地下ダンジョン?
「おい、アレン。この方向で合ってるんだろうな?」
「当たり前だろ。ギルドからの情報だ。信憑性は高い」
「ちょっと遠くない? この馬が遅いだけ?」
ダンジョン調査に向かうアレンたちは、馬車に揺られて目的地へと向かっていた。
結局ヒーラーは妥協した者を選ぶことになり、今は馬車を運転させている。
少しだけパーティーに不安があったが、たかがダンジョンの調査と割り切るしかない。
「何か他に情報は無いのか? ただ大きな魔力反応があったってだけじゃあ、何の対策もできねぇぞ」
魔術師であるジョゼは、眠そうなアレンに話しかける。
これから戦いだというのに、何も考えていなさそうなアレンとシズクに嫌気がさしていた。
「落ち着けよ、ジョゼ。今更対策するとしても、何ができるって言うんだよ」
「そうだよー。変に頭を使うってのも嫌だー」
「お前ら……どうなっても知らんぞ?」
ジョゼは呆れたようにため息をつく。
確かにアレンとシズクは強い。その戦闘能力は、同じSランク冒険者のジョゼでも動かせないほどだった。
しかし、このまま注意をせずに見過ごしてもよいのだろうか。
今回は回復職を連れて行っているということもあり、いつもより戦いづらくなっているはずだ。
これまでに、油断をしたことで命を落とした冒険者を何人も見てきている。
そのことを考えると、この二人の態度に憤りさえ感じた。
「ねぇ、調査が終わったらどうするー? 50万ゴールドだったよね? ちゃんと配分考えとかないと」
「普通に四人で分ければいいだろ。どうなんだ? アレン」
「いや、俺たちとヒーラーが同じ配分ってのはおかしいんじゃないか? 明らかに労働量が見合ってないのに、納得できるか? シズク?」
「納得できなーい」
そんな話をしながら。
四人は、問題のダンジョンに近付いていた。
**************
「……これって、地下に繋がってるんじゃない? 面倒くさそう……」
「アレン、逃走用のアイテムは持ってきてるか? 何だか危険な臭いがする。リヒトがいないから、あの時のように死ぬことはできんぞ」
「あぁ、持ってきている。ピンチになったら使うから、把握しておいてくれ。じゃあ行くぞ――ヒーラー、着いてこいよ」
「は、はい……」
ダンジョンに辿り着いた三人は、これまでとは違う空気をハッキリと感じていた。
馬車ではヘラヘラしていたシズクの顔も、何かを感じ取ったかのように真面目になっている。
この場でいつもと変わらないのは、たまたま連れて来たヒーラーだけだ。
「……この空気は悪魔――いや、死霊か。アレン! このダンジョンに住み着いているのは、恐らくリッチのようなアンデッドだ!」
「アンデッドだと? クソ、ギリギリだな。あっちにはスタミナがある分、長期戦は俺たちが不利だ。早期決着の作戦でいくぞ」
「りょーかい。ササッと終わらせちゃお」
一通りの作戦を立てて。
アレンたちは、ダンジョンへと足を踏み入れた。
その瞬間に、ダンジョンの中の空気が変わったことは言うまでもない。
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