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2話

 昼休みになるとミリアはエリオを無理やり引きずり回し、二人のチームメンバーと非公認の活動拠点に向かった。

 活動拠点はすべてのチームに与えられるのだが、チームとして成立していなかった“アカツキ”には与えられていなかった。

 ミリアが勝手に開いている部屋を自分たちの物にしたのだ。


 旧校舎の片隅にある物置き小屋が“アカツキ”の活動拠点なのだが、既に使われていない小屋は今にも朽ち果てそうなほどボロかった。

 建て付けの悪い引き戸を開けると外のボロさが気にならないほど綺麗に整頓されていた。

 とは言え、もともと物置だから三角コーンや白線引きなどがあって未だに物置として使われているのが見て取れた。


「さて、これで私たちはダンジョンを潜るための規定人数の四人になりました。やっとダンジョンに潜れます」

 ミリアは指し棒を取り出しビュッと振って棒を伸ばすと黒板に書かれている文字『メンバーを四人集めてダンジョン制覇!』をバシバシと叩く。

 

「ダンジョンに潜ったことないんですね」

「アンタだってダンジョンに潜ったことないすっよね!」

「あ、うん……、無いです」


 既に入学から半年経つのにチームも組めずダンジョンに潜ったことがない生徒は全生徒の二割程いる。

 それは生産系と言われる者たちで構成されており、戦いの役に立たないために戦闘系チームからはハブられているのだ。

 それに生産系同士ではチームは組めない最低二人は戦闘系が加入しないといけないのだ。


 つまり今ダンジョンに潜れないのは大半が生産職で戦闘系はいない。


 だが、ミリアたちは生産系では無い、だからエリオは驚いたのだ。

 しかし、ユウコはダンジョンに潜ったことが無いとバカにされたと思って机をバンと叩きエリオを威嚇した。


「じゃあ、生意気なこと言わないで欲しいっす!」

「ちょっとユウコ、エリオに当たるのやめなさいよ。別に嫌味とかじゃ無いでしょ」

 エリオにきつく当たるユウコをなだめ、こんな状態でこの先うまくやっていけるからしらとミリアは心配しつつ、コホンと咳を一つつくと話を続けた。


「それで、チームの問題点は攻撃力です、私たちには絶対的に攻撃力が足りません」

 確かに彼女の言う通り“アカツキ“には攻撃力が足りなかった。ダンジョン内の照明にしか役に立たない魔法使い、防衛戦士(タンク)の戦士、そして回復役の神官、絶望的に攻撃力が足りないのだ。


エリオ(そいつ)にやらせれば良いじゃないっすか」

 ユウコは親指でエリオを指差しアゴをクイッと上げて、ふてくされるようにミリアに言う。

 ミリアは両手を腰に当ててユウコにいい加減にしなさいといった表情を見せるが、実際エリオが攻撃要因としてやってくれれば戦闘が楽になるのは本当だった。


「エリオは武器持って戦える?」

「無理だよ、生物を殺すのは怖い……」

 その言葉にユウコはお腹を抱えて笑う。魔物は厳密には生物ではない、殺せば霧になって消える生物と言うには希薄な存在である。

 その魔物を殺せないとエリオは言ったのだ。これが笑わずにいられるかとユウコはここぞとばかりに大笑いをした。

 そんな彼女の頭をミリアは魔法の杖でポコリと叩く。


「痛いっすよ」

「仲間になってくれただけでもありがたいのよ、それ以上は求めるものじゃ無いわ」

「別にエリオ(こいつ)じゃなくても、生産職のやつでも仲間にすれば良いじゃ無いっすか」

「忘れたの? 全員に断られてるでしょ……」

「ぐっ……」

 既にミリアたちはあぶれた生産職の生徒に声をかけていた、しかし、攻撃魔法も使えない魔法使い、ワガママな防衛戦士(タンク)、学園の腫れ物であるマリアと仲間になってくれる学徒兵(スクラウト)は一人もいなかったのだ。


「じゃあエリオは荷物持ちね」

「は? 荷物なんてマジックバッグあるじゃないっすか」

 ダンジョン内ではドロップアイテムが大量に排出される。それを効率よく運ぶために容量1トンのバッグが開発され学園の学徒兵(スクラウト)に支給されている。

 故に荷物持ちと言う職業はいないし必要はない。だからユウコは戦えないエリオにそんな役目を与えるミリアに呆れていた。


「荷物がなければ、その分動きやすくなるじゃない」

「こんな小さいバッグなんの邪魔にもならないっすよ!」

 そう言うとユウコは小型バッグを机の上に投げ捨てる。ポシェットのようなバッグは腰に巻きつけるタイプで、実際に戦闘になったとしても邪魔になるようなものではなかった。

「でも、ダンジョンに入らないと私たちは永遠にレベル1だしチームランクも最低のGランクよ」

 

 ランクとはダンジョンで手に入れたドロップ品を学園に収めることでポイントがもらえ、その納品状況でA~Gのランクが与えられるようになっている。

 ランクが上がることの最大の利点は寮内で出される食事と部屋、サポートがが格段に良くなるのだ。

 だから生徒はみんな血眼になってダンジョンに潜り、ランク上げに勤しむのだ。


「でも、僕は職業(ジョブ)もないし、レベルも0だよ」


 エリオは職業(ジョブ)が無く、レベルも0なのは学園では有名な話で、それは学園みんなが知っていることだった。

 通常は誰しも最初はレベル1なのだが、エリオはレベル0でレベル自体も上がることが無い。


「それも織り込み済みで仲間にしたんだから気にしなくて良いわ」

「……ありがとう」


 エリオは戦うことが嫌だしダンジョンに潜るのも嫌だったが、それでも仲間だと言ってくれるミリアに心がゆらぐのだった。

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