774列車 最長の終わり
2062年6月25日・日曜日(第110日目)天候:雨時々曇り 九州旅客鉄道九州新幹線長崎ルート長崎駅。
今日も午前中は長崎観光をする。天主堂や出島を見て回る。
「なかなか、電気発生しないなぁ・・・。」
僕は電気の発生する装置のてこをぐりぐり回していたが、なかなか電気の発生する場所は光ってくれない。体力結構落ちてるみたいだな・・・。
「次は僕がやる。」
そう言うと北斗がてこを持ったが、北斗の回し方はてこを回すと言うよりてこに振り回されているといった方がいい。でも、一生懸命回そうとしているところがまた可愛いんだな・・・。
「次は瑞穂が回す。」
「まだ回すの。」
「北斗君。瑞穂ちゃんに変わってあげて。また後で回そう。」
「う・・・うん。」
「ハハハ。」
今度は瑞穂がてこを回す。しかし、なかなか電気が発生しないのは瑞穂の時も同じかぁ・・・。ここは播州さんの動画と同じように常陸か稲穂が回した方がいいのかな。
瑞穂ちゃんの次は海来ちゃんに交代。まぁ、海来ちゃんでも光らなかった。次は常陸君に交代。今までに無い勢いでぐりぐり回すと時折青白い光が発する。あれが、これで生み出された電気だ。
「おお。」
「常陸君凄い。」
「お兄・・・がんば。」
「かはっ・・・。結構疲れる。」
「体力無い奴。」
「それ言うんなら次は稲穂がやれよ。」
「フン。」
「あっ、無視した。」
「ハハハ。」
「フフフ。」
出島見物が終わってから、僕たちは長崎駅へと向かう。次に乗る列車はついに最長往復切符で乗る最終列車になる。その「かもめ460号」は12番線に停車している。改札機に切符を突っ込み、中へと入る。
長崎15時34分→「かもめ460号」→嬉野温泉16時01分
長崎→諫早間の乗車券使用開始
長崎→守山間の乗車券使用開始
「ドアが閉まります。」
その音声でN700のドアが閉まる。外の景色が後ろに流れ始めると本当にこれで最後だという実感がわいてくる。
「後は嬉野温泉で降りるだけね。」
「ああ。」
「長かったわね。」
「長いようで短い旅だったな。すっごい長かった筈なんだけど・・・。」
「・・・何かもう話事が無いわね。」
「ハハハ・・・。そうだな。」
列車は諫早駅に停車。そして、発車。これで最長往復切符のルートに復帰。そして、ルートに復帰という言い方もこれが最後になる。
長崎→諫早間の乗車券使用終了
最長往復切符復路諫早駅から使用再開
新幹線はトンネルに出たり入ったりを繰り返し、新大村に停車。もう・・・次だ。
「まもなく、嬉野温泉に着きます。この列車は到着後すぐに発車いたします。お降りのお客様は準備をお願いします。」
「きたな・・・。」
僕がそうつぶやき、光が子供達を促して、降りる準備をしてくれる。列車のスピードが下がり、ゆっくりと嬉野温泉駅のホームへと入る。ドアが開き、ホームに足を降ろした瞬間、
「終わった・・・。」
とつぶやいた。終わったんだ、これで本当に・・・。僕たちの最長往復切符はここで全ての効力が失われた。
「ナガシィ。」
萌に声をかけられ振り返ると、萌は右手を挙げていた。ハイタッチだな。
「パシン。」
ハイタッチの音はほとんど新幹線から出される音にかき消された。
最長往復切符使用終了
最長往復切符を僕たちは窓口へと持っていった。窓口にいる駅員に「持って帰ってもいいか」と聞くと「かまいませんよ」と了承してくれた。
嬉野温泉16時36分→「かもめ672号」→新大阪19時54分
新大阪20時08分→「はるか50号」→守山20時56分
嬉野温泉→守山間の乗車券使用開始および終了
長崎→守山間の乗車券使用終了




