奇想曲“カプリッチョ”
今日もピエロは踊ってる
アスファルトのタイルの上で踊ってる
あれはいったいなんだろう
滅茶苦茶に見えてるのに
滅茶苦茶じゃないみたい
不思議なんだ
吸い寄せられるような躍りなんだ
ピエロは口ずさみながら踊ってる
嫌悪に顔を歪めてる人もいれば
心底楽しそうな笑顔に包まれてる人もいる
嫌悪の顔は大人で
楽しそうなのは子供
そんな感じがした
僕は〝奇想曲のピエロ〟って名付けたんだ
ちょうどそんなのが聞きたかったから
毎日毎日踊ってる
雨の日も風の日も晴れの日も雷の日も
雨に打たれながら
風になびかれながら
陽に当てられながらも
雷に驚かされても
躍るんだ
あのピエロは何で踊っているのか
気になった
そして帰るときになったとき
追い掛けて聞いてみたんだ
〝誰かのために踊ってるのかい〟
それを聞くとピエロは躍りながら声高らかに
張り上げた
〝あの子のために踊るのさ〟
〝これはあなたの奇想曲〟
〝これは僕の奇想曲〟
〝もしあそこで聞いているなら〟
〝耳を傾けて〟
〝そして一緒に踊ろうよ〟
そして躍り終わったら
声を弾ませながら帰ったのさ
それから僕は聞かなかった
なぜなら彼はピエロだからね
なにかがあると分かっていても
それを聞かないのがピエロなのさ
ピエロは今日も踊ってる
あの子のために踊るのさ
そして僕はふとしたときに口ずさむ
〝これはあなたの奇想曲〟
〝これは僕の奇想曲〟