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侵入者

「侵入者だ! 武器を持て!」

「絶対にここで食い止めるんだ! ガレウス様の元に向かわせるな!」


 南の魔王軍本拠地。

 この拠点は魔界の奥深くに位置している。


 当然周囲の魔物の強さは目を見張るものがあり、人間は辿り着けさえしない場所だ。

 地下に続くこの拠点は、別名地獄穴と呼ばれているほど。

 比較的暖かい気候の地であるが、この場所だけは冷たさを感じる。


 そんな地下をくり抜いて作っているこの拠点は、現在侵入者によって混乱を招かれていた。

 敵が攻めてくるにしては最悪と言えるタイミング。

 たった今、南の魔王軍主力である幹部たちは全員外に出向いている。


 つまり、ここには役職のない一般兵と言える者たちしか残っていない。

 一番奥にいる魔王ガレウスを守るためにも、雑兵たちは声をあげた。


「お前ら、武器は持ったか!」

「持ったぞ! いつでも行ける!」

「よし……! 敵は数分もしないうちに来るぞ!」


 雑兵たちは武器を構えて時を待つ。

 槍、剣、弓、ハンマーなどなど。

 それぞれが最も自信のある武器を握っている。


 敵の位置は恐らく第一階層。

 自分たちがいるのは第二階層であるため、接敵にそこまで時間はかからない。

 気持ちを整える時間は圧倒的に足りないが、今回の場合はむしろそれがプラスになっていた。


 あまりにも時間がなく、余計な緊張をする暇さえないのだから。

 不幸中の幸いだ。


「お、おい! 調査兵が戻って来たぞ!」

「敵は何人だ!? 百人か! 千人か!」

「そもそも第一階層の奴らは勝ったのか!?」


「第一階層は壊滅しました! 敵はたった一人です!」


 調査兵の言葉に、雑兵たちは動きが止まる。

 自分たちの聞き間違えでなければ、敵はたった一人で第一階層の兵を壊滅させたと言った。

 第一階層だけでもそれなりの兵がいたはず。


 強さも数も自分たちと遜色ない。

 そんな彼らが、この数分間で壊滅させられたというのか。

 にわかには信じられない情報だ。

 これなら調査兵が幻覚を見ているという方がまだ納得できる。


「ど、どういうことだ!? たった一人だと!?」

「はい! もうここに向かって来ています!」


「し、信じられんぞ! 絶対に仲間がいるはずだ!」

「だからいませんでした! 完全に敵は一人です!」


 調査兵は何を言われようとも譲らない。

 ここまで言い切られたら、雑兵たちも変に口を出せなかった。

 敵が一人というのは、普通ならば嬉しい話である。


 だが、今回に限っては恐ろしさしか感じられない。

 もしかしたら、敵が自分たちの王であるガレウスと同等の力を持っている可能性まで。

 考えれば考えるほどマズい。


「じゃ、じゃあどうするんだ! 俺たちは勝てるのか!?」

「分かりません! でも戦うしかないです!」

「クソッ! 敵はいつ来るんだ!」


「――もう来てます!」


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