8・いやな予感の的中
走って、走って、走った。
紅はとにかく走って、あの場から離れようとした。
すると―――――――――――
「きゃあ!?」
「う、うわっ!?」
どーん!すごい音がして、
「は・・・晴田さん・・・!?」
「う、うぇ!?ご、ごめんなさい先生!!ちゃ、ちゃんと前見てなくて、紅、じゃなくて私、いや、あの―――――」
ぶつかったのが先生だと分かった紅は、慌てて謝り倒した。
ところが・・・
「晴田さん!探してたのよ!!」
「え、え?」
「いますぐ外出て、病院へ行くわよ!先生も行くから!」
「外?病院!?」
「え、えぇ・・・とにかく、早くして!今すぐよ!!」
先生が教師専用昇降口の方へかけていって、紅も慌てて自分の靴箱へと向かった。
すごく嫌な予感がして・・・
「・・・紅?」
上の階の窓から、紅を見つけて、猛は不思議そうに首を傾げた。
「先生、あの、なんで病院なんていくんですか?」
「あ、え、その話、するの忘れてたわね!」
「え、はい・・それで、なんで―――――――」
「お父さんが倒れたって」
先生の言葉に、紅は目を見張った。
「・・・え?」
「そう・・・なの。急に家で激しくせき込んで倒れちゃったらしくて、お隣の人が気づいてくれたみたい。それで・・・あまり、よくはないみたいよ・・・」
「・・・ウソですよね」
紅は小さく首を振った。
「う、ウソですよそんなの、紅、この目で見るまで信じない・・・それに、だって、昨日まで元気だったのに・・・」
紅は顔を真っ青にして、一人でそううなずいて、自分を安心させた。
「こちらの病室です」
「お父さん!!」
紅は叫んで、ガラッと病室のドアを開けた。
お父さんは眠っていた。隣で、医者と看護師がしくしく泣いている。
「・・・・・・・・・ねえ、お父さん、起きてよ」
紅はお父さんに歩み寄った。
「お父さん、起きて。ほら、紅、ここにいるんだよ。昨日のご飯おいしかったんだよ。またあの料理作ってよ」
お父さんはもちろん、何も言わない。
「まだ一緒に遊ぼうよ。お父さんがいなかったら・・・えと、ほら、お小遣いもらえないし。誕プレだってクリプレだってもらえなくなっちゃう」
紅は早口になりながら言った。
「娘さん・・・お父さんは、もう」
「紅、死ぬなんて許さないから・・・天国でお母さんが言ってるじゃん!紅を置いてきちゃダメだって!お母さん、絶対言ってるよ!!」
紅は叫んだ。
「娘さん・・・」
「死ぬなんて・・・紅、死ぬなんて許さない!!!許さないから!!!お父さぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁん!!!!」
紅は病室で叫び、大泣きした。