735列車 忍者寺
2062年6月2日・金曜日(第87日目)天候:曇り 西日本旅客鉄道北陸新幹線金沢駅。
ホテルを出て、バスで移動し広小路バス停で降りる。大通りから細い道に入ってしばらく歩くと妙立寺の看板が見えてくる。最初、目的地がどこか分からなかったので、僕たちは通り過ぎてしまった。
「ここが忍者寺。」
「そう、金沢に来たらここに来てみたかったのよ。忍者屋敷みたいに色んな仕掛けがあるってお母さんが言ってたのよ。」
「へぇ・・・そうなんだ・・・。」
「ほらほら。早く。予約の時間過ぎちゃうから。」
「そんなに焦らなくても良いだろ。」
中は薄暗くなっている。古い建築物だから、こういう暗さがちょうど良いのかもしれない。見学が予約制の為、広間には何人か正座して待っている。僕たちもそれに混じり、見学が始まるのを待つ。
時間になると忍者寺の職員が解説を始める。このお寺のこと、お殿様線用の参拝部屋などなど。話を聞けば聞くほど凝ったつくりになっている。それらの解説を一通り聞いてから、忍者寺の中の見学に移った。
僕たちのグループは座っていた広間の裏側に回る。
「こちらの床下には非常用の脱出路がもうけられています。」
そう職員さんが解説してくれる。しかし、どこをどう見てもただの床にしか見えない。そういうツッコミが飛びそうな雰囲気に包まれるのをよそに、職員は脱出路があるといった近くにある木のふすまをスライドさせる。
「敵が攻めてきた時の脱出路の為、いつも開放しておく訳にはいきません。」
そりゃそうだな・・・。
「こちらのふすまを開けますと、こちらの床を外せるようになり、非常用の通路に通じるのです。」
「おお。」
小さいながら、思わず声を上げる。さっき開いたふすまは床の鍵となっており、スライドさせなければこの道は開かない。よく出来ている。
他にも明かりの取り込み口付きの階段や、色んな場所への独自ルートなどなど。いろいろな仕掛けで攻めてくる敵を攪乱する設備がそろっている。こんなのはまるに決まってるよなぁ・・・。
1時間もかからずに妙立寺内の見学は終わり、僕たちは外へと出た。
「ああ。面白かった。ナガシィも見てて面白かったでしょ。」
「うん。確かにあれは忍者寺だな。忍者屋敷じゃないけど。」
「次、金沢に来た時も行こう。ここは何度見ても絶対飽きないから。」
「・・・そういえばさぁ、萌って金沢来たことあるの。」
「・・・きんつば持って帰ったの覚えてない。」
「ああ、あの時か。すっかり忘れてた。」
「もう、ナガシィらしくない。」
金沢12時35分→「つるぎ819号」→芦原温泉13時06分
最長往復切符復路芦原温泉駅で途中下車




