732列車 行ったこと無い街同士
2062年5月31日・水曜日(第85日目)天候:曇りのち雨 東海旅客鉄道高山本線高山駅。
「これは・・・凄い・・・。」
僕たちは展示品に見入った。駅から徒歩10分ほど行ったところに郷土博物館というものがある。そこには約2000点を超える展示品がある。高山の歴史を知るにはこれらは良い資料であろう。
考えてみれば、僕たちが高山に来たことはなかったからなぁ・・・。
高山の街を歩いて周り、僕たちは駅へと向かった。
「それにしても飛騨牛って書いてある看板多いわね。」
「一番売りたいものだろうからな。そこは多くても良いじゃん。」
ただ、交差点に来ると凄いことになる。僕たちのいる側に飛騨牛。反対側にも飛騨牛、左の反対側にも飛騨牛、対角線上にも飛騨牛。どんなに飛騨牛を売りたいのだろうか。
「これは飛騨牛を買えってことじゃない。」
「買ってどうするのさ。悪くなるよ。」
「それは宅急便で送っちゃえば良いじゃん。おうちで飛騨牛食べられるのはいいと思うよ。孫の喜ぶ顔でも見たくない。」
「・・・僕らがいない間に全部なくなっちゃうって。」
「写真で送ってって言えばいいじゃん。・・・あっ、ナガシィが食べたい。」
「・・・。」
「分かった、分かったから。」
「本物の飛騨牛は買えないから駅弁と飛騨牛乳を買ってごまかしとくか。」
「賛成。」
高山11時01分→「ひだ3号」→富山12時29分
最長往復切符復路高山駅より使用再開
僕たちは特急「ひだ」に連結されるグリーン車に乗り込んだ。ふかふかのグリーン席が僕たちの体を包む。N700系のグリーン席よりも柔らかいかな。東海旅客鉄道はこういう所抜け目ない。
「ところでさぁ、富山に着いたらどうする。」
萌は座席に着いているテーブルを展開しながら僕に聞く。この列車の到着時間は12時29分。ホテルに入るにしても15時以降でないとは入れないからなぁ。最低でも2時間30分は時間をつぶさなければならない。
アルペンルート、立山・・・。いやいや、そこまで行く気は無い。それよりそこまで行くなら1日、2日つぶす覚悟で行った方が良いだろう。今日は時間がなさ過ぎる。
「萌はどうしたい。」
「私・・・。私はどこにでも付いてくわよ。」
「・・・ちょっと調べてみるかな。」
アプリを起動して、駅周辺を調べてみる。
「お城が有るなぁ。」
「またお城。」
「さすがに嫌・・・。」
「別に、嫌じゃないけど。」
「昨日さんざん言ったもんなぁ・・・。また性懲りも無くお城って言われそう。」
「誰に言われるのよ。」
「萌かな。」
「・・・他はない。何か。」
「公園。」
「あっ・・・うん・・・。」
「その前にお昼ご飯食べようか。その後考えよう。」
お昼ご飯を食べ終わるとお腹が満たされ、眠くなる。そして話すまもなく僕たちは富山駅で降りることになるのだ。
「結局何も考えつかなかったわね。どうする。」
「どうしようかな。」
「無難にお城でも行っとく。」
「あっ、お城で良い。」
「もうそれでいいわ。大体悩んだところで出てこないでしょ。それにお城って外れはないでしょ。」
と言うことになった。
最長往復切符復路富山駅で途中下車




