大野凪【チュートリアル】③
さて、まずこのよくわからないモノはどうしていきなり出てきたのか?そして、どうして俺はこれを感じられるようになったなか?最後にこの、これを感じとっているモノは何なのか?
これを知らなければならないだろう。
まあ、ある程度予想はついている。
俺はここに来てから、ずっと考え続けていた。
肉体を鍛える為にその自分の肉体を破壊し続けていた時も、体の仕組みを調べる為に自分の脳や眼球、臓物を抉り出した時も、ひたすら正拳突きをしていた時も、思考が行き詰まっても、【探求】のゾーンに入ってひたすら考えていた。
そんな俺が、初めて無心になった。
最初はたしかにより効率的に破壊できるよう考えていた、しかし、最高効率を見つけてから俺は、ひたすら壊し続けた。楽しかった。俺の、見た目だけは華奢と言ってもいいような、人間の小さな拳で、猛獣や伝説上の生物達が次々と破壊されていく様には、感動を覚えた。
きっと、これが無我の境地と呼ばれるモノだろう。
時にはこういうモノこそ必要になる。いい勉強になった。
さて、おそらくこれが最初の二つの答えだろう。
次は、この“深い”何かだな。
これも見当はついてる。おそらく、魂や精神と呼ばれるモノ。
ここまではいい。
なら、魂とは何か?
精神とは何か?
この二つはそもそも同じモノなのか違うモノなのか?
疑問は尽きない。
なら、その疑問を解消しなければならない。
では、どうするのか?
また、何万年も無心になるまで破壊し続ける?
たしかにそれが一番確かな方法だ。
しかし、おそらくもっと手っ取り早い方法がある。
【探求】のゾーンだ。
気になってはいた。
何故、幾星霜の時を記憶しても、脳に負担を感じないのか?
何故、無限の速さで思考し、とてつもない集中力を発揮しても、脳が無事なのか?
俺は、【探求】には、そういう記憶領域と演算領域を拡張、もしくは別に設ける権能があるのでは?と思っていた。
しかし今回ので、別の可能性が出てきた。
記憶していたのは、魂ではないのか?
思考していたのは、精神ではないのか?
そういう可能性だ。
そして、正しいのは、おそらくこっちだろう。
なら、【探求】のゾーンに入れば、より深く“コレ”を感じられるはずだ。
なら、試す。
間違っていてもいい。そのときは、他の方法を模索する。
これまでもそうやって来たのだ。
それはこれからも変わらない。
時間は無限に有るのだから。