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伝説の老兵は異世界で少女と暮らす  作者: あるみす
一章  ミランダ
6/33

喜びが隠しきれないソフィアの休日

 ソフィアとシーナが襲われた日からちょうど一か月。私はついに魔道具と魔法の習得に成功した。この期間で習得できたことにはヨハネスも驚いていたが正直若いころの脳が無ければ習得する事すら危うかっただろう。


「ん…ぅん?てと?おはよー」

「おはようソフィア。まだ寝ててもいいぞ?」


  今は日本で言う朝の六時辺りだろう。

  丁度朝日が顔を覗かせた位だ。

 

「ううん、ソフィ起きるー。だって今日からテトと一緒にいられるんでしょ?」


  ソフィアは眠たげな目を擦りながら嬉しそうな顔を向けてくるのがとても愛らしい。

  私もベッドに腰掛けるとソフィアの頭を優しく撫でる。


「長い事待たせちゃったな、ありがとうソフィア。どこか行きたい所はあるか?」

「ソフィね、とりあえずお散歩行きたいの」

「散歩?」

「うん、テトといろんな所行ってみたい!」

「そうだな…じゃあ今日は街を見て回ろうか」

「やった〜!」


 

 


  自分の身支度をさっさと終わらせてソフィアの面倒を見ていると下の階に人の気配が多くなってきてリサやらが店の準備を始めたのが分かったので、私はいくつかの魔道具を持つとソフィアを連れて下へ降りていく。


「おはよう」

「おはよ〜リサ!」

「テトさん、ソフィアちゃん!おはようございます〜」


  挨拶するとリサはいつもと変わらない笑顔を向けてくれる。

  しっかりと面と向かって話すのは結構久しぶりかもしれない。


「テトさん、もう魔法のお勉強は大丈夫なんですか?」

「ああ、とりあえず目標は達成できた」

「おめでとうございますー!ソフィアちゃんも良かったね」

「うん!」

「皆には1ヶ月迷惑かけたな。ありがとう、本当に助かった」

「どうってことないですよ!それにソフィアちゃんもお手伝いしてくれたり、本当に賢かったんですから」


  リサは屈んでソフィアに目線を合わせると頭を優しく撫でる。撫でられてるソフィアもとても嬉しそうだ。


「そうだ、リサとシーナにも渡したい物があるんだ。シーナを呼んできてくれないか?」

「渡したい物?」


  リサが首を傾げている間にソフィアがとてとてと走って厨房の方へとシーナを呼びに行ってくれた。

 

「ソフィ、どうしたの?」


  ソフィアに手を引かれるようにして現れたシーナは以前の傷もすっかり治って元の綺麗な姿に戻っていた。


「あ、テトさん!もういいんですか?」


  シーナは私を視認するや否やソフィアに引けを取らない輝かしい笑顔で寄ってくる。


「もう十分だよ。それより、毎日ソフィと遊んでやってくれてありがとう」

「良いんですよ〜、ソフィは妹みたいな感じですし私も楽しいので!」


  ソフィアの後ろから腕を回して軽く引っ付いてる様子は髪色は違えど本当に姉妹の様だ。


「早速だが、3人には渡しておきたい物があるんだ」


  私は布袋の中から大きさの違う3つの腕輪を取り出してそれぞれソフィア達に渡していく。

  この腕輪には青色の装飾が施してある一見普通の装飾品だが、当然普通の腕輪では無い。


「綺麗な腕輪ですね〜、ほんとに貰って良いんですか?」


  リサは早速腕輪を左腕に付けて嬉しそうに腕輪を眺めている。シーナやソフィアもそれに倣って自分の腕に付けてみる。


「でも、ふつうの腕輪…ですよね?」


  シーナが怪訝そうに聞いてきたので私は腕輪について説明する。


「これは私が作った魔道具だ。前のように襲われた時に守ってくれる様に施しておいた。」

「守ってくれるって具体的にどうするんですか?」

「微弱の電気を発生させて相手を気絶させる事ができる。起動するには付いている青い宝石を回せばいい。だが…うむ。君たちなら大丈夫だと思うが緊急時以外は使わないようにな」


  リサとシーナは顔を見合わせると頷きあってこちらを向いた。


「大丈夫ですよ。私もシーナも心に止めておきますね」

「よろしく頼む。ソフィアも大丈夫だな?」

「うん!大変な時じゃないと使ったらダメなんだよね?」

「そうだ、賢いなソフィアは」

「えへへ〜、もっと撫でて〜!」


  子猫のように甘えてくるソフィアの頭を撫でつつ、私は腰を下ろしてソフィアに目線を合わせると袋からもう一つのペンダントの魔道具を取り出してソフィアの首に掛けてあげる。

  ソフィアの目と同じ翡翠色の宝石が綺麗に輝くペンダントは1ヶ月で私が開発したソフィアの体を守る為の最適解だ。


「テト、この綺麗なペンダントは?」


  ソフィアはペンダントを手に取ってマジマジと眺める。


「ソフィア、体は楽になってないか?」

「え?うーん、ん!ちょっと体が軽くなったよ!」

「そうかそうか!なら成功だ。ソフィア、そのペンダントはソフィアの中に溜まりすぎた魔力を外に追い出す魔道具だ。これからはずっとそれを付けて過ごしなさい」

「うん!分かった!ありがと、テト!」

「どうってことないさ」

 

  私が作ったこのペンダントはソフィアの『アリア』としての能力である『ゾルフ』の溜まりすぎを解消する為の魔道具だ。以前ヨハネスに聞いたとおりにレイズによってソフィアに提供されているゾルフを外に排出する機能を持たせている。


  「あの、テトさん?ソフィアちゃんとかシーナは分かるんですけど私まで貰っちゃっていいんですか?」


  私が立ち上がるとリサが少々申し訳なさそうに見てきたのでソフィアと同じように頭を優しく撫でてあげる。


「日頃のお礼も兼ねているから遠慮はしなくていい。それに私はお前達の事が凄く大切なんだ。もう二度と傷ついて欲しくないからな」

「テトさん……ありがとうございますま!」


  頭を撫でるとリサは恥ずかしそうに頬を染めるが、とても嬉しそうにしているのでまだ甘えていたい年頃なのだろうか。




  朝食をとった私とソフィアは早速カナリヤの酒場から街へと繰り出した。


「よぉ、テトの爺さん。もう篭もってなくて良いのか?」

「おぉジールか、やっと魔法を習得したのでね、久しぶりにソフィアを外に連れ出して上げようと思ってね」

「なるほどなぁ、良かったな嬢ちゃん」


  このジールという屈強な強面の男はカナリヤの酒場に通う冒険者だ。結構顔の利く冒険者らしく、店に来ている時に何回か顔を合わせるうちに結構話すようになったのだ。

  そして、そのジールの顔が珍しく曇っているように見えた。


「どうした?何か心配なのか?」

「そんなに顔に出てたか?……あんたには隠し事できそうにねぇな」

「それで、何かあったのか?私に手伝える事なら請け負うが」


  ジールは少し難しい顔をして考えてから話し出した。


「実はこないだ爺さん達が遭遇したアウギュステの連中の掃討が終わってねぇんだよ。もしかしたら嬢ちゃん…いや爺さんを狙って現れるかも知れんから気をつけてくれ」

「なるほど。後始末の方色々ありがとう、気をつけるよ」

「心配すんな、これが俺たち冒険者の仕事だからな」

「私もしばらくしたら冒険者に鞍替えすると思うのでその時はよろしく頼むよ」

「ああ、任せとけ!」


  ジールはそう言って胸を叩くと仕事が残ってるらしくギルドの方へ歩いて行ってしまった。

  私はソフィアの方を見るとペンダントが余程嬉しかったのかマジマジと見てはニコニコと笑っていた。


「さて、どこから行くとするか」

「ソフィね?テトと噴水の公園に行きたい!」

「よし、じゃあ出発だ」

「おー!」


  ソフィアの手を引いて市街地の中央にある噴水広場までやってきた。

  なんやかんやで忙しい日々が続いていたのでゆっくり町を観察するのがとても新鮮だ。

  石造りの噴水の周りには円状の石畳の大きな広場が広がっていて様々な人達が各々くつろいだり遊んだりしているのが見える。


「きれ〜!ソフィね、この噴水が大好きなの。でも前はここに来たら石を投げられたりして全然見れなかったの」


  ソフィアはほんの1ヶ月ほど前の事を思い出しながら今自分が着ている綺麗な洋服を見下ろす。

  今は誰もソフィアの事を『呪われた子』だとは疑わない。容姿もそうだが、性格も最近はシーナやリサ達の協力もあってかなり明るくなってきた方だと思う。

  ペンダントのおかげで暴走も恐らく怒らないだろうし『アリア』の能力がバレなければソフィアは今後も普通の女の子として生きていくことが出来るだろう。


「これからは胸張ってこれるんだからまた来ようか」

「うん!やった〜」


  ソフィアは明るく笑ってみせる。やはりこの子には暗い顔より笑顔が良く似合う。


「テト!」

「ん?」

「ソフィ今毎日がすっごく楽しいの!シーナ達は優しいし、冒険者の人達もソフィの事怒らないの!ソフィ、テトと出会えて本当に良かった!」


  そう言うとソフィアは私に飛び付いてきたので軽く、お花の様な甘い匂いの香る小さな身体を抱きとめる。


「前にも言っただろう?私の生き甲斐はソフィアを幸せにする事だ」

「ソフィもテトの事幸せにするね!」


  ソフィアがそう言った直後、私とソフィアの周りを金色に光り輝く蝶の形をしたものが大量に包み込んだ。


「ソフィア?」

「レイズの皆!踊るよ~!」


 周りの蝶達がソフィアの声に反応してまるで踊っているかのように規則的に動き始め、しばらくすると空に溶ける様に消えていってしまった。そして不思議な事に心が洗われた気がする。


「ソフィア、今のは何なんだ?」

「レイズの皆だよ?テトにも見える様に協力してもらったの!」

「今のがレイズなのか…なんというか綺麗で温かいな」

「うん、ソフィにはずっと皆がいてくれたの。誰も振り向いてくれなかったけどレイズの皆だけは一緒だったから…寂しくなかったんだよ?」


 周りの人たちは何も気に留めずにいるので恐らくレイズを見たのはソフィアを除いて私だけなのだろう。そしてソフィアの話を聞いている限り知能も備わっているのだろうか。本当にまだまだ未知な事ばかりだ。


「ソフ…ん?」


 私は手のひらにふと違和感を覚えてソフィアを片腕で抱き、ゆっくりと手を開くと紙切れが挟まっていて何か書いて有る様だった。

 中身を読んだ私は思わず頬が緩んでしまう。


「レイズ達はソフィアの事を見守ってくれてるんだな」

「うん!とっても優しいの!」

「なら、安心してもらえるように頑張らないとな」

「うん!頑張る!」


 頭を撫でられて嬉しそうに目を細めるソフィアを見て私は考えた。

 ソフィアはアリアとしての才能は正直素晴らしいものを持っている。しかし、これは脅威にもなりえる。今までばれずに済んだのはレイズの隠蔽がとても上手だったからだろう。だが、それがいつまで続くかはわからない。となれば、私も何か案を考える必要がありそうだ。

 そして、この子がもっと完全に心を許して甘えられるような環境を作っていくことが今後の生活にも大きく関わってくるだろう。


 それでいいんだな?『レイズ』達よ。


『ソフィアをよろしく  レイズ』


 レイズからの私へのメッセージは短く、しかし今までの苦労も垣間見える言葉だった。


 そして、しばらくすると私が受け取った紙切れはしばらくすると魔力に分解されて消えていってしまった。


遅れてすみません!

お話が全く思いつかなかったのに加えて体調悪かったので寝込んでました( ´・ω・`)


第5話までのお話が貯めていたストーリーなので今後は新しく1から考えることになりますので今まで通りに1日置きなどに投稿は不可能だと思われますので恐らく1週間いないを目標に書いていきたいとおもいます

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