12・ユリの作戦
「・・・来た・・・」
「だましておいて、よく来れるよね。度胸あるー」
「・・・」
紅は隣を歩いていた猛をチラッと見て、すぐそこにいた友達に声をかけた。
「おはよ!」
「・・・・あ、紅、ちゃん」
紅は目を見張った。いつも紅と呼び捨てで呼んでくれてたのに・・・。
「紅・・・」
「わかってた。だから、紅は大丈夫!」
紅は笑うと、教室へ入っていった。
「・・・どうしよう、ユリちゃん!なぎちゃん!咲穂っ!」
「外に出るわけにはいかないわ。みんな集まってきちゃう・・・」
「だけど、緊急事態だって!しょうがないやん!」
「で、でも、紅・・・やっぱ危ないよ・・・」
「だけど、行きたいんだもん・・・外に出たらみんな来るから出たくないけど、行きたいんだもん!!
・・・・トイレ」
「どういう話をしてんだよ、お前らは」
猛が後ろから現れて、「聞いてたの!?」と紅は叫んだ。
「しょうがねーだろ。聞こえちゃったし・・・」
「女子のトイレの話聞くとか、変態!猛のばかっ!!」
「とても昨日お父さんが死んでしまった人だとは思えないわね」
ユリがそう言って、渚と咲穂はくすっと笑った。
「もー、行くしかないよね!?じゃないと解決しないし!」
紅はばっと席を立ちあがると、ユリや渚の陰に隠れて歩き出した(猛は遠くから見ている)。
「あの子・・・」「堂々としてんね・・・」
「あら、紅。今日ちゃーんと学校来たのね、えらいわ」
紅の前に立ったのは、姫香ととりまきたちだった。
「・・・姫香ちゃん」
「見てみて、あの新聞。大人気よ」
紅が公園で魔法の練習をしていた写真が載っていて、その新聞はボロボロになっていた。
「さーあ、どうするの?謝りましょ、みんなに。そうよね?」
「え、え?」
「だってそうよ。ずっと嘘をつかれてた私たちの気持ちわかる?悲しいわよ、怒るわよ?そうなったらみんなの前で謝るしかないじゃない」
「え・・・」
「そうだそうだ!!」「謝れ謝れー!!」
「あやまーれ!あやまーれ!」
「ちょ、お前ら」
「あやまーれ!あやまーれ!」
「やめろや!こんなことして、何が楽しいねん!」「や・・・やめてあげてください・・・っ」
「あやまーれ!!あやまーれ!!」
猛や渚、咲穂がいくら叫んでも、コールがやむことはなかった。
「・・・・・・っ・・・み、みみ、みんな・・・あの・・・ご、ごごっ、ごめ、ごめんな―――――」
ビッシャァァァァァァァン!!!!
「・・・え?」
コールをしていた人たちの頭上から、水が降ってきたのだ。
「ちょっと!誰よ、何すんのよ・・・」
「あんたたち、人をいじめて楽しい?」
制服じゃない―――魔女の衣装を着たユリが、凛として言い放った。