5・ひとりだけの公園
「・・・」
(誰もいない、よね?)
紅はきょろきょろ辺りを見回して、誰もいないことを確認すると、ぽん、と魔女の姿になった。
ここは、猛が紅の秘密を知った、あの公園だ。
「・・・よっと・・・。紅の魔法力、落ちてるのかな・・・いや、落ちてるんだけどさ・・」
紅はぶつぶつと独り言を言って、赤いハートのペンダントをぎゅっと握った。
ハートが大きくなって、攻撃用のブーメランサイズになる。
実はこのハート、攻撃用のブーメランサイズのほかに、乗る用のでっかいサイズ、それからなんでも入る永遠カバンにもなる。
すべての魔女が、自分の何かを、ペンダントサイズ含め、4種類に分けて使っているのだ。
「やっ!」
スパーン!
ブーメランは飛んで行って、フェンスに引っかかっていた鳥の羽を燃やした。
と言っても、炎はマッチくらいの大きさだ。
「・・・え」
(待って!紅の魔法、こんなに弱くなっちゃってるの?)
紅は自分で自分の魔法にびっくりし、もう一回、投げてみた。それでも炎はマッチサイズ。
(・・・これは、練習しなきゃ、ヤバいよぉぉぉぉ!!!)
・・・そして。
1時間半後、紅はまたブーメランを投げた。
ボウっっ!!
結構な大きさの炎が出て、紅は「うん!」と満足げに笑った。
(・・・これなら、いつ魔法界に帰って、魔王にあったって、大丈夫――――――)
そのとき。
ひらっ
猛といたあの時みたいに、葉っぱが落ちてきた。
紅は思わず、周りに人がいるかいないか確認しないで、投げてしまった。
命中。
(・・・思わず、投げちゃった・・・あの時と、全く同じだったんだもん・・・。まあ、だれも、見てないよね・・・?)
紅はきょろきょろと公園の周りを見回して、人がいないことを確認すると、ハート型をさらに大きくした。
紅が乗れる乗り物サイズ。
「ハートさん、お願い。紅、家に帰るよ、帰らせてくださいな」
ハートはふわっと浮いて、空高くへと昇ると、家の方向へと動き出した。人に見られてはいけないので、ちょっと早めのスピードで。
「・・・・・・・・え?」
今の光景は何だったんだろう、と、紅のクラス1組の姫香通称女王様は言った。
「・・・どういうこと・・・?もしかして、紅・・・」
マジックかな?とか、夢だとか、いろいろなことを思った上に、燃えた葉っぱのもとへと近づいて行った。
・・・飛んでいったよね、今。
「・・・魔女?」