11・明日でサヨナラ
「ずるいってなんだよお前ら・・・」
「あ、え、あわわ・・・な、なんでもないですっっ」
咲穂は顔を真っ赤にして、慌てて渚の後ろに引っ込んでしまった。
「ちょっ、咲穂!うちを盾にせんといて!」
「ふ、ふぇぇ、だって・・・」
渚もずるいと叫んでしまったことに恥ずかしくなって、手で顔を隠した。
ユリはというと、ゴホン!と咳払いをして、気を取り直したようだ。
「なんでもないわ。そんなことより紅!大丈夫なの?」
「あー、えと・・・大丈夫じゃないけど、でも、猛のおかげで、助かったよ」
紅はニコッと笑って、一回上げた頭を再び猛の肩に乗せた。
「・・・」
明らかにユリの顔が一瞬曇ったのに気づいて、また紅は頭を上げた。
「よかったー。うちら、ほんとに心配したんだからな」
「うん。それに学校のこと、私たちは全然気にしてないよ。みんなで友達でい続けるって、約束したんだ」
咲穂が笑顔でそう言うと、ユリと渚が大きくうなずいた。
「・・・ありがとう」
紅はくぐもった声でそう言った。
「紅、明日、学校来る?」
「・・・うん。明日で、最後にしようと思って」
「え?」
ユリが聞き返すと、紅はまっすぐみんなを見つめた。
「もう、こっちの世界に住まないことにしたの。ここにいても、お父さんもお母さんもいないから色々大変だし、学校でもみんなにいろいろ言われちゃうし」
「ど、どこに行くの?」
咲穂がおどおどしながらたずねると、紅は「魔法界だよ」と言った。
「信じられないかもしれないけど、ほんとに紅、魔女なんだもん。魔法界で生まれたんだもん。親戚の人とか、向こうにしかいないから・・・」
紅はニコッと笑った。でもその笑顔が、いつものふわふわスマイルじゃないことは、みんな気が付いた。
「じゃあね。ありがとうみんな。まだ、明日あるんだけどねー」
「・・・紅が決めたことだもんな。そっちのほうが、いいよな」
「・・・うん」
「もう、紅ってばーーーーーーーー!!!悲しいよ!!もーーー!!!」
渚がバッタバッタと暴れて、ユリが「落ち着きなさい」と言った。咲穂も「あかねん、落ち着いて」と言った。
「まだ明日あるんだから。大丈夫よ。悲しみはその時に思う存分言って頂戴」
「ユリーーーーー」
渚は言って、ユリに抱き着いた。
紅がそんなみんなの明るい光景を、楽しそうに眺めている。
ユリはその顔を見て・・・とある作戦を思いついた。