王子様の誤算 ~白雪姫の王子様の場合~
物語後半に若干ですが、死体の描写表現が有ります。
一応R15つけさせていただきました。
白雪姫のおはなしに出てくる王子様を勝手に解釈・考察して書いていますので、原作が好きな方は気分を害す恐れがあります。ご注意ください。
皆様は『白雪姫の物語』をご存じだろうか?
そう、継母に殺されかけて森の小人に助けられ、小人の忠告を聞かずに見つかった継母に毒りんごを食べさせられた結果仮死状態になり、隣国の王子に助けられ(?)最後はめでたしめでたしな物語。
子供のころから割と誰でも馴染のある物語の1つであろうと思われる。
これは『白雪姫』に登場する王子様のお話。
最後まで読むかはあなた様しだいですよ・・・・
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◇ 王子様が、死体愛好家であったとされる割と有名な説を採用! ◇
~なぜ、王子様は死体を愛するようになったのか?~
とある時代、とある場所、とある国のとある王子様のお話です。
この王子様は、幼いころから整った容姿をしており、勉学・武術もそつなくこなされ、割と優秀な子供であると、周囲の貴族には認識されていました。
ただこの王子様は、王妃様のお子様ではなく、王様が一夜の伽として召し出し、その後懐妊したことが判明したため便宜上側室として王宮に上がっただけの方のお子様でしたので、立場的には弱い方だったのです。
まったく、いつの時代も権力者の男性ってものは・・・・
王様の方は、すでに王妃様との間に王太子となる男の子と、女の子2人を設けていましたので、、男の子が生まれたと聞き、ストックができた程度の認識だったようです。
子が出来なければそのまま捨て置かれたことでしょう。
その方が幸せだったと思うよ、私も。
ちなみに王子様のお母様ですが、結婚前の行儀見習いと箔付けの為に侍女として王宮にあがり、王妃様のたまたまおそばにいたときにたまたま王様から声をかけられて夜伽に召し出されて以降は、生まれた子の様子をたまに見に来る程度のご寵愛だったようです。
王妃様としては面白くないと思いますよ。
自分の目の前で夫が浮気相手を口説いて、その女が身ごもったわけですから。
まあ、王様が声をかけるほどですから、この女性の容姿だけは良かったようですね。
おっと、話がそれましたので、もとに戻ります。
さて王子様ですが、王族としてあるために幼少期より教育がしっかりなされます。
王族間・貴族間の序列にはじまり、国史、他国の言葉とその歴史、他国との関係は過去から現在に至るまでどのように続いているのか、自分の言動でどのような事態が引き起こされるのかなどなど。
しかしながらそこそこ優秀な王子様が頭を悩ませていたのは、勉学ではなく王妃様が産んだ3日だけ年下の弟の存在です。
弟君は、容姿は上の下位で王子様に劣り、勉学・武術の方でも王子様にやや劣る程度の優秀なお子様だったようです。
ただ弟君自身としては、身分が側室腹の王子様に容姿で負けて、さらに勉学などでもどうしても少しだけ劣ってしまう所が悔しく、3日だけ年上のこの王子様のことが憎かったようです。
何かというと、この王子様にくってかかっていました。
たとえば、ある日王子様が可愛い女の子をつい、目で追ってしまった時のことです。
「兄上は、色目を使うのがお上手ですね。
さすが媚びを売るのがお上手な側妃さまのお子で有られる」
と、さっそうと現れて王子様に嫌味を言ってみたり。
またある時は、武術の訓練中、汗を拭こうとしたところを捕まえて、
「このようなところで恥ずかしげもなく肌をさらすとは…
最近は、女性だけでは飽き足らず、男性をもたらし込むおつもりの様ですね」
と、言ってみたり。
お茶のお代わりを注いでくれた侍女に対し礼を述べれば、
「おや、兄上は誰彼かまわずお声をおかけになる、一体、誰が本命なのか。。。
流石、側妃様のお子は媚び方は一流ですね!
しかしながらあまりにも、節操がなさすぎると父上に怒られてしまいますよ。」
と、憂い顔でいってみたり。
部屋ので教師役のものと2人で勉強をしていてさえも、
「2人きりでお部屋に籠って何をなされていたのやら。破廉恥な!!」
と、責められるのです。
王妃様は特に止めるようなことはしません。
王子様を産んだ側妃様も、王子様が10歳になる前に流行病で、あっさり亡くなっていましたので王子様を守ってくれる大人はいませんでした。
側妃様のご実家はやや上よりの中級貴族でしたが、王妃様の不興を買ってまで王子様を庇おうとはしませんでした。
またある日のことでした、ケガをした小鳥を王子様が見つけ、手当をして看病をしていましたが、弟君に見つかってしまい、小鳥は取り上げられてしまいました。
しばらくして、中庭を歩いていた王子様は弟君に取り上げられた小鳥によく似た鳥の死骸を見つけます。
その小鳥は、他の大きな動物に襲われてしまったと思われる無残な姿になっていました。
この時も弟君は現れて、王子様の手の中の死骸をみて、
「そんな汚いものを拾って何をするつもりなんだか?
下賤な血が入るとゴミでさえ平気で持てるらしい」
と言って去っていきました。
王子様はしかしこの時少し嬉しかったのです。
王子様が手の中に入れていた小鳥の死骸も、ケガをした小鳥の時の様に弟君にとられてしまうかと思っていたら、取られなかったのですから。
王子様はその欠けてしまった死骸を大切に大切に保管にしました。
いつしか、小鳥だったものの肉は溶け、白い骨のかけらだけになってしましました。
それでも王子様はその白いかけらを大事に大事にしていました。
王子様は、こうして死骸であれば、弟に取り上げられないことを学習しました。
そして王子様は、次第に動物の死骸を愛でるようになったのです。
そんなこんなで、すっかり暗くなってしまった王子様をみて、流石に王様も気晴らしに森で狩りでもしてきたらどうかとすすめました。
逆らう気力もない王子様、ただただ素直に王様に言われた通り数人の伴を連れて森へと狩りに行きます。
もともと優秀な王子様です。
この時のに捕れた獲物は、牡鹿が一頭と、ウサギが十数羽。
その獲物はその日の夕食のスープや、メインデッシュになりました。
王様は晩餐の席で王子様に、
「狩りは、良い気晴らしになるであろう?
定期的に行ってみてはどうかな?」
と、薦めます。
王子様は、どうしたものかと考えます。
しかしながら、ここで提案を断っても断らなくてもどちらにしろ責められるのは変わらないかと思うと、
「そうですね。
では、お言葉通り定期的に狩りをしに森へ行こうかと思います。」
と返答していました。
少しでも城の外にいたいと思っていたからかもしれません。
弟君は父君に声を掛けてもらっていた兄が内心憎くて仕方が有りませんが、父君の手前柔らかな笑顔を湛えて兄を睨んでいました。
しかし、父君から
「お前は、最近公務をすごく頑張っているらしいな。
補佐官を任せた者たちからも、よく頑張っていると称していた。
これからもこの調子でな?」
と、言われ兄を睨んでいたことなど忘れてそれはそれは、嬉しそうに、
「はい、父上。
これからも頑張って、王になられる兄上の片腕に成れるよう努力します!」
と、お返事していました。
こうして、定期的に狩りに行くことが決まった王子様は、2・3ヵ月に1回の割合で狩りに出るようになりました。
王子様はしかし面白くありません。
せっかく自分が狩った、自分の物なのに自分だけが愛でることができないのですから。
回を重ねるうち、どれだけ多くを取るのかではなくどこまで遠くへ行けるのかに重さを置くようになっていき、少しずつ狩りではなく、森の散策の時間が長くなるようになってゆきました。
そんな日々が過ぎていったある日のことです。
王子様はこの日かなり森の奥へと来ていました。
すると、なにやら人が泣いているような声がします。
一緒にいた伴人達は気味悪がり、引き返そうと提案してきましたが、王子様は気になって仕方ありませんでした。
伴人が制止するのも聞かず鳴き声のする方へ進んでいきます。
そこにいたのは、腰くらいまでの大きさの面妖な生き物が7匹と、王子様が見たこともない程綺麗な少女。
その少女は、雪の様に白い肌に真っ黒な髪、煙るようなまつげは閉じられ、朱赤の唇が目を引くそれはそれは綺麗な少女でした。
王子様は面妖な生き物が何か気になりながらも少女について聞きたいと、面妖な生き物に問います。
「その綺麗な少女を、墓穴に入れようとするのは何故か?」
面妖な生き物が泣きながら答えます。
「この子は、『白雪姫』私達のお姫様。
私たちの留守中に訪ねていた悪い魔女に毒りんごを食べさせられて死んでしまったのです。」
王子様は以前手にした小鳥の死骸を思い出していました。
そして・・・生きた少女であれば弟に取られてしまうが、死んだ少女であれば取られない。
この少女であればずっと一緒に居られるとの考えに至ります。
『そうだこの子を妻にしよう』
王子様は自分の考えが良いことだと思い言います。
「その少女を埋葬するのはやめてもらえないだろうか?
そんな薄暗いところではなく、もっと明るいところが彼女には似合う。
私が責任を持とう。私にお前たちのお姫様をおくれ。」
面妖な者たちはびっくりして涙が止まりました。
この者は何を言っているんだろうと、王子様の方を見ます。
王子様の後ろでは伴をしていた者たちがびっくりした顔のまま固まっていました。
面妖な者たちは言いました。
「墓の中は暗いものだし、死体は墓に収めるものでしょう?」
王子様がにこやかに答えます。
「確かに死体は墓に収めるものかもしれないが、この子はまだこんなに美しい。
暗い場所は似合わないだろう?
しばらくは、私の傍で過ごしてもらいたいのだ。
もし、断るのなら、お前たちを皆殺しにして連れていくまで。
それでも、私には問題はないな。」
面妖な者たちはおこの王子様が恐ろしく思えました。
逆らうよりは、姫の死体を渡した方が良いと、埋葬する予定の姫の死骸引き渡します。
王子様の伴の者たちは死体を運ぶなんて恐ろしいとばかりに姫に近づきません。
結局王子様が自分の馬に姫の死体と2人乗りして変えることになりました。
面妖な者たちは立ち去る王子たちが見えなくなるまでその場を動けませんでした。
王子の伴の者たちは若干青ざめながら、一方、王子様はご機嫌で城までの道を戻っていきます。
城に着くと少女の死体は王子様に抱き上げられ、王子様の自室の王子様のベットへと横たえられました。
途中、王様に会いましたが、王様は王子様に抱気上げられている少女が死体だとは思わず訪ねます。
「その娘はどうしたのかね?」
王子様が答えて、
「森で見つけました。父上の許可がいただければ私の妻として迎えたいのです。」
王様は、王子様も好きな人が傍にいれば明るくなるのではないかと思いわれたのか、
「お前の妻としてもかまわない。
だが、お前とその娘の子共は王族として認められないだろう。
それでも、良いならお前の妻としなさい。
しかし、疲れているのか、その娘は良く眠っているね。」
王子様は、父に認められた妻としておけばこの子が弟に取られることは無いと思い、とても嬉しくなりました。
王様も機嫌よさげに
「お前にも好きな人が出来てよかった。」
と言って去っていきました。
王子様はこれまでにないほどご機嫌でした。
王子様は普段、他人との接触を嫌い掃除をする下働きの者位しか自室に出入りを許さなかったのですが、この日は侍女を呼び、入浴の用意をさせたりベットで眠るように横たわっている少女の着替えを用意させたりしました。
ただ、王子様の自室に出入りした侍女たちは『2度とは入りたくない』と顔を真っ青にして、何があったのか口にしようとはしませんでした。
王子様と『白雪姫』の死体の結婚式は、王族の結婚にもかかわらずひっそりと行われました。
2人の結婚を見届けた司祭は王様に
「花嫁は始終ベールをかぶり、一切口を開くことは無く、夫となられた殿下がずっとそばで支えていた。
王子殿下の希望通り、近年まれにみる古式ゆかしいお式でした。
また、式の間中、お2人からは、何やら甘酸っぱい匂いがしていました。」
そう報告しました。
さて、弟君は面白く有りません。
父上の話によればそれなりに美しいはずの兄嫁を城の中で見たことがないのです。
確かに兄の妻となった女はいるようでした。
兄と一緒に城にはいり、抱きかかえられて兄の部屋に入ったのを見た者がいつのですから。
結婚を前にして家族である自分たちに紹介などは一切なかったのです。
なので、兄の結婚は偽装でホントはそんな女は居ないのだろうというのが弟君の結論でした。
ただ、なぜそんな偽装をしようと思ったのかそれが疑問では有りましたが。
それからしばらくして、弟君は兄の部屋を訪ねて見ることにしました。
部屋をノックすると兄が出てきました。
結婚祝いを持ってきたといって無理やり部屋に入ると・・・・
窓が開いているにも関わらず部屋いっぱいにに広がる何とも甘酸っぱい臭い。。。
部屋の中を見回すと、まだ原型をとどめているもの、肉がこそげ白い骨が見え始めえているもの、白い骨だけになってしまって元が何かわからないものが所狭しと並び、王子が座っていたであろうソファーの片側に既に顔の半分ほどは骨が見え始めた、若い女性の者と見える死体が・・・・・
込み上げてくる吐き気に青くなりながら弟君は、急いで父上に報告しました。
「二の兄上は壊れてしまわれた。・・・・部屋で死体を愛でておられた。」
幸せな結婚をさせたと内心喜んでいた王様は、弟君の話を聞き急ぎ王子様の部屋へ。
そこで見た者は笑顔を湛えながら崩れかけた死体に話しかけている息子の姿。
「息子よ、その者はすでに死んでいるではないか?」
王様は王子様に話しかけました。
王子様は何を言われているのかわからないという顔をしながら、
「私の『白雪姫』は、はじめから、生きていなかったのに何を仰っているのですか?」
と答えます。
王様は、さらに王子様の部屋の中をみて驚き、王子様に聞きます。
「息子よ、この部屋にあるものはいったい何なのだ?」
王子様は不思議な事を聞かれると思いつつも笑顔をむけて、
「私の可愛いペット達です。
皆、おとなしく可愛い者たちばかりですよ。」
と答えました。
王様は部屋を後にすると、城の兵たちにこの王子を離宮に幽閉するように言いました。
そして、王子の部屋にある物々しい数の動物の死骸であろう者はすべて処分し、王子様と結婚した死体は丁重に葬ることを伝えました。
これは、息子にその気はなくとも、死んだあとの遺体をもて遊ばれてしまった少女へのせめてもの餞でした。
「どこで、嫌、いつから間違えていたのだろうか?」
誰も聞く者のいない王様のつぶやきは、むなしく響くだけのものでした。
そして王子様の誤算は、父親である王様にさえ理解してもらえず可愛いペット、物言わぬ美しい妻と別れて暮らさねばならなくなったことです。
妻と結婚する際は父上とて喜んでくれていたのにという思いが募ります。
しかもそれまで住んでいた部屋を出され、離宮に幽閉だなんて。
いきなりのことでしたので王子様が一緒に連れてこれたのは最初の小さな小鳥(の骨)だけでした。
王子は小鳥に話しかけます。
「お前だけでも一緒に来てくれて嬉しいよ。」
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いつのころからか少しずつ心を蝕んでしまった王子様は離宮に移った後、しばらくして病で亡くなられてしまわれたそうです。
王様は、王子様が亡くなると、その母親の名前と共に王族籍から削られてしまったのだとか。
これは、昔々のお話です。
素敵なおとぎ話に隠れた残酷なおとぎ話。。。
死体は2度と蘇らない、死体は死体でしかなかった物語。
・・・・・・あなたはどう思いますか?
拙い作品をお読みいただきありがとうございます。
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お読みいただきホントにありがとうございました。