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もう一発


「これが《完全必中》だ」

「……面白い。見たことのないスキルじゃ」

「それはお互い様だろう? 言っておくが、この戦いを長引かせる気はないからな」


 ガレウスが追撃を加えようとした時。


「……その武器はもう使わせぬぞ」


 アリアは咄嗟にガレウスの持っている大剣に手を出す。

 二発攻撃を食らって分かったが、ガレウスが愛用しているだけあってこの大剣の攻撃力は凄まじい。

 流石のアリアと言えど、絶対に攻撃を食らうというなら無視できるわけがなかった。


 《空間掌握》を発動している状態のため、ガレウスが反応する前にアリアは大剣に触る。

 そして。


 見事にその大剣を根本からへし折った。

 一度攻撃するチャンスを見逃してまで取った行動。

 恐らく正解のはずだ。


「そっちを狙ったか。冷静だな」

「腕を失うのはごめんじゃからな」


「どうせ命を失うのに、腕なんかを気にするのか?」

「フン、抜かせ」


 アリアは血だらけの拳で力いっぱい殴りつける。

 《空間掌握》を使用しているなら、こちらの攻撃も絶対に当たるようなものだ。

 ほぼ同じ条件――どちらかと言うとガレウスが有利な状態。


 先手どころか二手目まで与えてしまったが、アリアも遂に反撃を始めた。


「――ヌゥ!」


 アリアに思いっきり殴りつけられたガレウスは、その勢いのまま壁に衝突する。

 ギリギリ直撃は避けたが、それでも馬鹿にならないダメージだ。


 あの小さな体のどこに力を秘めているというのか。

 やはり見た目というのは当てにならない。


「今度はこっちの番だな」


 瓦礫の中から出てきたガレウスは、大剣と同じように自分の拳を振りかぶる。

 硬く拳を握り――体を捻りながらの正拳突きだ。


 もちろんその拳の先には何もない。

 しかし、それで問題はなかった。

 標的は勝手に近付いてきてくれるのだから。


「……ッア!」


 アリアの顔面がガレウスの正面に。

 ガレウスはそれを確認するまでもなくぶん殴る。


 絶対に当たるのは分かっているため、アリアを目で追う必要もない。

 ただ全力を拳に込めるだけだ。

 今度はアリアもガレウスと同様に吹き飛ばされた。


「――もう一発だ!」


 アリアを吹っ飛ばしてからの追撃。

 ガレウスがもう一度拳を握ると、まるでヒモが付いているかのようにアリアの体は戻ってきた。

 サンドバックのシステム。


 これは、アリアが死ぬまで続けることができる。

 ガレウスの《完全必中》は生き物に対してしか使えないため、アリアが戻ってこなくなった時――即ちそれがアリアの死の証明である。


 つまり、その時が来るまで殴り続ければいい。

 普通の相手ならば一発殴っただけでも即死するものだが、アリアは一体何発耐えるのだろうか。

 二発目がアリアにヒットした。


 三発目。四発目。

 そして五発目を食らいにアリアが戻ってくる。


「ん?」


 そこで。

 急にガレウスは手を止めた。


 明らかな違和感。

 今……確かに攻撃が空振りした。

 同じように追撃を加えようとしたところ、何故かそれがヒットしなかったのだ。


 こんなこと経験したことがない。

 アリアが避けたのか。


 いや、違う。

 自分の拳が無くなっていた。


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