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伝説の老兵は異世界で少女と暮らす  作者: あるみす
一章  ミランダ
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突然脅かされる尊き命

勢いが良かったので予想以上に早く仕上がりました。

 私とソフィアはそれからミランダの街を夕方になるまでいろいろ見て回っていた。ソフィアも今まで極力人の目に付かないように生活してきた様なので、今回はかなり肩の力を抜いてみて回ることが出来たみたいだ。


「今日すっごく楽しかった!」

「そうか、それは良かった」


 歩くのが疲れたソフィアを片腕で抱え上げて私はカナリヤへの帰路についていた。


「ソフィア、明日から私は冒険者としてしばらくはお金を稼ごうと思うのだが。…酒場でお留守番できるか?」

「テトお金なくなっちゃったの?」

「まだ少し残ってはいるが、今後何があるか分からないだろ?人間ある程度たくわえがあった方が安心なんだぞ」

「そうなんだ…お母さんたちはお金を貯めてなかったからソフィよくわからない。でもテトが言うなら信じる!ソフィもお手伝い頑張る!」

「いい子だ。週末になったらまたどこかに出かけよう」

「わーい!どこ行こうかな~、としょかんもいいし~えへへ~、楽しみ~♪」


 想像を膨らませるソフィアを眺めていた時だった。


「つっ…!!」


 不意に背後から殺気を感じて私はソフィアの頭を庇いながら身を反らすと、さっきまで頭のあった位置に槍の切っ先が通過したのだ。


「何の用だ!」


 私が声を荒げながら槍の射程外に出て奇襲してきた相手を振り返る。そしてその集団を見た私は思わず目を疑った。


「おいジジイ!!俺たちがその呪われた悪魔を代わりに殺して浄化してやるからこっちに渡せ!」

「おい!俺はあのジジイに用があんだよ!」


「お前たちは…こないだの輩だな?ずいぶんと人数が増えている様だが」


 そいつらは一か月前にソフィアとシーナを襲ったアウギュステの連中だった。今回は十人を超えているらしく、前回骨を叩き折った人の何人かはいないがこいつらの目的は私への復讐か…ジールが言っていた残党はこいつらの事か。


 そして何より腹が立つのは、こいつらは『今の姿のソフィア』を呪われた子と呼んだのだ。しかも大声で叫んだおかげで街の人間はソフィアを認識し始めてしまったのだ。

 やっと順調な道筋に乗ってきた矢先にこれとは神はこの子に味方しているんじゃないのか?


「て、テト…みんなソフィアの事あの目で見てる…」

「心配するな、私に任せていなさい。落ちないようにしっかりと捕まっていてくれるか?」

「うん…」


 ソフィアが腕を私の首に回して捕まったのを確認して、私は腰に装備していた二丁のリボルバーのうち右の方に手を掛け、いつでも抜ける様に警戒する。

 次のアクションは私でもアウギュステの連中でもなく奥から現れた一人の高身長の眼鏡をかけた男だった。


「いやぁ、お話は聞いておりましたがまさかこんなご老人だったとは。我アウギュステの連中も腑抜けてしまったものです」

「何が言いたい」


 男は乾いた笑い声をあげると先ほどとは人が変わったように話し出した。


「いやあ、実に腹立たしい!貴様みたいな終わりかけの人間が宝を持ち去るのが!」

「ひぃっ!」

「大丈夫だ……宝だと?どういうつもりか説明してもらおうか」

「なあに簡単な事さぁ、その娘には何故か大量の魔力が備わっているようだからな!それさえあれば私は簡単にこの国を手中に収めることが出来るのさあ!!」


 何とも卑劣な野郎だがソフィアがアリアだということはばれていないのか。それにしてもどこの世界でも三下の考えることは征服やら穴だらけな望みなのだろうか。


「手放さないのなら貴様には退場してもらいましょう!我が身に宿せし力で体現せよ!『ボルトカノン』!」


 魔法とは詠唱により自身の魔力に志向性を持たせて顕現させるもの。術者の魔力量や知識量、精神が大きく関わる分野でもある。

 男の掌から放たれた一筋の雷光は迷わず私に向かって飛んでくる。


 私はとっさにリボルバーから手を放してナイフを手に取ると黄色い雷光を迎え撃った。


「そんなナイフで何ができるって言うんですか、笑わせないでいただきたい!」


 雷光とナイフが接触した瞬間にナイフに刻んだ魔法陣が光り輝いて空気中のゾルフが凝縮して吸い込まれていく。この魔道具は魔法に触れたときだけ起動して無尽蔵のゾルフを使って対象の魔法と同パワーの防御魔法を展開するようになっている。つまりは当たれば魔法を打ち消せる魔道具というわけだ。


「ぐっ…ぐぬっ…」


 しかし、いくら魔法を打ち消しているとは言え運動エネルギーまで消せるわけではないため、想像以上の負荷が右腕にかかって青筋が浮かび上がる。


「ぬぅ……ぬぁあああ!!」


 もし弾き飛ばされでもしたらソフィアにけがを負わせてしまう可能性があったので力を振り絞ってナイフを振りぬいた。


「はあはあ…ソフィア…大丈夫か?」

「うん…でもテト、腕が…」

「ああ、どうって事無いさ。ソフィアに危害が及んでなくてよかった」


 私の右腕は力の掛け過ぎで毛細血管が破裂して血が滴っていた。魔法一発受けただけでこの負傷は想定してなかったな…まだまだ改良が必要なようだ。


「はっ、私の魔法をどうやって防いだかはわからんがその怪我ではもう戦えまい!お前ら!奴をひっとらえろ!」

「「「おおおおお!!!!」」」


 十数人の取り巻きが一斉に襲い掛かってくるのを私は力の入れにくい右腕でナイフを振るい、後退しつつ受け流していく。

 一瞬銃を使うことも考えたが何故か逃げずに野次馬として眺めている人たちに流れ弾の被害が及ぶことを考えるとやはり使えない。

 あの眼鏡の男も何か集中しているようだし何か大きな魔法でも使うつもりなのかもしれない。そうなったら次こそ防ぎきれない、何か、何か突破口はないかっ?考えろ、ソフィアが傷つかない方法を!


 その時だった。


「ほら、なに見てんだ!憲兵呼んできたからお前ら全員取りしまわれてもしらねえぞ!」


 どこかで聞いたことのある声が聞こえ、民衆たちは自分の事可愛さに散り散りになっていく。誰かと思い横目で流し見ると…


 この町に来て初めて入った宿屋の店主が笑顔で片腕を上げて自分も邪魔にならないように去っていくのが見えた。……ありがとう。この借りは絶対に返させてもらう!


「ソフィア、耳を押さえなさい!」

「っ!?」


 ソフィアが慌てて耳を押さえるのと同時に私はナイフを仕舞う。そしてリボルバーを抜いて、耳をつんざくようなけたたましい音を鳴り響かせながら六発の弾倉を立て続けに発砲する。


「は?」


 眼鏡の取り巻きたちは自分の仲間が六人も一気に倒れたことに驚かざるを得ない様だ。

 私のこっちのリボルバーは実弾でなく魔法の、それも電気の弾を射出する構造になっている。先ほどの眼鏡の放った魔法ほどの威力は無いが日本でいうスタンガン位の威力は出るので殺さずに戦闘不能に追い込む事が出来る。難点があるとすれば弾に使う魔弾は自作の魔道具なので量産が効かないという事だろうか。


 怯んだすきに少しでも距離を取ろうとするがその望みはすぐに絶たれてしまう。


「いい時間稼ぎでしたよ!!先ほどはしくじりましたが次はそうはいきませんよ!!我が身に宿せし力で雷を体現せよ!『ボルトカノン・ツヴァイ』!!」

 仲間を巻き込むことも構わずに私に向けて先ほどの魔法の威力など比べ物にならないほどの威力の雷撃が襲い掛かってきた。

 私はとっさにソフィアを内側に抱え込んで直撃は避けられるようにするが、私の肉壁が役に立つのかすらわからない…!






 さすがに直撃は免れないと思っていた雷撃はいつまでたっても私には届かなかった。

 うっすらと目を開けて確認すると幾何学模様を輝かせる何重も重ねられた魔力障壁が私とソフィアを守る様に展開されていたのだ。


「これは…」

「すまんのぉ、遅れてしまって。間に合ってよかったわい」


 息を切らしながらやってきたのは、私に魔法を一から教えてくれたヨハネスだった。


「お、お前は…」


 眼鏡の男は眼を丸くしてヨハネスを見ていた。二人は知り合いなのか?

 しかし、その疑問はすぐにヨハネスによって解消されることになった。


「我人生に唯一の汚点は貴様の様な奴に魔法を説いたことじゃ。貴様は今ここでわしの手で引導を渡してやろう!」

「ヨハ…ネスッ…」


 ヨハネスは普段のおっとりとした声からは想像のつかないほどドスの効いた声で眼鏡の男を睨みつけるのだった。


どうも、6話から約1日振りです。

正直こんなに早く書けるとは思ってなかったです。


今回、ソフィアとテトにとって最初の試練となりましたがテトは正直手も足も出ませんでしたね…

しかし、これはテトが弱いという訳ではなく、魔法戦にただ不慣れだったということが関係しています。


今後どの様に対策していくのか…まだ僕にも計れない事が多いです(笑)


毎回言ってて少し虚しいのですが、どうか『評価、ブックマーク、感想』の方をよろしくお願い致します…!モチベーションに直結しますのでどうかよろしくお願いします。


次話は恐らく週明けになると思われるので少しお待ちくださいね!

では、これにて7話を締めさせてもらいます!ありがとうございました!

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