745列車 栄枯盛衰因美線
2062年6月8日・木曜日(第93日目)天候:曇り 西日本旅客鉄道因美線鳥取駅。
「気象庁は昨日中国・近畿地方が梅雨入りしたとみられると発表しました。」
天気予報士が言った。僕たちはそれに少しため息をついた。とうとう過ごしやすい春を通り過ぎ、暑い夏の兆しが見えてきたと思った矢先にやって来るじめじめした梅雨だ。
「明日あたりから天気悪そうねぇ・・・。でも、晴れが続いてるところもあるわね。」
「梅雨って一体何なんだろうなぁ・・・。」
僕たちは早々にホテルを出て、鳥取駅から因美線の列車に乗った。
鳥取7時23分→智頭8時10分
車内は学生であふれていた。2両編成のディーゼルカーの中は座席が全部埋まり、たっている学生の数も凄い。僕たちはその押しくらまんじゅうに紛れて、終点の智頭駅まで向かう。智頭駅からはキハ120系のディーゼルカーに乗り換え。高規格の智頭急行線と分かれて、軌道の緑化が進む因美線へと入っていく。
智頭8時15分→東津山9時20分
「カタ、カタ、カタ。パン、パン、パン・・・。」
床下から響くディーゼルエンジンの音に混じって、車両に笹や蔦が当たる。
「こういうのも久しぶりね。」
「ザ西日本って感じだよな・・・。」
時折ゆっくり走りながら、列車は津山へと抜けていく。
「美作河井、美作河井です。運賃、切符は運賃箱にお入れください。」
アナウンスが流れる。こぢんまりとしたキハ120系の行く手には大きな駅が現れる。関西本線の加茂~柘植間と同じように1両のディーゼルカーが入るには不釣り合いも良いところだ。因美線は昔急行列車「みささ号」などが走った重要路線。それらの列車が走っていた時は随分長い列車がこの山奥の駅に来ていたんだろうなぁ・・・。
「ねぇ、ナガシィ。見て、見て。」
萌が指さす先に円形のくぼみとまっすぐ架かる橋みたいなものが見える。見る限り、あれは転車台のようだ。線路はつながっておらず、そこまで鉄道車両が行く手段はないようだが・・・。
「なんであんな所に転車台があるんだろうなぁ。」
「蒸気機関車でも方向転換してたんじゃない。」
「この駅で終点だった列車でもあったのかな・・・。でも、ここに来る機関車なら方向転換必要ないでしょ。」
「・・・確かに、テンダーが来そうなキハしないわね。」
萌が言う「テンダー」とは後ろに炭水車の着いた蒸気機関車のこと。簡単に言うならデゴイチと同じ形をしているもののことだ。それだけ大きい機関車がここに来ていたとは思えないからなぁ・・・。後で調べてみたが、あれは除雪車の方向転換の為に使っていたらしい。
他にも途中駅には雰囲気の良い昔ながらの駅舎も残っているのだが、残念ながらそこで途中下車することは出来ない。途中下車してしまうと次の列車は4時間30分後になってしまう。さすがに4時間30分もあのような何もない駅でつぶすことは出来まい。
東津山に到着する頃には車内はがらんどうとなった。
最長往復切符復路東津山駅で途中下車
東津山駅で姫新線の列車を待ち、佐用行きの快速列車に乗り換える。東津山駅の隣である津山駅から姫新線の列車に乗っても良かったかもしれないが、東津山~津山間は東津山駅を通過する列車に限り運賃を払わずに乗れる特例があるが、今は全ての列車が東津山駅に停車する為、その特例はあってないようなものである。
東津山10時02分→「快速」→佐用10時53分
佐用11時03分→播磨新宮11時32分
播磨新宮11時33分→東觜崎11時39分
姫新線の列車を乗継いで、僕たちは東觜崎駅で下車した。
最長往復切符復路東觜崎駅で途中下車




