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MAIN TRAFFIC  作者: 浜北の「ひかり」
Longest Journey Episode:16
764/779

764列車 知恵の結晶

 2062年6月18日・日曜日(第103日目)天候:雨 九州旅客鉄道(ジェイアールきゅうしゅう)肥薩線(ひさつせん)人吉(ひとよし)駅。

「ふぅ・・・。」

頭にタオルを被って、僕は部屋に戻った。部屋の扉をノックして、(もえ)に扉を開けて貰う。

「さっぱりしてきた。」

「うん。朝風呂はやっぱり最高。」

お風呂と豪勢な朝食を済ませても、まだ旅館でゆっくりする時間がある。それにしても昨日の夕食も量多かったなぁ・・・。ちょっと横になってお腹を空かせてから行動しようかな。

 10時が近づいてくると人吉(ひとよし)駅に向かった。人吉(ひとよし)から吉松(よしまつ)方面行きの列車は10時08分発の「いさぶろう1号」。次は13時22分発の「いさぶろう3号」か・・・。

 熊本(くまもと)からやって来る特急「いさぶろう号」の乗客もほとんどが人吉(ひとよし)駅で降りて行ってしまった。僕たちが入れ替わりに乗り込むことの方が浮いているようだ。

人吉(ひとよし)10時08分→「いさぶろう1号」→吉松(よしまつ)11時22分

人吉(ひとよし)吉松(よしまつ)間の乗車券使用開始

 列車内には木の椅子が広がっている。よくある九州旅客鉄道(ジェイアールきゅうしゅう)のデザインだ。次の駅は大畑(おこば)駅。「大」「畑」とかいて「おこば」と読むのも興味深い。

 10分ほどは知って、列車は山の開けた場所へと停車する。ドアが開き、ホームが見えるとやはりここは駅らしい。出発する時「いさぶろう」は進行方向を変える。大畑(おこば)駅はスイッチバックとループ線が複合した山を越える為の駅である。列車はある程度進むと、停車し、次に進む時には再び進行方向を変える。駅を下に見て、グイグイ坂を登っていく。

「まもなく、先程停車した大畑(おこば)駅が見えて参ります。」

車内アテンダントからそう案内がある。「いさぶろう」はスピードを落とし、坂の途中で停車した。緑の映える先には開けた土地が見える。あの場所が先程停車していた大畑(おこば)駅だ。

「昨日、ここ通ったけど明かり一つも無かったわよね。」

「ああ。そういえば明かりなんて見なかったな。」

「それこれ見たら凄いよく分かるわ・・・。」

「ああ・・・。」

あたりは木ぐらいしかない。広い駅とその施設以外他にあるものがない。山奥の開けた土地にポツンとある大きい駅が釣り合わない。

「衝撃ね・・・。」

「衝撃だな・・・。」

「北海道も結構何も無いと思うけど・・・。」

「北海道は何もないって言う色眼鏡を通してみるから何にも無くても驚きはしないけど・・・。」

「九州はこういう場所あるって思わないもんねぇ・・・。」

その風景を写真に収め終わったのを見計らうように列車は再び坂を登る。

 次の矢岳(やたけ)駅に周りも特に何もなさそうだ。正直、ホームに降りている人間は皆「いさぶろう号」の乗客だ。ホーム近くの小屋におかれている蒸気機関車を写真に収め、戻ってくると良い時間で列車は出発する。

 矢岳(やたけ)駅と真幸(まさき)駅の間には日本三大車窓の一つがある。列車はそこで停車もしてくれたのだが、天気の悪い今日は遠くの景色が曇りあまり良い景色には見えなかった。

 三大車窓のポイントを通過すると列車は再び加速し、真幸(まさき)駅を目指す。駅が近づくと列車の進行方向右下が開ける。眼下には確かにホームがあるが、その周りは大畑(おこば)駅と同様何もない。

「このあたりも無人らしいな。」

「無人なのに、あんな大きい駅・・・。何か虚しくなってくるわ。」

列車はいったんホームを通り過ぎる。実際ホームを通り過ぎてもまだ走っているところよりも下に見えるから、ホームが見えても真幸(まさき)駅に停車出来るわけじゃないんだよなぁ・・・。進行方向右下に線路が見えてくる頃、列車は停車する。あの線路はホームに入った後通る線路だ。

 列車は進行方向を変え、真幸(まさき)駅へと入る。ホームには幸福の鐘というものがあった。真幸(まさき)駅の停車時間を利用して、こういうものも見ることが出来る。

「幸福の鐘ついてみる。」

「良いよ。別に。」

「ええ。つこうよ。一緒に。」

「それが恥ずかしいんだって・・・。」

「・・・私と一緒にいて幸せじゃないの。」

「別にそうは言ってない。」

面倒くさいなぁ・・・。

「・・・分かった。一緒につくから。それと(もえ)と一緒で十分幸せだから・・・。」

「えっ、何。もう一回言って。よく聞こえてなかった。」

「嘘言うな・・・。」


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