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探知機


「アルフとレーネは上手くやってるのか……? 全く挟み撃ちにできる気がしないぞ……やはりもう少し考えて行動するべきだった……」


 ヴェートの独り言。

 それは、いかに心が不安になっているかというのを示している。

 今のヴェートに、アルフとレーネの状況を確認する術はない。


 もしかしたらやられているかも――そう考えるだけで、足取りはどんどん重くなっていった。


「そもそも、何で敵が一匹も出てこない……? 誘い込まれているのか? ヴァンパイアにそれほどの知能があるわけ――いや、この城を考えると有り得ない話ではない……」


 独り言から自問自答へ。

 全く敵が現れないという事実が、余計にヴェートの精神を乱している。

 今にも、ネガティブな気持ちが爆発してしまいそうだ。


「クソ……俺が一人でやるしかないか。どうしてこんな羽目に……」


 ヴェートは遂に覚悟を決め、小さなナイフ数本を手に忍ばせた。

 敵が現れた際は、この投げナイフが頼りだ。


 ある程度のヴァンパイアであれば、投げナイフに塗られている毒だけでも死に至る。

 多少耐性を持っているヴァンパイアだとしても、眼球か心臓に当てればかなり有利な戦いになるだろう。


 この芸当が出来るのは、チームの中でもヴェートただ一人しかいない。

 ヴェートの類まれなるコントロールが、その神業を可能にしていた。


「――っ? コウモリ……?」


 そんな神経質になっているヴェートの前に現れたのは、バサバサと羽ばたいているコウモリ。

 どうしてこんな所にいるのか――ペットというわけではなさそうだ。


 かと言って、敵という雰囲気でもない。

 敵であるならば、ヴェートを見つけ次第狂ったように噛み付こうとするであろう。


 コウモリと目が合った状態で沈黙が続く中。

 先に動いたのはヴェートの方だった。


「――消えろ!」


 一本の投げナイフが、コウモリの胴体を見事に貫く。


 そして。

 そのナイフの勢いは止まることなく、磔にする形で壁に突き刺さった。

 標本のようになってしまったコウモリは、もう二度と動くことはない。


 殺す必要性は特に感じなかったが、わざわざ見逃す理由も見当たらず、石橋を叩いて渡った結果となる。

 それでも精神上、敵(?)を一匹殺したことによって、ヴェートの自信に繋がった。


「……何だったんだ、このコウモリ――うん?」


 途端に聞こえてくる羽音。

 それも一匹だけのものではない。

 数十匹の群れが、一直線にヴェートの元へ向かって来る音だ。


「……多いな。コイツら全部殺さなきゃいけないのか? ナイフが足りないぞ……」


 十秒もしないうちに。

 磔になったコウモリの元へ、数十匹のコウモリが集まってきた。

 これらを全部倒すとなると、かなり骨の折れる仕事である。


「――あ?」


 ひとまず離れるべきか――そんなことを考えていた時だった。

 目の前のコウモリが、全て一箇所に固まり一つの人型を作る。


 このような光景は、吸血鬼狩りを続けてきた中でも見たことがない。

 間違いなく言えるのは、敵であるということだけだ。


「見つけました。貴方がコウモリを攻撃してくれたおかげです」


「珍しいヴァンパイアだな。子どもか」


「こ、子どもじゃないです!」


 食い気味に、子どもという部分を否定するヴァンパイア。

 化け物に容姿は関係ないということを知っているヴェートは、気を抜かずに投げナイフを一本指に挟む。


 こういったタイプの敵は、己の力を過信して隙だらけの者が多い。

 そのタイミングを狙えば、有利に戦いを始められる。


「――あ、不意打ちは意味が無いのでやめてくださいね。少し話したいことがあるので」


「…………」


 どうやら。

 気を抜いていないのは、ヴァンパイアも同じだったようだ。


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