758列車 二県を股にかける
2062年6月14日・水曜日(第99日目)天候:晴れ 西日本旅客鉄道山陽本線下関駅。
列車で下関駅まで来るとよいよ、本州の旅も終わりである。ここから関門トンネルを渡って、残るは九州だけとなる。最長往復切符も九州から本州、北海道、本州と戻ってきて、残りは九州旅客鉄道の各線を残すだけとなっている。
「ついに残りは九州だけになっちゃったねぇ・・・。」
「ああ・・・。」
「・・・どうかした。」
「いや、始まった時はすっごい終わりの見えないことしてるなぁって思ってたけど、いざ残りが九州だけになってみると、どんなものにも終わりは必ずあるって思い知らされるなぁ・・・。」
「・・・。」
「まっ、切符は紙だけどものだからなぁ・・・。当り前っちゃ当り前だけど・・・。」
「・・・行こう。」
萌に手を引かれて、僕はタクシー乗り場へと来る。下関駅からタクシーで関門海峡沿いを走り、九州へとつながる関門橋が見えてくるとタクシーをその近くで止めて貰った。鉄道で渡るのは明日だが、一足先に九州を感じてみたいと思ったのだ。
関門海峡は幅がそれほど無い為、鉄道、道路の他に歩いて渡ることが出来るようになっている。国道2号線の関門トンネルに併設する形で人道トンネルが建設されているのだ。ただ、歩いて九州内資本週にわたることが出来るだけの設備であるが、これでも多い時には1000人を超える人が訪れるという。
「思ったより人いるね。」
「うん。」
エレベーターで階下へと降り、扉が開くと前に一直線に伸びるトンネルが姿を現す。僕たちと同じエレベーターに乗っていた、いかにもジョギングをしに来たという人は腕に付けているものを少し手で触るとすぐさま九州に向かって走って行った。
「ちょうど直線だし走るのは良いところなのかな。」
「走る以外にも良いところだろうなぁ・・・。」
ただ僕たちには真似出来そうにない。
ゆっくり歩いていると、九州方面からも人がちらほら歩いてくる。その人達と軽く会釈したり、しながら進んでいくと県境が見えてくる。
「ほう・・・。」
「ここでまたいで二つの県を股にかけるってやりたくない。」
「やりたいならやって良いわよ。写真撮ってあげる。」
「えっ、萌はやらない・・・。」
「・・・恥ずかしいし。ていうか一緒にやって欲しいの。」
「うん、出来れば。」
「ええ・・・。嫌よ。それ。」
「ええ、何で。」
「何でって。さっき言ったでしょ。恥ずかしいの・・・。」
萌はそう言うと少し考えてから、
「じゃあ・・・。」
萌は口元に手を当て、僕に耳打ちする。
「それは・・・勘弁。」
「じゃっ、やらない。」




