先導
一方その頃。
「お。この鳴き声は、リヒトたちの方からじゃな」
「どうします? 応援に行きますか?」
「心配するでない、ドロシー。もう少しリヒトたちを信じてやれ。あやつらはあやつらで何とかするはずじゃ」
リヒトたちと離れ、別の穴へ入ったばかりのアリアたちの耳に届いたのは、怒りの感情を含んだドラゴンの鳴き声だった。
間違いなく戦いが始まった合図だ。
ドロシーもそのことは察しているらしく、気にするようにチラチラと周りを見ている。
「儂らは儂らでやらなくてはならんのじゃぞ。他人の心配をしている余裕なぞあるのか?」
「だって魔王様がいるから」
「……クク。分かっておるではないか」
ドロシーは、アリアの隣に立つということの意味をしっかりと理解しているらしい。
この世界でも数少ない――絶対に安全な場所だ。
「まあ気にするな。あっちにはリヒトがおるから、とりあえずは安全じゃ。それより、お主はこの暗闇でも目が見えるのか?」
「一応……人間界では、暗い場所での仕事が多かったから。ハンデになることはないと思います」
フフン――と、アリアは満足そうに先へ進む。
部下に対しての態度が甘いため、何か役に立つようなことがあれば、すぐに上機嫌になってしまう性格。
今回もそれは同じだった。
「なら行くぞ。付いてくるのじゃ」
「分かりました、魔王様」
アリアにそう言われると、ドロシーは何も言わずに命令に従う。
この会話だけでも、ドロシーに対しての好感度は爆上がりだ。
普段あまり言うことを聞かないイリスや、空回りばかりのロゼと共にいるため、ドロシーのように優秀な部下といると自然に笑みが溢れてしまう。
「あ、魔王様。死霊たちがドラゴンを見つけてくれたみたいなので、そこに行きましょう。ドラゴンの方は、まだ私たちの存在に気付いていないみたい。多分眠っているんじゃないかな」
「……本当にお主を選んで正解じゃったかもしれん」
アリアが先導するつもりであったものの、早速ドロシーと役割を交代することになった。
場所が分かっているというのなら、もうとやかく言う必要はない。
黙ってドロシーの後ろを付いて行く。
「あの……一応、ドラゴンと対峙したときはよろしくお願いしますね」
「ああ、それは任せておくのじゃ。元々儂の都合じゃからな。もしも――本当にもしもじゃが、リヒトたちが苦戦しておるなら、応援にも行かねばならんしの」
「フフ、じゃあ早めに済まさないとですね」
アリアの言葉を聞くと、ドロシーの歩くスピードが僅かにアップする。
なんだかんだ言いながら、アリアもリヒトたちのことが気になっていたようだ。
目的が一致した二人は、暗闇をものともせず、最適解のルートでドラゴンの元へ向かうことになった。
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