701列車 これも失敗
2062年5月14日・日曜日(第68日目)天候:曇り時々晴れ 東日本旅客鉄道大糸線南小谷駅。
南小谷駅の待合室で僕たちはゆっくりしていた。南小谷の近辺には手軽に訪れることができる観光地というものは無いに等しい。たった1時間で行って戻ってくることはできない。結局、このまま駅に待合室で待っているのが得策だったのだ。
「あのまま「あずさ」に乗っていっても良かったんじゃない。」
萌がポツリとつぶやく。
「それ今言う。」
「だって、暇なんだもん・・・。」
大糸線には一日1往復特急「あずさ」が乗り入れている。14時12分に南小谷駅に到着すると14時22分に特急「あずさ26号」新宿行きがある。あの列車で最長往復切符のルートをたどると15時43分に松本に到着出来る。僕らが乗ろうとしている「リゾートビューふるさと」よりも1時間29分早く松本に到着できる。
「そろそろ乗り込めないかな。」
待合室からは止まっているHB-E300系を見ることはできない。
「ホーム行ってみる。」
僕はそう言った。それに無言で頷いたため、ホームに行くことにした。
南小谷15時16分→「快速リゾートビューふるさと」→長野18時28分
ようやっと出発時間になった。「リゾートビュー故郷」に使われるHB-E300系は「リゾートしらかみ」に使われている物と同じである。ディーゼルカーの割に静かにホームを離れていく。
この「リゾートビューふるさと」も東日本旅客鉄道が運行するのって楽しい列車の一つだ。車内では語り部のイベント。また長時間の停車を利用した沿線神社の参拝を実施している。しかし、それらイベントを実施するのは南小谷行きの列車のみ。反対方面の長野行きの列車では実施していない。
「これはちょっと失敗だったね。」
「仕方ないわよ。大体前来た時は土日ですら亡かったじゃない。これは次は必ず南小谷行きに乗らないといけない理由ができたわね。」
「ハハハ・・・。そうだな。次って何時かな。」
列車は普通の列車とは遅いスピードで大糸線を駆け抜ける。沿線には北アルプスの山々が見え、時折アテンダントから風景の案内がある。それは観光バスに乗っているかのようだ。しかし、「リゾートしらかみ」のようにその場所を、スピードを落としてゆっくり走ってくれるわけではない。
「これ本当に長野行きに乗ったのは失敗だったんじゃない。」
萌が言う。
「うん。これは失敗だったと思う・・・。本当に今度は南小谷行きでないとなぁ・・・。」
だいたい列車のホームページに「南小谷行きでは」との表記が目立っていたからなぁ・・・。
松本駅で9分停車した後、「リゾートビューふるさと」は進行方向を変えて長野を目指す。僕たちの乗っていた先頭車両は長野到着までは後ろの車両となる。
30分くらい走ると列車の進行方向左側の風景が開ける。往路でよった日本三大車窓の一つ、姨捨の近辺まで帰ってきたのだ。久しぶりに見る善光寺平の風景には圧倒される。
「この景色は相変わらず綺麗だよね。」
「ああ。」
前回来た時は夜景だったからなぁ・・・。今度は夕暮れ時。暗くなり始め、街の明かりがだんだんと綺麗に見え始める前段階だ。列車はいったんホームに入る。出発の際には僕らの乗っている車両を先頭に逆走し、ホームのないところで止まる。そして、僕らの乗っている車両を後ろにして再び長野方面へと進む。このスイッチバックを過ぎれば、長野はもうすぐである。
「今度乗る時はね。」
「南小谷行きだな。」
今回の「リゾートビューふるさと」の選択は失敗だった・・・。
最長往復切符復路長野駅で途中下車
一口メモ
「リゾートビューふるさと」
東日本旅客鉄道が運行するのって楽しい列車の一つ。長野~松本~南小谷間を中心に主に土休日運行する列車である。使用車両は「ナイトビュー姨捨」としても運行される。




