第2話 一人暮らしを始めたいです。
取り敢えず、前世でセラピストという職業だった私。
ちなみにセラピストとは、俗に言うマッサージができる人的な感じである。
色々分類や規則もあるが今は置いておく、だって今の私が住んでいる場所は、どっかのファンタジー世界っぽいし。
そんな訳で、明日の朝にお店を立てる場所を探そう。
今日は遅いのでもう寝る。
黒い天蓋付きベッドに潜り眠りについた。うん、天蓋付きベッドは良い。
ぱちりと目をさますと、朝日が眩しかった。
時計を見れば朝の6時半、何時もは7時に朝食の時間だ。
ベッドから降りると、支度を整える。
黒いゴスロリ服を着て、銀色の長い髪を黒いリボンで2つに結ぶ。
鏡でチェックすれば、可愛い美少女の出来上がりだ。
顔といい髪色といい、父親そっくりだなと思った。母親と似ているのは目元くらいだろうか?
まあ、良いや。
時計を見れば7時の5分前そろそろ、兄が来る頃だ。
___コンコン。
ノックの音が聞こえた。
私はドアを開けた。
「おはようございます。お兄様。」
「おはよう、アルア飯行くか。」
兄の言葉に頷くと、兄の後ろをついて行った。
食事の為に部屋を移動すると、珍しく部屋には父親がいた。兄が親嫌いなため、何時もは親が食事を済ませた後の時間か、食べるもっと前の時間と決めている。
チラリと兄を見れば不機嫌そうだ。血色の悪い顔はさらに血の気が引き、目は少し濁っている。
しょうがない、引き返すか?と後ろから兄の手を握った。兄は、そのまま私の手を引き何時ものテーブルに座った。
今日は珍しく、食べる気らしい。何時もは親の顔を見た瞬間私の手を引き、部屋に引き返すのに。
兄がテーブルに着くと、父は嬉しそうに、いつも通り自身の武勇伝を語り始める。
昨日は、民のために金を使っただの、自分が国民の女にモテているだのくだらない話だった。
食事の合間に、いつも通り笑みを浮かべて、たまに相槌を打ってやる。
兄を盗み見れば、不機嫌な顔のままだ。
今のままならまだ良いんだけどね。
そして、いつも通り、兄がブチ切れる瞬間が訪れる。
「そうだ、そろそろお小遣いをやろう。後で部屋に置いておくから、確認しておきなさい。」
父親として当然の役目だ。とばかりに、誇らしげな表情だ。
兄を見るまでもなく、バンッと音を立て、私の手を引き、部屋に戻っていく。
兄は父親というより、金で何でも解決しようとするその行為が嫌いなようだ。
まあ、私もあそこまで金、金言われるとイラッとはする。
兄の部屋に来ると、言われた通り、広い部屋の天井に届きそうなくらいの大金。
そしてそれを見て、さらに怒りマックスの兄。何時もながら我が家の環境は歪である。
取り敢えず、怒りを通り越して泣きに入っている兄の頭を撫でる。
まあ、私は兄の食事の仕方は嫌いだが、兄自体は嫌いではないので、取り敢えず優しくはしてやる。
一人暮らしをするのには邪魔だから、連れてはいかないけどな。
取り敢えず、早く場所見つけなきゃな。
私に抱きつき、泣きまくっている兄を撫でながら、漏れそうになるため息を、私はそっと飲み込んだ。