冤罪夢
人を殺してしまった。
恨みがあった。懐柔も発散もできないルサンチマンに唆されて、僕は夢の中で殺人鬼になってしまった。
橋の上だった。君は何故殺されるのかと叫びながら後退っていた。
足の腱を切っておいた。
そこまでは覚えてる。
同じ夢を見てしまった。
こんな夢を見させた君を恨んでいた。君は今も寝ているのだろうか。夢の中でも僕を呑み込んでいるのだろうか。
川の底だった。殺された君は有機物の欠片をまき散らしながら下流へと流れていった。
僕は返り血を洗った。
そこで目が覚めた。
有りと有らゆる凶器があった。
尖ったものは突き刺せる。
鋭利なものは切り裂ける。
流れるものは流し込める。
大きなものなら閉籠められる。
飲み干したペットボトルの蓋でさえ。
万象は唯其処にあるだけで触媒となって僕の心の堰を蝕んでいく。
僕は形を変えていく。
僕は目が覚めた。
たいへん喉が渇いたので台所へ行き、
僕は西瓜を割った。