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イリスの勉強


「お姉さま、この国すごい。森に囲まれてて、太陽の光が暖かい」


「そうね、イリスちゃん。こんなに良い環境なら、何度でも来たいくらいかも」


 エルフの国へと着いた三人は、本物の自然というものを存分に味わっていた。

 流石のディストピアと言えど、ここまでの自然に勝ることはできない。


 目に優しい木々を見つめ、綺麗な空気を吸うことで、体全体の悪いものが消えていくような感覚になる。


「当分ここから動きたくないですね、リヒトさん」


「お姉さまの言う通り。最低でも、あと三十分くらい」


「……そうだな。少しゆっくりしていこう」


 木陰で休憩を取っているリヒトたちは、取り引きに向かうための第一歩を踏み出せずにいた。

 足腰の疲れもあるが、木陰の心地良さが一番の敵だ。


 イリスに関しては、ティセにもたれかかる形で眠ってしまいそうになっている。

 リヒトがこの誘惑に負けてしまった時点で、律する者がもう誰一人いない。


 たとえ今大蜘蛛が攻めて来たとしても、この三人を動かすことは不可能だろう。


「――リヒトさーん!」


 そんなリヒトたちの元へ、ここまで案内してくれたリリカが戻ってきた。

 まだ何も言っていないのにも関わらず、その顔には笑みが溢れている。


 この短時間でどのような事があったのかは分からないが、悪い知らせではなさそうだ。


「どうしたんですか? リリカさん」


「はい! お姫さまにリヒトさんたちのことを伝えたのですが、ぜひお会いしてみたいとおっしゃってくださいました!」


「ほ、本当ですか!?」


 まさかの収穫。

 ここまで理想的に進むとは、流石のリヒトでも予想外だった。


 一人のエルフを助けた(死んでしまったが)だけで、これほどの成果を得られるのは、ラッキーという言葉では終わらせられないだろう。

 リリカと出会うきっかけとなったティセとイリスには、感謝の気持ちしかない。


「お姫さまは、あのツリーハウスにいらっしゃいます。迷うことはないでしょうが、ご一緒させていただきますね!」


 リリカが指をさしたのは、先程からずっと気になっていた巨木である。

 それは、ツリーハウスと呼ぶにはあまりにも立派過ぎるものであり、城と言われても納得してしまうほどだ。


 ティセもイリスも、憧れの眼差しでそれを見ていた。


「お姉さま、ああいうのディストピアにも欲しい……」


「そうね、イリスちゃん。ロゼに頼んでみましょうか」


「それは本当にやめておいてやれ……」


 隣で、何やら不穏な会話が聞こえてくる。

 一応リヒトは止めておいたが、もし止めていなかったら、ロゼにツリーハウス建築の依頼が回っていたであろう。


 これ以上仕事を増やすとなると、ロゼは精神的に死んでしまうかもしれない。

 心を蘇生させることはリヒトでも不可能であるため、今はこのくらいのことしか出来なかった。


「まあ冗談はさておき、お姫さまの所に向かってみましょう。イリスちゃん、あまり失礼なことをしちゃダメよ?」


「分かった、お姉さま」



「……ティセとお姫さま――偉いのはどっち?」


「お姉さま」


「分かってない!?」


 イリスにマナーを教えるため、エルフの姫の元へ向かうのは五分ほど遅くなってしまった。



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