永遠の死霊使い
「《死者蘇生》」
「――復活なのっ」
リヒトは、死んでいるフェイリスに二回目の蘇生をした。
そして、またもや何事も無かったかのように生き返る。
残忍な戦い方をした後とは思えないほど清々しい様子だ。
「……? どうしたなの? リヒトさん」
「いや、別に……」
一歩だけリヒトは、フェイリスとの距離を離す。
相性が良いというのは分かったが、出来るだけ見たくない戦い方だった。
「もしかしたら援軍が来るかもしれないなの。早めに作業は済ませた方がいいと思うなの」
「そ、そうだな」
フェイリスに促されるままに。
リヒトは伝説のネクロマンサーを探す。
一番手っ取り早いのは、そのネクロマンサーの墓石を探すことだ。
英雄が集まっているというだけあって、墓石に書かれている名前は、どれも聞いたことがある者たちばかりである。
かつての勇者だけでなく、大賢者や大錬金術師など、偉大な者たちばかりであった。
「――あったぞ。ここだ」
「……永遠の死霊使い、ここに眠る――なの? 名前は……ドロシー?」
「あぁ。《死者蘇生》」
永遠の死霊使い。
これからドロシーを越すようなネクロマンサーは現れないと断定されなければ、絶対に貰えないような称号だ。
リヒトが知っているだけでも、千を超える死霊を同時に操ったという伝説がある。
そんな英雄の墓土から、勢いよく一本の細い手が飛び出してきた。
「――ゴホッ! ちょっと、助けてほしいんだけど……もしもし?」
ドロシーの第一声は、助けを求めるようなセリフであった。
墓土は意外と固いようで、まだ腕一本しか見えていない。
ここだけ見るとただのゾンビである。
「リヒトさん、助けるなの?」
「当たり前だ。フェイリス、引っ張るのを手伝ってくれ」
リヒトとフェイリスは、飛び出た一本の腕を必死で引き抜こうとした。
女性らしい細い腕であるため、下手に力を入れると折れてしまいそうだ。
気を使いながら二人で引っ張る。
「――プハァ! ……あの、蘇生させるんなら、もうちょっと掘り起こしてからにしてほしかったなぁ」
「ご、ごめん……」
「謝ってくれたら良いよ。それで、ボクを蘇生するなんて、どうかしたの?」
何とか力を合わせて、土まみれのドロシーが姿を現す。
いきなり体が汚れてしまったことに、少々不満そうであったが、特にそれ以上言及するような様子はない。
それよりも、自分が蘇生された理由の方が気になっているようだ。
「単刀直入に言うと、俺たちの仲間になってほしいんだ」
「良いよ――あ、その前に一つだけ質問」
簡単すぎる了承。
そして、追加の質問が来る。
「君って、ネクロマンサーじゃないよね? どうやってボクを蘇生させたの? 主従関係もなさそうだ――実際に、ボクは君の奴隷になってないわけだし」
「俺はネクロマンサーじゃないよ。《死者蘇生》のスキルは、蘇生させることは出来るけど、服従させることは出来ないんだ。その代わり自分も蘇生可能……らしい」
最後の一言は、少々濁すような形になってしまう。
まだ一度しか発動しておらず、明確な自信もない。フェイリスのように、実験しようとも思わえなかった。
それでも、ドロシーの反応はかなり良い。
面白そうにリヒトの話を聞いている。
「やっぱりボクと似ている能力だね。でも、自分を蘇生可能なんて聞いたことがないよ」
「リヒトさんはすごいなの」
「どうも……」
それで――と、ドロシーは話を戻す。
「君の仲間になれば良いんだったよね? 蘇生させてくれた分は頑張らせてもらうよ」
「感謝するよ。それじゃあ――援軍が来る前に帰ろう」
「了解なのー」
こうして。
伝説のネクロマンサーが、リヒトたちの仲間になった。
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