第1話 思い出した。
目を開けると、目の前にはクチャクチャと汚い音を立て、貪るように料理を平らげる豚がいた。
いや、よく見ると豚ではない、煌びやかな衣服を纏い、綺麗に盛り付けられたであろう料理を、汚らしく食べ続けていた。
「おい、食わねえのか?」
乱暴な口調で話しかけられ、思わず黙れ豚が!と罵りたくなる。
「いえ、いただきます。」
自分の思いとは別に、体がうごく。
ナイフとフォークを使い、盛り付けられた料理を綺麗に咀嚼する。
チラリと正面に座る人物をよく観察する。血のような赤い髪に、アメジストのような紫色の目。血色の悪い白い肌。
うん、パーツだけは良い。
「聞いてくれよ、またあのジジイがなあ。」
となぜか私に対して、ブツブツと日頃のストレスというか苦労話を聞かせてくる。
表面上は、笑みを浮かべて目の前の人物の話を聞いてやるが、いい加減イライラしてきた。ここらで切り上げるか____
「お兄様、そろそろお部屋に戻るお時間ですよ。」
壁に掛けられている、大きな白い時計を見ながら、兄にそう告げる。
それを聞くと残念そうな顔で、兄はそうか、と呟き、部屋に戻っていった。
その姿を見送ると、今度は入れ違いで、別の人物が入ってくる。
「おお!アルアか、もう食べ終わったのか?まだなら一緒に食べるか?」
と話しかけられた。
銀色の髪に、紫色の目、真っ白い肌色。目の色は先ほどいた兄と似ている。
「アヴァルは、如何した?」
「先ほど、後一緒にお食事いたしました。」
簡潔に述べると、目の前の人物は残念そうな顔をした。
「そうか、もう部屋に戻るのか?」
「ええ、そろそろお母様も戻られる頃でしょう?」
そう言うと、目の前の人物は、残念そうにうな垂れた。
「ねえ、今日は何の料理?」
噂をすれば何とやら、丁度会話をしていた人物が現れる。
私と目が合うと、嫌そうに顔を歪めた。
私はニコリと微笑むと、お部屋に戻ります。とお辞儀をしてから、部屋を出た。
部屋から出て、奥へ進んでいき、一番奥までくれば、真っ黒な扉の前に着いた。
扉を開ければ、真っ黒に揃えられた家具の揃った自分の部屋だ。
取り敢えずベッドにダイブする。
「はあ〜疲れた。」
取り敢えず、状況を整理しよう。
まず私の名前だ。
アルア・クエジャール、年は今は14歳になる。来年の冬で成人の年を迎える。性別は女、そして私は一国の国の王女である。ここ重要でもない。
一番の問題は、先ほどの人物が私の両親であるということ。
父親はナルシストで、バカだということ、そして母は、頭はいいがその使い道を、国民の財産を食いつぶすことに全力を注いでるということ。
そして先ほどの兄はそこまで問題はないので、取り敢えず置いておこう。
だいたいこの手の場合は、国民から暴動が起きて、国王とその身内が処刑されるパターンである。
うん、それは嫌だ。
というわけで、アルア・クエジャール、14歳は一人暮らしを始めようと思います。
所謂戦略的撤退と言う。