相乗り
「ロゼ、あれなんてどうじゃ? 名前は確か……レフ鳥だったかの」
「分かりました!」
アリアが指さした方向に、ロゼは風のようなスピードで飛び立つ。
その先には、岩の上で羽を休めているレフ鳥の姿があった。
珍しい魔物というわけではないが、魔界ではそれなりの強さを誇っている。
鳥とは思えないほどの大きな体。
襲われるということが少ない存在であるため、ロゼの襲撃への対応が遅れてしまう。
何が起こったのか分かっていない様子で、その驚きを表すかのように暴れ始めた。
「……アリア。ロゼは今何をやってるんだ?」
「別に特別なことではない。ちょいと足を用意してもらっておるのじゃ。お主らは翼を持っておらんじゃろ?」
「そうか、ありがたい。コウモリに引っ張られるのは、もう懲り懲りだからな」
アリアとリヒトが簡単なやり取りをしている間に。
ロゼによって、レフ鳥の眷属化が終了する。
家畜の解体を見ているかのような流れ作業。
レフ鳥は為す術もなかったようだ。
これで、リヒトたちを運ぶ足が確保された。
リヒト、ドロシー、フェイリスの三人を乗せるとしても、このサイズのレフ鳥であれば十分耐えられるだろう。
「うおっ……やっぱりデカいな」
「こんなに大きいサイズは初めてだよ。ボクたちが戦ってたら苦戦したかもね」
リヒトたちを乗せるため、目の前に飛んできたレフ鳥。
その迫力は、後退りしてしまうほどに凄まじい。
眷属化されているとしても、捕食者の威圧は全く失われていなかった。
「リヒトさん、先に乗って」
「え? あ、あぁ」
フェイリスに促されるままリヒトが先に乗ると、ピッタリとくっつく形で後ろから手を回される。
ここまで用心せずとも振り落とされることはないであろうが、断ろうとした時のフェイリスの表情を考えると、ノーという言葉がどうしても出てこなかった。
「ドロシーさんも掴まっていい」
「アハハ、じゃあそうしようかな」
フェイリスを中心にして、何故か一列に並ぶ三人。
これで準備は整った。
やはり三人分の重量と言えど、レフ鳥には誤差の範囲らしい。
普段と全く遜色のない動きで、ゆっくり羽ばたき始める。
「では行くぞ。ドロシー、場所は分かっておるな?」
「もちろん。ちょっと遠いけど、この足なら大丈夫だと思います」
「よし――リヒトもドラゴンにビビっておってはダメじゃぞ。もう少し堂々とせい」
アリアは、集中し切れていないリヒトを察知して、ビシッと一度喝を入れる。
集中できない要因として、後ろにいるフェイリスが二割ほど関係しているのだが、そこまでは読み取れていないようだ。
「リヒトさん」
「な、なんだ? フェイリス……?」
「えへへ」
その笑顔に。
リヒトはただ困惑することしかできなかった。
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