742列車 玄武
2062年6月7日・水曜日(第92日目)天候:雨のち曇り 西日本旅客鉄道山陰本線城崎温泉駅。
城崎温泉の駅前から僕たちはタクシーに乗り込んだ。この近くにある玄武洞という場所に行く為だ。タクシーで片道5分の距離だ。
「渡し船乗りたかったわよねぇ。」
萌がつぶやく。
渡し船とは山陰本線玄武洞駅の近くから玄武洞へ向かってでているものだ。駅と玄武洞の間を流れる川を渡る手段として用いられている。しかし、悪天候だとこの渡し船は欠航してしまう。今日は川が増水しており、渡し船の欠航は早々に決まってしまっていた。仕方がないので、タクシーで行くことにしたというのがことの経緯だ。
タクシーから降りるとゴツゴツした岩が僕たちを出迎える。その岩に空洞が出来ている。その中で最も存在感を放っているものが玄武洞だ。
「おお。」
僕たちはそれに圧倒される。やはり自然って言うものは人間の理解って言うものを越えた存在だな・・・。
少し調べてみたが、玄武洞は約160万年前に噴火によって噴出したマグマが冷却したことで玄武岩の厚い層が出来上がった。その後、河川の侵食により玄武岩の相がむき出しとなり、現在に至る。一方の玄武洞は切り出しやすかった玄武岩を人々が採掘したことで出来上がったらしい。
「これ全部人の手で掘ったのよね。こんな所から岩切出すなんて大変だろうねぇ。」
「・・・まぁ、そうなんだろうなぁ・・・。ウィキペディアで調べてみると切り出しやすかったって書いてあるから、案外ボロボロ崩れたのかもしれないなぁ・・・。」
「崩れやすいのに、天井とかはしっかりしてたのね。」
「そりゃ、取れやすいところと取れにくいところがあるだろ。ほら砂利道で水たまりが出来てるところは他の土よりも弱いところだからだしね。」
「ああ・・・。強いところと弱いところがあって、強いところは人や工具の力でも取れなかったからそこが天井になったってこと。でも、高さから言ったら明らかにしたから発端じゃないの。上へは足場組めばどうにでもなりそうだし・・・。」
「ああ・・・。どう掘ったんだろうねぇ・・・。」
僕たちは玄武洞を見てから、近くにあるミュージアムに入り、中を一通り見て回る。それから城崎温泉駅にタクシーで戻った。




