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伝説の老兵は異世界で少女と暮らす  作者: あるみす
一章  ミランダ
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老兵の転生と少女との出会い

 私、成瀬哲郎はその昔自衛隊で働いていた。

 それこそエリートと呼ばれる地位まで上り詰め、いろいろな土地に出向いては拳を振るい、銃を放ち、人々を守る仕事を生業としていた。

 しかしそれも永遠ではない。五十代後半の時に戦地で左腕を負傷しそのせいで自衛隊を離れることとなった。それからという人生は普通の老後だった。

 若い時から一緒に居る嫁と子宝にも恵まれ、孫の顔を拝むこともできた。


 そして、私は今その人生に幕を降ろそうとしている。老衰だ。

 病室の私のベッドの周りには家族が皆集まってくれた。幸せなことだ。やがて家族の声が遠くなっていよいよ死を迎える時、脳の最後の足掻きだろうか…今までの経験が脳裏にフラッシュバックして次から次へと変わっていく。

 走馬灯を見ているとひとりの少女が目に留まった。


 ヨーロッパへ出向いた時の事だ。そして私が引退する原因となった内戦。

 私は逃げ遅れた少女を連れて安全地へと向かっていた。銃弾の雨が降り注ぐ中、普通なら心が折れて泣き叫んでもおかしくないのだがその少女は泣きながら笑ってこう言った。


「ソフィは今幸せです。あなたの様に優しい人に出会えて幸せです。ありがとう」


 そして、これがこの少女の最後の言葉となってしまったのだ。直後に近くに爆弾が落ちてきて瓦礫が頭上から降り注いだのだ。私は無我夢中で少女を庇おうとしたが遅かった。

 その少女は私を突き放して自分だけ瓦礫の下敷きとなって死んでしまった。


 心残りがあるとすればあの少女を助けられなかった事だろうか…

 次生まれ変わるときはあの少女を守ってあげらる様になりたいなあ。

 私は消えゆく意識の中最後の力で声を絞り出す。


「私の方こそありがとう。そしてすまなかった…今から君の居るところに私も向かうよ」


 私の意識はこと切れて暗闇の中へと引きずり込まれていった。





 何だろうか…明るくてとても暖かい。まるで誰かに抱きしめられているような心地よさだ。

 しばらくその温かさに身を任せているといきなり声が反芻して聞こえてきた。


「高潔な魂の持ち主よ。そなたはその少女を助けたいか?」


 なんの事を言っているのだろうか。少女は何年も前に死んでしまっているし私だって今しがた死んだばっかりだ。力になんてなれるはずがない。


「もしそなたがまだ助けたいと思っているなら、そなたに再び肉体を授けてやってもいい」


 誰なんだこの人は…姿も見えないしどこから話しているんだ。


「その少女は今ある世界で死にかけている。そなたはどうする?」


 よくわからないがこの人は私に再びあの少女を助ける機会をくれるのか?となれば答えは一つだ。


「助けたいです。助けさせてください」


 すると、その声の主は声を上げて笑った。


「さすがは高潔な魂の持ち主よ!いいだろうそなたに全盛期の体力と機能を授けてやろう。あとは…そうだな。『魔力操作』と『魔道具生成』の技能もつけてやろう。わたしはそなたが気に入ったから神からのささやかなおまけと言うものだ。さて、おぬしの体を少女の住む世界へと送ってやろう。これからもわたしを楽しませてくれたまえ、高潔な人間よ」




 目が覚めるとそこには青い空が広がっていた。そして、私の顔を覗き込んでいる少女の顔。


「おじいさん、大丈夫ですか?」


 その声を聞いて寝ぼけていた頭が一気に覚醒していく。


「き、君…」


 私は思わず起き上がって少女の肩を掴む。少女は驚いた表情をしているがすぐに笑って首を傾げて私をまっすぐ見つめてくる。

 その笑顔で私は確信した。

 その『少女』だった。私が守れなくて死なせてしまった少女。その時より少し年齢は幼いが忘れるはずもない、屈託のないまぶしい笑顔は同じだった。


「おじいさん、どうかした?」


 私は少女から手を放していくつか質問をしてみた。


「君、名前は何というのかな?」

「ソフィはね、ソフィアって言うの。今日で七歳になったんだよ!おじいさんはなんて言う名前なの?」


 外国で哲郎というのはいささか馴染みにくいだろうか…


「私は『テト』と言う。質問ばかりで悪いが君は前世の事は覚えているかい?」

「前世?ううん、わからない」

「そうか、変な事を聞いてすまなかった…」


 やはり覚えてはいない様だ。しかし覚えてない方がいいだろう…戦争の記憶などろくなものじゃ無い。

 しかし、次にソフィアから発せられた言葉は驚くべきものだった。


「でもよく不思議な夢を見るの。優しいおじさんと走ってる夢。なんで走ってたかはわからないけどその夢を見たときはすごく心が温かいの。いつかあのおじさんに会えたらいいな~」

「そうか…そうか…」


 私は年甲斐もなく涙を流してしまった。この少女はあんな辛い経験でさえ乗り超えて、私との事を覚えててくれたのだ。この子を守ることにそれ以外の理由はいらなかった。

 ソフィアは薄汚れた服に汚れてぼさぼさな金髪、加えて誕生日だというのにこんな野原に居ることから裕福な生活が送れてないことがわかった。


「ソフィアのご両親は?」

「パパとママはちょっと前に居なくなっちゃったの…」

「居なくなった?」

「うん、パパは出ていくときにソフィの事『呪われた子供』って言ってたの…ソフィ何もわからないのに。気づいたら一人。ずっと一人」


 ソフィアの大きな瞳にはあふれんばかりの涙が浮かんでいる。おそらくずっと寂しいのを我慢していたんだろう。親に捨てられ、子供一人で生きるなんて不可能だし何より辛いだろう。


「ソフィア。これからは私と暮らそうか。どうか君の事を私に守らせてくれないか?」


 私はそう伝えるとソフィアはあの時と同じ笑顔でこう言った。


「ありがとう」


 私に許された二回目の人生。それはソフィアの為にすべてを使おうと私は心に決めた。


お付き合い頂きありがとうございます。

衝動的に異世界転生を書きたくなりペンを走らせました。

老人を主人公にした理由は最近ウィッチャー3の動画を見てイケおじに憧れたからです(笑)


今後のソフィアとテトのハートフルな生活を楽しんでいただけたら嬉しいです

では、2話でお会いしましょう

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