712列車 雑踏無縁
2062年5月20日・土曜日(第74日目)天候:晴れ 東日本旅客鉄道東海道本線品川駅。
朝、土日でも出勤の人たちが大体会社に入りきった頃、僕たちは品川駅へと向かった。土曜日と行っても、東京の人の数は以上である。2,3日前くらいから見慣れた人の数ではあるが、日本中まわってくるとこの人の数がどれほど以上なのか嫌でも分かるようになる。これら人の波は日本がまだ未来に続く息吹そのものだろう。
品川9時08分→「踊り子105号」→川崎9時16分
最長往復切符復路品川駅より使用再開
伊豆急下田行きの特急列車「踊り子」に乗って、隣の川崎駅で下車する。今回はグリーン車を使っていないだけだが、贅沢な乗り方をしているものだ。
川崎9時24分→尻手9時26分
川崎駅から南武線の列車に乗り換え、隣の尻手駅で下車する。
僕たちは尻手駅から浜川崎方面に向かわなければならない。ホームに降りると僕らの乗ってきた電車の反対側に2両編成の電車が止まっている。車内に人はまばらである。同じ東京にいながら、彼らと僕らの後ろの電車には大きな溝がある。
尻手9時36分→浜川崎9時44分
尻手駅を出ると電車は数多くの線路をまたいだ。下は東海道本線の線路がずらりと並んでいる。そこをひっきりなしに最大15両編成の列車が行き来する。一方の僕たちの乗る電車はどこか違う。
「下は慌ただしいけど、私達はのんびり走っている感じよね。」
東京にものんびり走る電車があるんだなぁ・・・。
浜川崎駅に到着。降りて、駅の時刻表を見てみるとかなりスカスカである。僕たちの乗ってきた電車は9時47分発の尻手行きとなって尻手駅に折り返していくが、その次は30分後の10時17分。さらにその次は40分後の10時57分。首都圏にあるにしては列車本数がかなり少ない。ラッシュでも7時の5本が最大だ。
「昼間は40分に1本かぁ・・・。使う人いるのかな。」
「いても少ないだろうなぁ・・・。まぁ、良いんじゃない。南武線の本体はこっちじゃないし。」
「それもそうかぁ・・・。」
駅舎の外に出ると、駅員が一人立っていた。
「切符を拝見いたします。」
どうやら改札業務の真っ最中らしい。
僕らが最長往復切符を見せると駅員は面食らったようで、僕らに声をかけてきた時の笑顔は消えた。少し口の辺りをこわばらせながら、切符をつぶさに確認する。僕らが今まで切符を見せた駅員の中でかなりしっかりと切符を確認している部類に入るだろう。
「はい、ありがとうございます。」
「どうも。」
「はい、ありがとうございます。」
「あっ、はい。」
萌の切符はさっさと返した。同じ切符だと直感したからだろう。
「私の時はあんまり確認しなかったわよ。」
「そりゃ、こんなの持っているなんて思わないでしょ。」
「プラス、スーツを着た人間がね。」
「そうそう。」
南武線の浜川崎駅から鶴見線の浜川崎駅まで道を渡って移動する。ここからは少し鶴見線をまわってみよう。
最長往復切符浜川崎駅で途中下車




