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ドロシーのトラウマ


「リヒト、人間たちがこのディストピアに気付いたみたいだよ」


 それは、まるでおまけのような口調で話された。


 今は、ドロシーとリヒトで食後の休みを取っている時間帯である。

 久しぶりの食事によって仕事のことを忘れ、気が抜けていたリヒトには重すぎる内容だった。


「ど、どうやってそんなことを知ったんだ……?」


「ボクが使役している死霊を、ディストピアの周辺に一匹だけ放っておいたんだよ。そうしたら、人間の姿を見たっていうからさ」


「そんな使い方もできるんだな……」


 リヒトの心にあったのは、これからどうするかということではなく、ドロシーの索敵能力に対しての感心だ。

 もし戦いになった時に、情報はとても大切な要因となってくる。


 そんな情報という役割で、ここまで頼りになる存在はいないだろう。


「面倒なことになりそうだったから、攻撃はしないでおいたけど、結局ここに攻めてくるんじゃないかな。絶対ディストピアの存在は気付いたはずだし」


「その時はその時だ。とにかくありがとう――そうだ。フェイリスやロゼたちも、ドロシーの死霊に感謝してるらしいぞ」


「そうか。ボクの死霊が役立っているってのは嬉しいね。昔なんて、ろくな使い方をしていなかったからさ」


 実際にディストピアは、ドロシーの死霊によってかなり支えられていた。

 あのアリアも、優秀な死霊たちに満足そうだ。


 一番恩恵を受けているロゼに至っては、余った時間で何をしたら良いか困惑しているほどである。


「それで、もし戦いになった時、ボクはどうしたら良いのかな? 一緒に戦った方が良い?」


「いや、ロゼたちがいるから、多分何もしなくて大丈夫だと思うよ」



「――あ、おったおった! 探したぞー、リヒトにドロシーよ」


 リヒトとドロシーが話していると、宙に浮いたアリアがフワフワと近付いてきた。

 どれだけの時間探していたのかは分からないが、この喜びようからして、かなり苦労したということは想像に難くない。


「は、初めまして、魔王さん」


「うむ! 話は聞いておる。これからもよろしく頼むぞ」


 アリアとドロシーのファーストコンタクト。

 この時点で、上司と部下の関係になっているようだ。

 ドロシーも、魔王のカリスマ性に魅せられた一人なのかもしれない。


「アリア。もしかしたら、そのうち人間が攻めてくるかもしれないんだ」


「なんじゃと? まぁ、丁度いい。そろそろ暴れたいと思っておった頃じゃ」


 アリアは指をポキポキと鳴らす。

 特に焦っている様子も、物怖じしている様子もない。

 むしろ、復活してから暇だった分、待ち遠しそうにしていた。


「――といっても、ロゼやイリスが全部倒してしまうから、儂まで回ってこんじゃろうな」


「……やっぱりロゼやイリスって強いのか? 話してみただけだと、普通の女の子って感じだったけど」


「イリスはティセと一緒でないとそこまでじゃが、ロゼは鬼のような強さじゃぞ。人間なら食料として全員食い潰すじゃろう」


 ドロシーがブルっと震える。

 ヴァンパイアに捕食される人間を想像してしまったのだろう。

 この様子だと、過去にトラウマとして植え付けられているのかもしれない。


「ねぇ、リヒト。ロゼさんに許可を取ったら、ボクが人間の相手をしても良くなるのかな……?」


「ん? 大丈夫だと思うけど。どうしてだ?」


「いや、ヴァンパイアに殺される苦しさはボクも知ってるからさ。流石にそれは可哀想だなぁ……って」


 何か、聞いてはいけないことを聞いてしまったような気がした。

 この理由を聞いて、申し出を断れるほどリヒトは鬼ではない。


 この後、ドロシーと一緒にロゼの元へ向かうことになる。



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