力強化も出来んのかい」
「んな事言ってられないわよ!早く倒してあれ浄化しないと!!」
メイラが攻撃を仕掛ける。しかし剣によって相殺される。そして剣を振り下ろした時の風圧で、メイラは壁まで吹っ飛ばされた。
「わぁっ!!」
「メイラ!!」
ハクがメイラの吹っ飛んだ方を見る。何とかメイラは無事で、よろけながらも立ち上がった。
「アイツの攻撃ただもんじゃないわね…」
「アタシが引きつけるから、その間にハクが何とかしてくれ」
「わ、分かった!」
ハクはずっとしまっていた剣を取り出す。剣を構えると、パズルピースまで走っていった。
『!!』
鬼がハクに気づいて攻撃しようとするが、ワムが攻撃をして右腕を落とした。
『!?』
「アンタの相手はアタシだよ。」
ワムはそのまま鬼に攻撃をする。そしてハクがパズルピースの所に行ったのを確認すると、攻撃をやめて自分にバリアを張った。
「んじゃあ、先にこっちを終わらせるかねぇ」
「私が足止めする。早めに終わらせといて!」
今度はメイラが鬼の気を引きつける。鬼はメイラに攻撃をするが、メイラは攻撃を全てかわし、鬼に攻撃をし続けた。
ハクは黒ずんだパズルピースに剣を刺す。剣はワムの魔法によって力を得ていた。するとパズルピースは空色に変わった。
「よし、元に戻った!」
ハクは空色のエンドピースを回収すると、鬼を見る。メイラが足止めしてくれているが、メイラもだいぶキツそうだ。ハクが剣を構えるが、ワムが止めた。
「ハクは行かない方がいい。」
「な、何で?早くしないとメイラが…!」
「またエンドピースが黒ずむ。」
そう言われてハクは黙る。持ち主かハク以外の誰かが触れば、エンドピースは黒ずんでしまう。だからむやみに人の前に晒してはいけない物だった。
「危ないだろう?メイラもだいぶ頑張ってくれたからねぇ。あとはアタシとメイラで何とかする。」
ワムはハクにバリアを張ってからメイラの所へ行った。そしてメイラを回復させると、魔法で鬼を動けなくする。
「トドメはメイラが刺しな。」
「分かったわ!」
メイラは右手に力を集中させる。そして鬼の心臓へと右手を打ち付けた。
「はぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
『ウガッ…グワァァァァァ!!!!』
メイラの右手は鬼の体を貫通した。鬼はそのまま倒れる。すると、鬼から何かが出てきた。
《ケタケタケタ…!!》
「またアイツ出てきた…!何なのよもう!!」
メイラが捕まえようとするが、その前に消えて無くなった!
ハク達が“仮面”と呼んでいるそれは、もうハク達の元には5回も来ていた。必ず暴走してモンスターになってしまった人が倒されると現れる。その為、ハク達はその仮面が人をモンスターにさせているのだと推測している。
「アイツの事は全然分かんないねぇ…」
「何の情報も無いし、対処出来ない…」
しかし捕まえようとすると、消えて無くなってしまうので捕まえられなかった。ワムが魔法で止めても消えてしまう。
「今度アイツ見つけたら魔法使って捕まえるわよ。」
「攻撃かい?」
メイラは頷いて壁に拳を打ち付けた。
「アイツムカつくから絶対に捕まえないと気が済まないのよ!」
「お、落ち着いて…!」
「とりあえず早く持ち主に返しに行くよ。あぁ、あとアイツどうすんだい?」
ワムが店員を指さす。まだ息はあるようだ。
「別にほっといてもいいんじゃない?私達には関係ないし。」
「で、でも…エンドピース触ってるんだよ?大丈夫かな…」
ハクが店員を心配する。それを聞いたワムが
「じゃあ、記憶でも消すかい?」
とハクに聞くが、ハクは
「え、それはダメじゃない!?」
と言った。それ以外に方法はないとワムが言うと、ハクは困ったような顔をしながらも放っておく事にした。
(ハクはそれでホントにいいのかしら…)
メイラはそう思いながらも、ワム達が先に魔法陣で帰っていた事に気づいて急いで魔法陣に入った。
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「……よし、これで19人目だね。」
ハクは、エンドピースを持ち主に返した数を記録した。しかし、まだ517人もの人が居る。
「全員に返せるの?」
「いや…多分無理だよ。しかも増えるかもしれないし…」
「じゃあどうすんだい?」
ワムが聞くと、ハクは
「…ちょっと悩んでるんだよね…」
と返した。2人はそれを深くは聞かず、メニガ村に戻った。
メニガ村で騒動があったらしい。いろいろな冒険者が集まっていた。
「え、何があったの?」
ハクが焦る。3人の所に1人の冒険者がやってきた。
「お前らは今気づいたのか?」
「あぁ。さっきちょいと遠出してね。今戻ってきたんだ。何があったんだい?」
「実はメニガ村の鐘楼で“ジョーカー”が出たっていう事らしいんだ。」
「ジョーカー?」
メイラがジョーカーについて聞く。ジョーカーの名前を聞いた時、ハクが微かに怯えていた事には気づかなかった。
「ジョーカーってのは謎の存在だ。仮面を被っていてステッキを持っているらしい。俺も見た事はねぇが噂は聞いている。あとジョーカーは
『人を分裂させる事が出来る』
らしい。」
「ぶ、分裂!?」
メイラが驚く。ハクがワムの袖をギュッと握った。かなり怯えている。
「大丈夫かいハク?」
「っ……だい、じょうぶ…」
何とか平常心を取り戻し、ハクは冒険者の話を聞いた。
「まぁ俺も本当かどうかは分かんねぇけどな。メニガ村にそんなの出たら恐ろしい。出たかもしんねぇからこうなってんだけどな。」
冒険者は鐘楼の方向を教えてくれた。分かりやすいようにアムリアから北に進んだ所にあると教えてくれた。ハク達は鐘楼に向かう事にした。
「ここが鐘楼…?」
「何かあったような雰囲気じゃないけどねぇ…」
鐘楼に来たハク達は、辺りを見渡す。しかし、どこか荒れている様子も無い。
「しかも誰も居ないじゃないの…ホントは、何にも無かったのかしら?」
メイラがそう呟いた時だった。突然、鐘楼の入口に黒い渦が現れた。
「な、何これ!?」
渦はハク達を吸い込もうとしている。ワムが魔法で結界を張るが、結界を壊された。
「吸引力が強すぎやしないかい!?」
「こ、このままじゃ…吸い込まれる……!!」
「人が居ないの、これのせい…ね…!!」
吸い込まれないように踏ん張っていたが、ハクの足が浮いた。
「わぁっ……」
「「ハク!!!」」
ハクは渦に吸い込まれた。2人も、ハクを追いかけて渦の中に入った。
作者です。小説では色々と冒険してます。
私あるあるの“最初と最後と設定だけ先に作って中を全然作らない”のせいでなかなか物語進まないです。頑張らないと。
思い切ってファンタジー系出しました。最初は仕組み分かんなくて思いついたもの一気に出そうとしてましたけど長くなるからやめました。
ハクもワムもメイラもキャラデザ描いた頃からお気に入りなので3人揃ってる所が書きたいですね。この後の展開がどうなるのか私分かりませんけど。(は?)
他にも色々考えてるのでこれと同時進行で上げれたらいいなーと思ってます。でもこれの更新が凄く遅くなると思うのでその他のやつの投稿もだいぶ遅いですね。作りすぎ注意
会話文だらけで読みづらい文をここまで読んでくださりありがとうございます。次回の更新が遅くならないように毎日コツコツ執筆しながら頑張って過ごします。ファンタジー系目指してみようかな