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疲労


「……だるい。何か足を用意すればいいのに、どうしてわざわざ歩くの……?」


「……到着した時に疲れてた方が気持ちいいから? じゃないかしら、イリスちゃん」


「むー……疲れたいなら、お姉さまの精霊でいつでもできるのに」


「いやいやイリスちゃん……精霊まで使っちゃったら、温泉なんかで回復できないから」


 ブツブツと文句を言いながら山道を登るイリス。

 ドロシーの情報だと、この山に温泉が存在しているらしい。


 イリスとティセのペットであるフェンリルを用いれば、この程度の山道は軽く超えることができる。

 しかし、それはアリアによって禁止されているため、イリスを含めた全員はただ歩くしか選択肢がなかった。


「ヘトヘトなの……リヒトさん、おんぶ」


「勘弁してくれフェイリス。そろそろ俺の足もキツい……」


「リヒトはヘタレだなー。完全に体が鈍ってるじゃん。トレーニングをサボるからだよ」


 文句は言っていないものの、疲れを感じているのはイリスだけではない。

 元々の体力がないフェイリスや、持久力のないリヒト、既にもうダウンしてロゼにおぶられているラエルなど。


 元気そうなのはアリアだけだ。


「ドロシー……疲れてないのか?」


「疲れてるよ。でも、死霊を使って疲労を取り除いてるからね。実質スタミナは無限ってこと」


「……そんな便利な技があるなら独り占めするなよ」


「……でも、ボク以外に使うと魂まで抜き取っちゃうかもしれないよ? それでも使う?」


「……ならやめとく」


 少し名残惜しそうに。

 リヒトはドロシーに頼ることを諦める。

 疲労を抜き取ってくれるのならば、もはや温泉など必要ないのではないかとも考えたが、そういう簡単なことではないのだろう。


 アリアいわく、こういうものは雰囲気が一番重要らしい。

 だからこそ、このような遠回りを全員でしている。


「まったく。人間は不便な体じゃな。これくらいでへばっておったら生きていけぬぞ?」


「アリアがおかしいんだ。数時間も険しい道を歩いてたら疲れるよ」


「なあに帰りは足を用意してやるから安心せい」


「帰りも歩きだったら大問題だよ」


 やれやれ――と、アリアは呆れたようにリヒトを見ていた。

 これで悔しさを感じないほどプライドを捨てたわけではないが、スタミナ切れを起こしている以上言い返すことはできない。


 ドロシーに言われた通り、トレーニングをサボっているのも真実である。

 ロゼやアリアの強さに圧倒され、鍛えることに意味を見い出せなくなったという言い訳もここまでだ。


「お、喜べリヒト。悩んでおる暇はないぞ」


「リヒト、見て見て!」


 アリアとドロシーのその言葉に、リヒトだけでなくほぼ全員がピクリと反応することになった。



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