721列車 登山鉄道
2062年5月25日・木曜日(第79日目)天候:晴れのち曇り 西日本旅客鉄道和歌山線和歌山駅。
和歌山駅にホームに向かった。ホームからは制服を身につけた学生がひっきりなしに改札へと向かっていく。改札機の「ピッ」という音を横目に、僕たちは窓口からラチ内へと入る。
「フワァ・・・。眠い。」
「昨日は遅かったからなぁ・・・。」
「今日別に早くなくてもよかったんじゃない。」
「・・・そうだったかもなぁ・・・。それはそれで失敗だったかな・・・。」
時刻表を見返すと8時19分の次は45分後の9時04分になら行きの普通列車が出ている。今日は奈良に行くだけだったし、1本遅らせてもよかったかも。しかし、僕たちはもうホテルも出てラチ内へと入ってしまっている。後戻りするという選択はないな・・・。
和歌山8時19分→橋本9時30分
粉川から来る普通列車を入れ替わりに、僕たちの列車は出発する。大量の学生がホームを歩いているのを横目に多少なりとも通勤・通学時間帯から外れた列車は和歌山を離れた。
しばらくすると車窓は山間の路線へと変貌する。227系はそんな中をのんびりと走る。この路線はそれが似合う。
1時間くらい走るとあたりが開け、進行方向左側に大きなホームが現れる。ステンレスの車体が何両にも連なる列車の側面には「NANKAI」と書かれている。南海電鉄と大きさは変わらないホームに227系は入ったが、2両編成と6両編成では圧倒的に6両編成の方が力強い。
最長往復切符復路橋本駅で途中下車
廃れたJRの橋本駅から栄える南海電鉄の橋本駅に向かい、ICカードをタッチして南海電鉄に乗り換え。高野山に向かうことにする。
橋本9時53分→南海電鉄高野線→極楽橋10時32分
南海電鉄高野線は橋本駅から一気にその性格が変わる。ここまでは大都市のベッドタウンとしての路線であったが、この先は登山鉄道へと変貌する。その変貌ぶりは日本中どこを探してもここぐらいしか無いだろう。
列車は大きく進行方向を変え、駅に停車。紀伊清水、学文路、九度山くらいまでは普通の鉄道のようだが、この先列車の行く手は鬱蒼とする。
右へ、左へ線路はくねくねを曲がる。列車はスピードを出せない。床下からはモーターの「キィン」という音に混じって「シュー」と何かがすれる音がし続けている。
「高野線ってくると本当にすごいところ通ってるよなぁ・・・。」
「よくもまぁ、こんな所に鉄道通そうと思ったわねぇ・・・。」
「ここに最初に鉄道と襲うとした人は相当笑われただろうなぁ。」
「どうして。」
「いや、馬鹿げてるようにしか見えないから。」
「・・・馬鹿げてるかぁ・・・。」
時速30キロとゆっくりしたスピードで、着実に線路を掴み登る列車。辺りの景色は非文明的な場所へと移り変わっていった。
極楽橋10時37分→南海電鉄鋼索線→高野山10時42分




